13 嵐山凛

「無事かい?」


「ええ。なんとか」


 龍吾はそう答える。けれど焦燥しきっていた。


 見麗しい女生徒だった。見たことはない。上級生か下級生か。


 いや、たぶん上級生だ、と龍吾は直感で思った。


 構成は女子三人、男二人。


「私たちは基地を目指すがキミも来い」


 有無を言わさぬ言い方だったが龍吾も反論はない。


「ほかに生存者は?」


「ここに来るまでは見かけなかった」


「さっきバスが通ったのでここにいる人以外はそれで逃げたのかも、です」


 上級生だと判断したので龍吾は語尾に丁寧語をつける。


「バス? そっちも見てみる?」


「それ案外危険だ。外を見たとき、中庭に結構な数がいた。もう生存者はなしとみるべきだ」


「待って。誰かこっちにやってきてくるし」


「バスがあった方だ」


「饗庭先生じゃないでしょうか?」


 日和が近づいてくるのが全員の目に映る。


「噛まれてるかもしれない」


 確かにその可能性はあった。


「あ、小走りで近づいてきます」


 薫の指摘に緊張も走る。


「大丈夫でしたか、皆さん?」


 外傷はなかった。服の下を噛まれている可能性はあったが心配げに見つめる瞳を前に、それを確かめるものはいなかった。


「先生もご無事で何より」


「みんなも避難しましょう。どこに行くつもりでしたか?」


「基地です。アプリレンジャーの」


「そうですね。それがいいと思います」


 日和もそれを受け入れる。


「けどその前に校門を閉めましょう。外に彼らが出られないように」


 日和は生徒だったもの、先生だったものを想ってか彼らと表現した。


 その気遣いに感銘を受けつつ、わずかばかりの危険はあるものの着手し、何事もなく、校門を閉めた。


 これで彼らは校門が壊れない限り街へ流出しないだろう。


 門をまたいで渡り、七人になった集団はアプリレンジャーの基地を目指す。


 街には火の手が上がり、鳴りやまないサイレンが非常事態を告げていた。


 そこに電話がかかってくる。


 博士からだ、旭は表示された文字を見て一言ペギーに告げる。


「OK、ククル。電話を起動して」


「起動シマシタ」


『博士、いったい何があったんですか?』


『ブルーよ。大変なことが起こった。いいかよく聞いてくれ、レッドがゾンビになった』


市街地編へ続く

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ヒーロー・オブ・ザ・デッド 大友 鎬 @sinogi_ohtomo

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