月下の夜会:夜の王ニュクス

 夜の王国である暗殺ギルドの本拠地は、アルカスの深淵である地下に聳えていた。今の土木技術でどうやったらこのような地下空間を掘り抜けるのか、いったいいつからこのような空間が存在しているのかわからないが、アルカディアの王宮と比してなお、遜色の無い威容が其処にはあった。

 地下に伸びる夜の国。闇に生きるものが集いし無法地帯。

「とてつもないな。アルカスの地下にこんなものがあるとは」

「私も知らなかった。初耳」

 ファヴェーラですら知らないということは、よっぽど闇に浸かった者しかこの場に至ることは出来ないのだろう。この場を知るということはすなわち闇に至るということ。知った時点で後には引けない。

「……凄いな」

 ウィリアムの目の前に広がっているのは、夜色の王国。雑多で汚く、スラムを濃縮したように下卑ているが、不思議とこの場にはそれに対する誇りがあった。揺らがぬ闇の者であるという自負。闇に生きるものにとって此処は楽園であろう。光無きこの世界に、闇を糾弾する灯りは存在しないのだから。

「まだ下だ。俺を見失うなよ。迷えば永遠に出ることはかなわない。特に貴様らのような光の住人ではな」

 まだ下。これでもかなり降りてきたはずである。眩暈がするほどアルカスの闇は深い。歴史の裏側に潜む闇。光の大きさに比してそれは大きくなる。七王国の中堅たるアルカディアでこうなのだ。より大きく歴史の深いガリアスにはどれほどの闇が眠っているのか。今のウィリアムにとっては想像もつかない。

「急げ。主がお待ちだ」

 ウィリアムはふと錯覚した。自分は降りているのではなく、昇っているのだ、と。この感覚はカイルとファヴェーラには理解できないだろう。もしかすると白龍でさえ理解できないかもしれない。しかしこの先、其処で待つ夜の王はきっと同じ感覚を持つ。何となくだがそう感じてしまった。

 天地逆転。此処は深淵たる夜の王国。地下に聳える闇の世界である。


     ○


「此処から先、俺が入ることは出来ん。だが粗相はするな。くだらぬ野心を抱かぬことだ。あの御方は強さとは別の次元にいる。お前たちがどれほど強くともあの御方を殺すことは絶対に出来ん。そして逆に……あの御方は貴様らごときいつでも殺せるということを忘れるな」

 白龍はおそらく暗殺ギルドの中でも相当高位にいるはず。あの場でも明らかに一人だけ戦力が浮いていた。カイルほどではないが、ウィリアムなら勝てない、もしくは搦め手ありなら何とか――と言う手合い。それだけの実力者。それほどの男をして、立ち入ることが出来ない場所。

 白龍は大きな扉の横に立つ。

「俺は一度この奥に入った。当時の俺は愚かで無知で自惚れていた。自分が強いと勘違いしていた。対峙すればわかる。今まで貴様らが抱いてきた価値観総てが幻想であったと。……あの御方――」

 扉が勝手に開き始める。誰が触っても無いというのに――


「夜の王、ニュクス様の前では、な」


 扉が閉まる。気づけばウィリアムたちは前に進み出ていたのか、扉の内側に立ち入っていた。カイルとファヴェーラはすでに心が折れかけている。全てが常識の埒外。力など無力。築き上げてきた全てが無意味と化しているのだ。

『礼節はいらぬ。わしが欲しいのは此度の件を軟着陸させる妙案ただ一つ。わしを満足させれば貴様らは晴れて自由の身。満足に至らねば即死じゃて』

 夜の帳がするすると開く。奥から現れたのは地面に流れる夜色の髪。どれほど生きれば髪の長さが此処までになるのか、想像もつかない。髪の川を辿ればその上流にいるのが――

『さて、奴隷のアル、解放奴隷のアル、ノルマン、ウィリアム・リウィウスよ。わしと交渉するのじゃろ? 時はある。存分に話し合おうぞ』

 全てがバレている。そのことにウィリアムらは驚愕した。誰にも知られていないはず。知っているものは全て処理をした。道理に合わない。だが――

(知られている以上――)

 生かしておくわけにはいかない。

 ウィリアムは視線を上げた。その眼は明確な殺意を持って相手を射抜く。

『始めましてじゃな。かわいい坊や』

 射抜く、はずであった。

『何をきょとんとしておる? くっく』

 夜の王ニュクス。その顔は、ウィリアムのよく知る顔であったのだ。カイルやファヴェーラもまた驚愕する。この場三人が知る共通の知人。すなわち――

『わしの顔が誰ぞやに似ておるか? のう、ウィリアム』

 アルレット。ウィリアムたちの記憶に焼きついて離れない。全ての始まりにして最愛の姉。彼女を失ったことが『ウィリアム』を生み出し、今の『白仮面』を生んだ。

『最近この顔がお気に入りでのう。此処十年ほどこの顔をしておるのじゃ。ぬしら姉弟の物語が面白すぎたがゆえじゃ、赦せ』

 その言葉を聞いて怒りに震えたのはウィリアムではなく、その後ろにいた二人であった。

「こいつの生き様を茶化すな女。殺すぞ!」

「顔の皮剥ぎ取ってやる!」

 アルの絶望を知るがゆえ。もっとも近くにいて、助けることすら出来なかった。己への怒りは二人にとって根深いものがある。それを大いに刺激されたのだ。対象に対する恐怖を吹き飛ばすほどに、その怒りは深く大きい。

『素晴らしい友情じゃな。興味深きはそれほどの絆で結ばれておりながら、ぬしらの道が重なることはないということよの。世はまさに複雑怪奇。それゆえに面白い』

 カイルとファヴェーラの殺気を受けて一切動じぬ姿。それどころか面白がってすらいる。

『わしに対する恐怖は薄れたかの? そろそろ本題に入りたいのじゃがな。わしにとっての時は無限なれど、人にとっての時は有限。加えるに夜もまた有限ゆえ』

 ウィリアムが二人に対し片手を出して落ち着けと促す。あくまで此処は交渉の席。なれば此処からはウィリアムの領分。

「改めまして……お初にお目にかかります夜の王ニュクス様。私の名はウィリアム・リウィウスと申します。以後お見知りおきを」

『様は要らぬの。此処に礼節は無い。あるのは損得だけじゃ。無論、わしの好き嫌いで査定が変わることもあるがのお。あとその無様な仮面とかつらは外せ。普段の白仮面ならともかく、それではあまりにみすぼらしいじゃろう?』

 ウィリアムは言われたとおり仮面とかつらを外す。ニュクスには全てがバレている。ならば何かを隠す必要すらない。

『ふむ、良き顔じゃ。わしの顔に似ているようで似ておらぬ。が、似ておらぬようで似ておる。実に面白い。それでは交渉を始めるとするかの。まあ何、わしの要求は唯一つ。失敗した暗殺者の処理、じゃった。しかして今は状況が変わった。何ゆえかわかるな?』

「無論。私たちの反抗ゆえでしょう」

『是じゃ。わしの失った戦力。失敗した暗殺者のツケ。それら含めて清算出来うる対価を用意せよ。まあ用意しておるから此処におるんじゃろうがのう?』

 ニュクスの試すような視線に、ウィリアムは冷や汗をかいた。

 ウィリアムの双肩に二人の命がかかっている。自分ひとりのときとは重圧が違う。あまりにも異なっていた。ウィリアムは深呼吸をする。用意は――

「その前提に道理にかなわぬ点があります。失った戦力はあくまで正当防衛の結果。こちらでの戦いは、交渉したいと申し出た我らを無碍にした側にも非はあると思われます。あくまで私が清算すべきはファヴェーラの失態、その点のみかと」

 ない。対価など用意できるはずも無い。時間も金もなかったのだ。質に入れられるのは首にぶら下げ隠しているルビー程度のもの。もしもの際はこれを使うが――

『くく、戯言じゃな。よい、続けよ。全ての言い分を聞き、わしが気に食わねばぬしら三人を殺して仕舞い。気に入れば生きる。簡単じゃろ?』

 簡単ゆえ。選択肢を違えればその時点で死ぬ。ニュクスの笑みに感情は無い。

「では前提を変え、ファヴェーラの件を精査します。まず最初に……この暗殺が成功することは無かった。ファヴェーラの戦力あるなしにかかわらず。理由は俺があの場にいたこと。あの場にいた暗殺者程度では俺を抜いてヴラドを殺せる可能性はゼロ。そこはご理解いただきたい」

 ニュクスは眉をひそめる。

『ぬしはあの男を怨んでおったのじゃろうが? なれば暗殺者が仕留めようが変わらぬはず。守る道理も無い。そこな娘がいたからこそ、逆にぬしが殺させなかったと言えるのではないかのう?』

「その点に関しては明確にいいえと答えます。ファヴェーラに手を汚させたくなかった……などと甘えた考えはありません。そもそも私も含めこの場にいる人間に、手を汚したことの無い人間はいない。ファヴェーラのことを考えるならば、むしろ速やかに殺させ、撤退させてやるほうが理にかなっている」

『ふむ、道理じゃな。続けよ』

「私がヴラドを怨んでいる点に関しては間違いなく肯定いたします。隠す気など毛頭ありません。彼への憎悪が私の出発点ですから。だからこそ、あの男は私の手で殺したいのです。それもただ殺すのではなく、劇的に、完璧に、最高の絶望を彼にプレゼントせねば気が済みません。そのためには、あの場で死んでもらっては困る」

 ニュクスは興味深い玩具を見る眼でウィリアムを見る。

「ここで提案があります。ファヴェーラの失態、暗殺の失敗を帳消しにするには暗殺を成功させるしかありません。それら全てを私に任せてはいただけないでしょうか?」

『刻限は?』

「五年以内に」

 ニュクスの眼が大きく開かれた。その眼は冷たく、絶望色をしている。

『わしを馬鹿にしておるのか? 今すぐにでも命をとらねばならぬ状況で五年などと……さすがのわしでもその言い分は楽しめぬ。今すぐ三人揃って死ぬことを所望するということでいいんじゃな? ウィリアム・リウィウス!』

 怒気と呼ぶにはあまりに冷たい。しかしニュクスは怒っていた。このままでは三人死ぬ。いかな方法で殺されるのかわからないが、目の前の相手の殺意から逃げられる気は毛ほどもわかなかった。

「今すぐに殺すのは不可能に近い。あの白龍を持ってしてでも警護を固めたであろうヴラドを仕留めるには力不足。お忘れなきように言っておきますが、あの場には第二王子であるエアハルト殿下がおられた。おそらく現在ヴラド伯爵は王族の威信にかけて守護されている状況でしょう。今すぐに殺すには……それこそ貴女が出張るしかないでしょうね」

 ニュクスの眼から怒りは消えていない。その不可能を可能にすることを求められていたのだ。五年以内ならどんな暗殺者にも可能であろう。提案としてはあまりに弱い。

「そもそも何故あの場で暗殺をしようと企てたのか。別に伯爵の邸宅で人知れず死んでいてもよかった。むしろそちらの方が暗殺者としてもやりやすい。では何故、あの場である必要があったのか?」

 ニュクスの眼から怒りが薄れ、少しだけ、興味の色が覗いた。

「それは見せしめ。王族の前で死ぬという貴族として最高に無様な死に方を提供したかった。依頼人は貴族、それもヴラド伯爵をとてつもなく憎んでいる御仁。違いますか?」

 貴族とは王族を守護する立場である。その貴族が王族の目の前で暗殺者に殺される。巻き込まれた王家に不快感を与えるには充分。不興を買えば死してなお名誉に傷がつき、家が取り潰しになる可能性もある。貴族の復讐としては考えられている。

「だからこそ、私は依頼人のことを考えて、より良いプランで伯爵にこの世の地獄を味あわせたいと考えているのです。それを為すには準備に五年ほどの歳月を要します。もちろんただ殺すならばいつでも出来る。しかし復讐心を充足させるともなれば……時間は必要」

 ニュクスの見る眼が完全に変わった。

「暗殺者には不可能な、濃厚で刺激的、究極の地獄を伯爵には用意します。あの場で死んでおけばよかったと後悔するほどに……どうでしょう? 今すぐ殺すのは不可能。しかし日をずらし、適当な場所で殺すこともまた依頼人の意に沿わない。それならば少し時間をかけて私に賭けてみては如何か?」

 夜闇に沈黙が降りる。緊張の瞬間、意にそぐわねば死ぬ。その緊張がウィリアムを襲っていた。

『……暗殺の代わり、考えてやっても良い。じゃが、足りぬな』

 かなり難しい橋であったが渡り切ったウィリアム。暗殺代行に関しては穴が多量に存在する。そもそも動機の時点で想定でしかなかったのだ。外れていればすぐにでも殺されていただろう。こうあって欲しい。こうでなければどうしようもない。それらがほぼ全て望んでいたとおりに成った。運が良い。

「暗殺の肩代わりが良いとすれば、失敗した暗殺者の代わり、ですか」

『察しがいいのう。仕事は任せても良い、が、その女は一度でも暗殺者の道に立ち入った。死した分の代金は要らぬが、生きておる分は必要じゃ。命一つ分の対価、払えるかの?』

 ウィリアムは本当に運が良い。ウィリアムは首にかけて胸元に隠していたものを取り出す。赤く輝く美しき宝石。

「これはルビーでございます。色合い大きさカットも最上級。細工はテイラー家お抱えのデザイナー……これにて手打ちというわけにはいかないでしょうか?」

 ルトガルドからもらったルビー。失うのは痛いが背に腹はかえられない。

『悪くない一品じゃな。確かに小娘一人の値段としては破格。手打ちにするも悪くない』

 どこかつまらなそうなニュクスの表情。道理は通ったが、肝心の満足には至っていないのかもしれない。この場は全てニュクスの些事加減しだい。ルビーとてウィリアムを殺せば手に入る。暗殺もまた代行させる義務は無い。そもそもが無茶な条件で金を出し渋った依頼人が悪い。白龍らを出せばウィリアムがいたところで暗殺は成功していただろう。失敗のリスクも当然先方には伝えてある。

 この場で三人を殺してはならない理由は無い。手に入るメリットも損得含めて相殺した形でしかなく、それとて三人殺せば手に入るメリット(ルビー)でしかない。まだ弱い。筋だけではダメなのだ。後一歩、踏み込まねば夜の王を満足させるには至らない。

「此処からは私事になります」

 交渉も終わりかと思いきや、ウィリアムが口を開いた。

「このルビー、私としても手放すには惜しい。何よりもなくしたと軽々しく言っていいものではなく、かの家に忠誠を誓ったがゆえに手に入った代物。もちろん友の命には代えられません。だから一つ提案があります」

 ニュクスの退屈に染まった瞳に――

「私はテイラー家の跡継ぎであるカール・フォン・テイラーの剣であります。公私共に交流があり、一定の信頼も勝ち得ています。そこで以前、商売をしてみないかという誘いがありました。儲ける方法を思いついたのならば、明日にでもテイラー家傘下の商会を興してよいと。此処で私はニュクスと私、双方にとってうまみのあることを思いつきました」

 大きな興味が――

「暗殺ギルドでは当然毒などを扱っているでしょう。そして毒や薬、つまり薬品は高価です。危険性、希少性が高いほど値は増す。遠方から裏ルートを使ってそれらを入手するのは難儀だったでしょう。金銭的にも人件費的にも。しかし此処でテイラー家傘下の物流に乗せたならば、輸送コストは格段に下がる。何しろ今ある流れに乗せるだけですから……加えて密輸という形も避けられます。テイラー家は貴族です。本来一般では認可の下りぬものでも、貴族の商売ならば話は別。医者や研究者などに卸すといえば否定するは難儀。もちろん実際に卸しますし」

 ウィリアムが吹っかけたのはまさかまさかの提案。商売についてであった。今この場でする話ではない。もちろんこの場はそう何度も来れる場所ではない。ないのだが、あまりにこの提案は常軌を逸している。命のかかったこの場でする話ではない。

「暗殺ギルド、夜の王国という大口の依頼があれば、すぐにでも商売は成り立ちます。世界各地に散らばっている宝石王たるテイラー家の物流。それを利用しない手は無い。どうでしょうか、この商売でお互いに利益を得て、その純利益がルビーの価値を上回った時、それを返していただくというのは? 損はさせません。互いにとって得しかない。一緒に儲けましょう、陛下」

 これにはニュクスも、

『く、くく、ふはははははははは!』

 笑うしかない。

『わしを前にしてこれほど図々しい申し出をしてきた輩はぬしが初めてじゃ。まっこと面白い。やはりわしの見込んだとおり……『ぬし』はわしよりの人間なのじゃろうなぁ』

 いつの間にかウィリアムのすぐ前に立っていたニュクス。ウィリアムの頬を撫でる。その指のあまりの冷たさに、ウィリアムの全身が悲鳴を上げた。それは、死の冷たさ。その指がウィリアムのルビーを毟り取った。

『わしすら利用して駆け上がるか。ほんに業(カルマ)の深きことよのう。よかろう。いくつか条件はあるが、おおむねぬしの話で手打ちとする。夜の王ニュクスが誓おう。ただし五年以内にヴラド伯爵を絶望の底に叩き込んだ上で殺すこと、そしてわしに損をさせず満足させること、この二点だけは守れ。よいな』

 耳元でさえずるようにニュクスが語る。吐息の冷たさもまた死を予感させる。約定を違えればこの場三人などいつでも殺せるということか、それとも別の思惑があるのか――

「心得ました。後日、見積もり等々を用意してきます」

 いつの間にかウィリアムから距離をとっていたニュクス。その首元には赤々としたルビーが輝いていた。夜に瞬く一つ星。凶星たる赤き星が夜に浮かぶ。

『ぬしがわしに直接手渡せ。今後この国への通行およびこの場への入室許可をぬしだけに与える。他は……夜の住人にはなりえぬゆえ許可は出せぬのう』

 ニュクスは後ろの二人には視線を合わせず、ウィリアムだけを見ていた。

『わしを失望させるでないぞ。夜はいつでもぬしを見ておるでな。また会おうぞ、業欲なる白き子よ』

 その言葉を境に、背後の扉が開き、夜の帳が下りる。ニュクスの姿は消え、ウィリアムたちの目の前には閉じられた扉と隣に立つ白龍の姿があった。

「……生きて帰ってきたか。ならば俺が言うことはない。さっさとこの場から去れ」

 何が起きたのか、そもそも現実のことであったのか、判然としない状況。

「あれは……何モノだ?」

 カイルがぽつりとこぼす。それを聞いて白龍は鼻でふんと笑った。

「誰にもわからんさ。アルカディア建国当時から生きているとも言われている。そも生きているかすらわからん。人か魔か……矮小なる俺には及びもつかんよ」

 そのまま無言で歩き始める白龍。あわててその背を三人は追った。

「死人がこの世に在れば……ああいう存在になるのかもしれん。死人は死ねぬし、死人の時は永遠だ。死を畏れるならば、やはり夜の王に逆らうべきではない。相手は『死』そのものであるのだから――」

 どこからともなく聞こえてくる言葉。この言葉を語ったのは、幾代も前の昼の王、突然変死したアルカディア王であったことを、ウィリアムたちは知らない。

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