幕間2


 幕間『琥珀=ラナンキュラス』


 琥珀=ラナンキュラス。またの名を神竜。

 神竜、その名の通り神の力を秘めると言われる伝説の竜で、協会に記録されているランクはSS over。まさしく世界最強の獣。獣って言うのは神竜にとって恥であるかもしれないが、その姿の奥に秘める力は化け物である。世界最強というのは最強の種族である竜族であるため当然のことでもあるだろう。

 その神竜から生まれた少女が琥珀=ラナンキュラスだ。十二年前の人間がかろうじて、勝つごとができたあの戦争で、神竜の魂を人間という形で封印した姿。その心の奥底で眠り続けた竜が、眠れる竜との接触により目を覚まし、神竜へと姿を変えてしまった。

 目は真紅の光で見るものを照らし、体には白く銀色の毛が生え、足はたくましく大きな爪が付いている。

 ただ、矜恃だけには。

 その奥に琥珀がいるような感じがしていた。純粋で、活発で、家庭的で、可愛くて、兄が大好きな琥珀自身の白く輝く心がそこにあると思っていた。

 その心と琥珀自身を取り戻すために、矜恃は人生最大の戦いに挑む。自分の父が身を呈して国を、世界を、救ったあの時のように。

 矜恃はたった一人の十二歳の女の子のために歩んでゆく。

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