10話 うわあああん、生きてたんなら連絡くれよぉ

「ドム!」と、自転車に乗ったクルミが坂から転げ落ちそうになったところを助けた子は言った。その子は赤い帽子で青と白の服で赤い靴の、小学生がピアノの発表会に行くときに着ていそうな服を着ていた。

「そういうあんたは連邦軍の白い悪魔……じゃなくて、夏休みのはじめのころに、アメリカのおじさんたちのところに行くと言って飛行機に乗って事故にあって行方不明のまま音信不通だった、わたしと同じクラスのトオコじゃん! うわあああん、生きてたんなら連絡くれよぉ、すげぇ心配したんだから!」

 クルミは、そのトオコと思われる子に抱きついて、涙とよだれその他の体液をなすりつけた。トオコ(仮)は、クルミの肩を持って静かに身を離した。

「友だちに関しての、誰に説明しているのか不明だけど、わかりやすい紹介をありがとう。おれはその、トオコ……って子にそんなに似てるかな」

「おれって……? そう言えば、なんか目鼻立ちが可愛さ20%ぐらいアップしてキリッとしてるし、死にかけのサバのような目が、死んだマグロのようになってる。抱きしめた感じでは、ふにふに度が弱くなって、かっちりしてる」

 クルミは、トオコ(仮)の、胸やふとももを含むあちこちを触ったり揉んだり、ほっぺたを引っ張ったりして確認した。

「あんたは男の子だね! なんでそんな格好してるんだよ」

「んー、まあビジュアルエフェクトかな。そんなことより、おまえの自転車にはドライブレコーダーがついてるだろ。それちょっと確認してみろよ」

 動画には、クルミがブレーキの壊れた自転車でくだるところを、トオコ(仮)が手を伸ばし、その直後別の道から、コンビニの配送用トラックが坂道を横切るのが確認された。

「な。おれがなんとかしなかったら、お前はトラックに跳ね飛ばされて死んでた」

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