8話 ……わたし、図書館にしか行ってない

 同時刻。

 生島ヒナタ(1)は青玉色の髪と、同系色の瞳を持った魔女で、吸血鬼だった。

 ヒナタは店舗を兼用している自宅の細長いビルの最上階の、日当たりがいい自分の部屋で、魔女裁判のあげく火炙りになっている夢を見ながらうなされていた。

 かつては路面電車が走っていたという大通りに面したそのビルは2階までが店舗で、3階から上が居住区域になっていた。最上階はまるまるヒナタの部屋で、南面した窓の脇には大きな、いささかクラシックでデリシャスな飾りの多いベッドが置かれ、ふわふわの寝具にうもれ、黒猫の形をした抱きまくらを抱いて、ヒナタは眠っていた。

 図書委員だったヒナタは、昨晩は夜遅くまで学校の図書室で鮎川ミレイ(0)と一緒に新規に入ってきた図書の整理とチェックをおこない、自宅に帰ってから普通の生徒の3倍の自宅学習をした。ヒナタが床についたのは真夜中すぎで、さらにそれから読みかけの哲学書を読みはじめたらやめられなくなってだらだら起きていたのだった。

 ヒナタは黒地に複雑な白の幾何学模様が入ったシンプルなパジャマで、いささか胸が

「こういうキャラ設定に、隠れ巨乳、とかいうの入れるのはやめて」と、ヒナタはむくりと起き上がり、作者のほうを見て言った。

「あと、BL好きってのも、なし」と、ヒナタは追加した。

 じゃあ無口系は?

「それは我慢する。他のキャラと話してるとき区別がつかないから」

 ということでヒナタ(1)は、諸学の原点であり王である哲学と、うさんくさいものを含む宗教と、うさんくさいものだらけの自己啓発書を守備範囲とする、いろいろ言及できないものを盛って、じゃなくて持っているヒロインだった。

     *

 鮎川ミレイ(0)と生島ヒナタ(1)は3年生で、最初に出会ったきっかけは新1年生になった最初の週。ヒナタの最初のパーティは最初のクエスト(学習習熟度試験)でヒナタを残して全滅し、やっぱ遊びメインのギルドとかぬるいのは駄目だなー、と思って、図書室にこもってソロで狩り(自主勉強)をやっていたときだった。

 このあたりについては、サブストーリーとしてだいぶ組み立ててはいるんだけど、とりあえず置いといて。

 ヒナタは日当たりのいいベッドからごろんと、日があまり当たらない床に身を横たえる場所を変えて、今までの高校生活を回顧してみた。いろんなところに、ミレイや図書室の仲間たちと行ったっけ。国会図書館までの駅の長い階段、都立図書館までの公園の長い階段と桜、日比谷公園の緑と枯葉と図書館、夏休みに行った避暑地の森の中の図書館、休館日の年末年始を避けて初詣に行った神社の隣の図書館…。

「……わたし、図書館にしか行ってない」

 ヒナタは再び半身を起こして、ベッドの角に頭をごつん、とぶつけた。

 ヒナタとミレイの関係は、誰かに「ふたりって仲いいんですね!」と言われると「まあね」と答えるような関係だった。

     *

 ということで、9月の学校がはじまる日の早朝、だいたいの人物がそろったので、ざっくりまとめるとこんな感じである。

・一年生

 小泉クルミ(9 文学 普通)、江戸川ミナト(3 社会科学 政治家)、源氏イハチ(8 言語 難民)、内田フタバ(2 歴史 江戸っ子)

・二年生

 香山イツカ(5 技術 生徒会長)、菊村ムツキ(6 産業 農民)、黒沼ナナコ(7 芸術 姫)、大岡シロウ(4 自然科学 発明家)

・三年生

 鮎川ミレイ(0 総記 図書委員長)、生島ヒナタ(1 哲学 魔女)

 あと、各キャラのゲーム的設定(つよさ・かしこさ・まりょく)も考えてあるんで、これは順番にうまいこと語ろう。

 そうだよね、まだ出てない肝心のキャラがいるよね。

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