フランデレン攻防戦:芽吹く星

「最高の景色だなあ、白仮面!」

 敵の本陣を見下ろせて、かつ戦場全体をある程度視界に収めることのできる最高の立地。ヴォルフの考えは完璧に嵌まった。どうせ攻めるなら、こういう最高の場所から攻めたいと思うはず。ヴォルフでもそうする。

「流石の足だな山犬。まさか本当にあそこから此処まで間に合わせるとは。呆れて言葉も出ないよ」

 この場から要の位置まで戦場の真反対。もちろん今回の山岳戦、終盤ということもあり戦場自体かなり小さい規模にフォーカスされつつあるが、それでも普通十人ほど率いてある程度の装備を纏った集団が追いつくことなどありえないだろう。

「うそこけ。俺が追いついてくるのは予想通りだろーが」

「まあな。そっちも俺がこう動くのは予想通り、か」

 互いが互いの死力を尽くした策の応酬。それゆえ互いはこう動くという信頼の下、両者はこの場に立っていた。

 白と黒は睨みあう。

「お互い思考の過程はこうも違う。だが辿り付く答えは同じ」

「あとは持ち駒の差、互いの条件、全て俺が上回った!」

「どうかな? お前は全て見切ったつもりみたいだが……それが全てか?」

 ウィリアムは微笑む。ヴォルフから笑みが消える。

「まだ何か隠してるってか? 冗談きついぜ。この長い戦いの中、切らなかったカードなんてあるわけがねえ。そっちの主要カード、アンゼルム、グレゴール、ギルベルト、そしてテメエ、全部切れてるじゃねーか」

「ギルベルトはまだ見せてないだろ?」

 ウィリアムはくっくと笑う。その笑みが、ヴォルフの癇に障るのだ。夕日に隠れて見えなかった表情。ヴォルフだけが見たあの笑み。

「要の守備がギルベルトだ。誰がどう考えたってそれしかねえだろ? 本気になったユーウェイン相手に釣り合うのはそっちのカードじゃギルベルトだけ。それだってあいつの本気の前じゃ手も足も出ないだろうけどな」

 アンゼルムかギルベルトか、もしくはウィリアム自身。それ以外でユーウェインを止められる可能性を持つ人材はいない。そのうちアンゼルムは最もありえない。この大一番でこそ獅子の牙は輝く。その前に黒き炎では一刻と持たないだろう。剣でさえ、躯の群れでさえ、王である獅子の前では勝てぬかもしれない。

「ああ、俺でさえ獅子を相手取れば喰われかねない。アンゼルムやギルベルトじゃなおさらだ。知、武、どれも高次元に兼ね備えた怪物。まだ、お前より強いだろ?」

「ああ、もちろんテメエよりもな」

 ゆえに必殺の一手となる。勝負どころでの獅子は今までの眠れる獅子とは別次元。誰も止められない。ただの将では、王には勝てない。

「わかってるさ。それに俺が獅子を止めたとして、お前という駒を野放しにすりゃ結局負け。こういう形になるのは必然だった」

 駒の質が勝った。ゆえにヴォルフは勝ちを得る。黒の傭兵団の独壇場。

「よーく見せてもらったからな。この長い戦場で、お前たちの力は」

 ウィリアムは理解している。黒の傭兵団は強い。今まで相手にしてきた誰よりも。賢く、狡猾、強さも兼ね備えている狼の群れ。

「おうよ。ま、お前らも惜しかったよ。次回はねーけど是非――」

「だから――」

 ウィリアムはヴォルフの言葉を遮り手を大きく広げた。

「勝つためには、俺も賭けに出るしかなかった」

 ヴォルフの眼が見開かれる。

「俺の勝ちだ山犬」

 ウィリアムの勝利宣言とともに、ネーデルクス側の本陣から火の手が上がった。それは、本陣が落ちたということ。この山岳戦を、アルカディアが制したということ。

「馬鹿、な」

 ヴォルフの顔から、色が消える。


     ○


 中央を制覇したのはギルベルトであった。

 騎馬で現れたギルベルト隊は一気に敵本陣めがけて突貫。人では阻めぬ速度で進軍していく。

「此処は我が命に代えてでも通さぬ!」

 吼えるアナトールを前にギルベルトは冷めた表情。部下に目配せして手綱を握らせ自身は自ら落馬した。勢いそのままに転がり、そこから剣を引き抜く。

「剣が槍に勝てる道理なし! 死ねィ!」

 アナトールの殺気が迸る。それは鋭く、そして死を纏っていた。

 隻腕とてアナトールの槍は冴え渡っている。死者の嘆きがギルベルトに襲い来る。圧倒的速度で襲い来る槍。その間合いは剣より遥か遠く――

「それは凡夫の話だ。下がれ下郎」

 斬。

「バ、カ、な」

 一瞬。刹那の間にギルベルトは槍を両断。その流れでアナトールをも断った。崩れ落ちる『哭槍』。

 その瞬間、ネーデルクス軍は死んだ。

「お見事です」

 部下が流れの中でギルベルトの馬を、走っているギルベルトの横につけた。今度はそれに目配せすらせず飛び乗るギルベルト。

「この程度で褒めるな。大したことではない」

 ギルベルトの眼に映るのはあくまでネーデルクス本陣のみ。早々に取らねばならない。自分が要を守らぬ以上、出来うる限り早くこの戦を終わらせねばならないのだ。

(あの獅子を止めている……そいつに比べれば大したことはない。たかが本陣を落とす程度)

 ギルベルトは一瞬だけ自分が守るつもりであった方向を見る。未だ上がらぬ火の手。守りきれている証拠。まだ、間に合う。

「早々に落とすぞ! 我に続けェ!」

 ギルベルトの参戦により、中央は一気に動いた。


     ○


「ギルベルトは中央で切った。いやはや、流石の威力。『哭槍』をもろともしない」

 ヴォルフは、中央を見ていなかった。ウィリアムの言葉すら聞いていなかった。中央を落とすにはもう少しテコ入れが必要。そんなこと理解している。そしてそれが出来るのはウィリアムとギルベルトのみ。此処にウィリアムがいる以上、中央にいるのはギルベルト。そんなことはわかり切っている。

「どう、なっている?」

 わからないのは――

「そんな顔をするなよ山犬。もっとさっきみたいに笑ったらどうだ?」

 理解できないのは――

「何故、あそこが落ちていない?」

 ネーデルクス本陣とは対照的に、未だ火の手も上がらぬ要の陣。ありえない話であった。あそこを攻めているのは凡百の将ではない。かの『獅子候』ユーウェインである。ウィリアム、ギルベルト、アンゼルム、グレゴール、これら以外がいったいどうしてユーウェインを止められるというのか。

「だから言ったろ? 賭けだった、と。俺も正直自信はなかった。少しずつ仕上げてきたつもりだったが、まだ早いと思っていたからな。だが、結果は上手くやったようだ」

 ウィリアムは優しげな笑みを向ける。

「ようやく使い物になったじゃないか、お坊ちゃま」


     ○


 皆、名前だけは知っていた。その青年の名を。一度として負けたことはない。戦場において彼の存在は摩訶不思議であった。しかし白仮面が有名になっていくにつれて、その青年の評価は反転していく。結局、白仮面の功績じゃないか。そう言われるようになっていた。

 青年は幼少の頃から誰にも期待されることなく育ってきた。親の優しさが痛かった。兄の代わりにすらなれない自分が嫌いだった。商才はなく、武功を上げようと軍学校に入ろうとするも、入学すら出来ない始末。期待など、かけられようもない。

「ま、まだかなぁ?」

 青年は劣等感の塊であった。その生涯で一度も勝ったことはなく、己が手で掴んだものもない。親の金で生きる寄生虫。そんな風に自分を思っていた。

「もーちょいっすもーちょい! あとちょびっとでギルベルト様辺りがずばばばーってやってくれるっすよ!」

「根性です根性!」

 青年はある日、光に出会った。それは青年が見たどの光よりもまぶしく、どの光よりも美しかった。青年は焦がれた。きっとその光の持ち主は、自分の持たないものを持っているに違いない。そう思っていた。

「みんな頑張れー! 僕も頑張るから!」

 確かに光の持ち主は青年の持たないものを持っていた。しかしそれは青年のイメージしていた華やかなものではなく、泥臭く、死に物狂いの賜物であった。彼は四六時中己を高めることだけを考えていた。光り輝く、自分とは違う選ばれた存在。それは日々の努力の結晶だったのだ。

 青年は知った。

「いやちょっと……カール様が弓使っても矢の無駄なんで」

「そんなあ。酷いよイグナーツぅ」

 カール・フォン・テイラーは知った。

 だからカールは努力した。少しでも彼に近づけるように。ほんの少しでも光り輝けるように。自分に出来ると言ってくれた、自分を信じてくれた友のために。

「もう。だったら僕は何をしてればいいのさ!」

「「立っててください」」

「……二人とも酷くない?」

 カール・フォン・テイラーが要の守り手であった。


    ○


 ユーウェインは愕然としていた。このような経験は初めてだったのだ。こんな小規模な戦場で、たかが一防衛拠点の守護で、

「何故だ、何故矢が途切れない!? いつまで雨は降り続ける!?」

 これほど膨大な矢を降らせてくる戦場は、ユーウェインの記憶にない。いや、戦史の中にすらなかったかもしれない。少なくとも、この山岳戦の規模でこれはありえない。

「ユーウェイン。俺たちはいつ攻めればいいんだ?」

「最初の突撃を迎撃されてからずっとだぜ? 近づいたら馬鹿みたいな矢の雨。何度も牽制して、どんだけ降らせても矢が尽きねえ」

 ユーウェインは黙すしかない。攻め時など相手の矢が尽きた時、せめて減衰した時しかないのだ。しかしその様子は一向に現れない。

 矢が、尽きない。勢いが衰えない。

「あたり一面矢の草原って感じだぜ。いったいこれだけでいくらになるんだ?」

 あまりに費用対効果が悪すぎた。こんな出鱈目があっていいわけがない。

(いかに『獅子候』とはいえこの状況じゃ何も出来ない。こんなふざけた話があるか?)

 これでは英雄もクソもあったものではない。


 ただ金に飽かせたごり押し。しかしこんな馬鹿げた芸当が出来るのはカールただ一人だけであった。家はアルカディアでも有数の大金持ち。それでいて家人も少なく、溜め込んでいた金は想像を絶する。資産だけならばオスヴァルトやクルーガーでさえ勝てぬ、金満一家テイラー家。宝石王ロード・テイラーの後継者。

「でも、今の僕に出来るのはこれだけだから」

 ウィリアムが提示した策。その最後のピースであったカール。嬉しかったのだ。ようやく本当の意味で必要としてもらえて。たとえお金目当てだとしても、それが役に立てるというのならば、それこそカールがこの戦場にいる意味である。

「ただの成金が、みんなの役に立てるというならば――」

 風が吹いた。蒼き風が。さわやかに、穏やかに兵たちに染み渡る。それは兵たちに落ち着きと安心を与える。相手は獅子だというのにこれほど安心して戦えている。これほどの冷静な、沈着な、磐石なる戦運び。

「いくらでも払ってやるさ。それで誰かの期待に応えられるというのなら……安いもんだ」

 カール・フォン・テイラー。伏していた最後のカードが輝きを放つ。


     ○


 ヴォルフは震えていた。必殺の一手であったはずのユーウェイン。戦での強さなら未だ自分より上。この山岳戦で最強のカードであったはずなのだ。しかし結果は、カールという凡百と断じていたはずのカードに封殺されている。

「…………育てたのか?」

 やっとの思いでヴォルフは言葉を搾り出す。それを聞いてウィリアムは笑みを浮かべた。

「ああ、覚えの悪い奴だったが、素直さだけはあった。生徒としては及第点ってとこか」

 ウィリアムの答えを聞いて、ヴォルフは血の滲む思いであった。

 ヴォルフは凡人を育てようと思わない。育てるぐらいなら最初から優秀な奴を雇えば良い。それくらいしか考えていなかった。だから黒の傭兵団、特に中枢部には凡人などいない。ヴォルフの選んだ優秀な人材しかいなかった。

「金に飽かせた物量攻撃、だけじゃないぞ。金だけの人材に最重要任務は任せられないだろ?」

「陣形成は貴様主導だろう? もしくはアンゼルムか」

「残念。アンゼルムの作った陣は未完だった。それを元に今の陣まで仕上げたのはカールだ。それに、お前はすでにカールと一戦交えているぞ?」

 ヴォルフは一瞬考え込むも、そんな記憶はない。カールを見たのはウィリアムと最初に対峙した時、駆けつけた凡人どもの一人。それだけの認識である。

「というよりも後半戦、俺の隊を含めて百人隊の指揮は全てカールが取っていた。って言えば少しは驚いてくれるかな? 山犬君」

 ヴォルフは眼を見開いた。

「そ、んなバカな!? ありえねえ!」

 ウィリアムは哂う。

「おいおい。俺はカール百人隊の十人隊長だぜ? 本来カールが指揮すんのが当たり前なんだよ」

 ウィリアムの種明かしにヴォルフは驚愕するしかない。信じられないという気持ちも強いだろう。自分が激闘を繰り広げていた相手が、まさか自分の眼中にもなかった相手だったと知れば、信じたくない気持ちも理解できる。

「まあそんな顔するなよ。あいつには守戦だけを徹底的に叩き込んだ。攻めに比べて守りは才能よりも知識と努力の比重が大きい。それを積み上げたあいつは、守戦だけなら俺やお前に肩を並べられる、それだけの話さ」

 そう育てたのはウィリアム。彼がカールを一流の指揮官に仕立て上げた。凡人の、本来は駒に数えるまでもない凡百の男を、獅子を食い止めるほどの男に育て上げていたのだ。

「それに満更才能がないわけでもねーさ。感じないか? この風を」

 すっと薫る蒼き風。落ち着けばわかる。これが何処から放たれている雰囲気なのかをーー

 ヴォルフは理解する。

「は、はは。守戦の将に必要なのは、安定感。なるほど、こりゃ好かれるわ」

 己が敗因を。新しく現れた駒の正体を。

「だろ? 俺やお前じゃ引っ張ることは出来ても、押し留めるには工夫がいる。あいつはそれが自然に出来る。人に好かれる性質だからな」

 ウィリアムとヴォルフは力を示すことで人を引っ張ってきた。しかしカールは違う。示せる力は持たない。人を引っ張るには力があまりに足りない。それでもカールが将として成り立っているのは、部下から好かれているからである。この将を支えたい。部下にそう思わせる何かをカールは持っていた。これはウィリアムらも持たない力である。

「期せず緒戦と同じ形になったな。こっちを知っていたお前と、お前たちを知らなかった俺。釣り出されて空けた穴を貴様がかいくぐって首を取った。今度は逆だ。お前が釣り出されて、空いた穴をギルベルトが打ち抜いた。でもわかるよな? 今日の主役は――」

「カール・フォン・テイラー。刻んでおくぜ。まあ、刻まずとも忘れようがねーけどな」

 不思議とヴォルフの中にドロドロとしたものはなかった。今日の負けから得るものは大きかったのだ。学ぶものだらけ。ほんの少し程度ならば感謝の念すらある。

「あー、でもやっぱ悔しいわ。色々込み込みで、やっぱ腹立つ。俺自身にも、テメエのそのニヤニヤにも。ついでに仮面がむかつくなやっぱ」

 負けたことは当然悔しい。しかし今回ばかりは学ぶものが多過ぎた。学びを与えてくれたのが同世代の、しかも勝手にライバル視していた相手。色々なものがこみ上げてくる。そしてそれらをぐっと飲み込みーー

 狼は笑った。

「んで、だ。実を言うと俺の仕事は戦に勝つことじゃねーのよこれが」

 ヴォルフは大きく息を吸う。もちろん勝つ気満々であった。勝って仕事を果たすビジョンも見えていたし、それをする自分のかっこよさに酔いしれていた部分もある。まあ慢心である。もともと慢心極まりかけていたところをストラクレスにへし折られ、またまた慢心がむくむくと膨れ上がってきたところをウィリアム(とカール)にへし折られた。だが、狼は敗北からこそ多くを学ぶ。二度と負けないために。負けすらも喰らい尽くす。

 そして何よりも、今日の最大の目的は、勝つことではない。

「ほう。傭兵に戦で勝つ以外の仕事があるのか?」

 ウィリアムは攻めっ気たっぷりの表情になる。負け惜しみでも聞けるのかとうずうずしていたのだ。だが――

「あるんだよそれが」

 膨れ上がった殺気。目の前には舌なめずりする黒き狼の姿。本日のメインディッシュを前にして、傷心の狼は笑みを浮かべる。

「テメエの首を取るって仕事がなァ!」

 ウィリアムが驚きに眼を見開いた。

「くだらない。誰がそんな酔狂なことを頼むと――」

「ルドルフ・レ・ハースブルク。大公家の跡取り様だと。聞いたことぐらいあんだろ?」

 ウィリアムは状況を理解し、生唾を飲み込んだ。

 ハースブルク家。その巨大さはただの奴隷であった頃から知っている。曰く、ネーデルクスの富、およそ半分にハースブルクがかかわっている。曰く、ネーデルクスの王家でさえハースブルクの人間に逆らうことが出来ない。法を超えた存在。それがハースブルク家。

「何故、会ったこともないそんな御方が俺を?」

「さあね。まあ、何となくわかるけどな。お前は危険なんだよ。自覚はあるんだろ? お前も、そして俺様も、世界を壊そうとしている。過程が違うだけで、な」

 ヴォルフは髪をかき上げる。此処からは本気モード。

「今回、結構傷ついたんだわ。俺が雇われたってことはあれだろ? 俺よりお前の方が厄介って見られたってことだよな? まああれだ。最初っからむかついてたんだぜ。この俺の、俺たちの『想い』が、軽く見られたってことだからな。それだきゃあ、譲れねえ」

 ヴォルフの胸元に輝くロケット。それこそ狼が前に進む原動力。

「世界を喰らうのは俺だ。テメエじゃない。俺こそが天を掴む!」

「…………」

 ウィリアムは無言で剣を引き抜いた。ヴォルフもまた応じるように剣を抜く。白と黒が睨みあう。せめぎ合う。両者の間で見えない火花が散る。同類同士。理解してしまったからこそ、どちらも退けない。

「互いにお綺麗な本性ってわけじゃねーんだ。いっちょ曝け出そうぜっと!」

 ヴォルフが仕掛ける。一瞬で距離を詰め、ウィリアムめがけて剣を振りぬく。

「構わんが、覚悟してもらうぞ」

 それを微動だにせずただ受ける。ウィリアムはヴォルフを睥睨する。

「俺だって今回の戦にゃ納得してねえんだ。せめてテメエの首くらい取らないと腹の虫が収まらねえんだよ!」

 そのまま無理やり剣を振るい、ヴォルフを弾き返した。

「そりゃお互い様だ。俺だって負けた気は一切ねえ。ここでテメエを殺して、最低限の仕事は果たす。そうじゃねえと割りにあわねえからなァ!」

 両者同じタイミングで突貫。激しく鍔迫り合う。火花散る両者の剣。

「山犬がァ!」

「白仮面ン!」

 白仮面と黒狼。二人が決着をつけようと、人知れず戦場の片隅で戦い始めた。

 亡者の群れと黒き狼がぶつかる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る