第三章《絶望は日常に。魔術の意味》


結局のところ、俺が何度聞いてもどうやって倒したのかは琥珀も虎狼も、そして明日花さんすらも教えてくれなかった。

 じゃあ倒したのは琥珀なんだろ? て聞くと、倒したのは俺だと全員口を揃えて言う。

 別に、教えてくれていいじゃないかと思うのだがな。

「お兄ちゃ〜〜ん、ごは〜〜ん」

 そんな不思議について考えていると、琥珀からおはようアンド朝食コールがかかる。

「はぁーーーーい」

 大きく伸びをして布団を出て居間に向かう。階段を降りる途中に、鼻に優しく入り込む甘い匂いを感じて朝ごはんに期待を乗せてリビングの扉を開けた。

 今日の朝ごはんは……フレンチトースト!

「いただきまぁ〜〜っす!」

 大きく口を開けて、四等分されたうちの一切れを豪快に頬張る。そうそう。この程よい甘さと、もちもちな食感が大好きなんだよ〜。

 琥珀の作る料理は何でも美味くて本当に最高だ!

 美味すぎて食パン一斤分を食べきってしまった。

 流しに皿を下げると琥珀が言った。

「お兄ちゃん、今日は報酬貰いに行くんだっけ?」

「うん、そうだけど……琥珀も行くか?」

「いや、私は……いいや、疲れたし」

「お、そうか」

「じゃあ、おやすぅみぃぃー」

 そのまま琥珀はソファーで寝てしまった。


 琥珀を一人家に残して家を出る。

 そういえば琥珀ってペットいたよな、なんで竜戦で使わなかったのかな。あいつ賢いしそこのところもっと考えていると思ったのに。

 そんなことを考えながらかれこれ数十分歩いて、協会に到着した。ウィーーンっと自動ドアを通る、するとまた。

「矜持ーーー!」

「キョウジ君⁉」

「おーまーーえ―――!」

 戦士の仲間全員が俺の周りに集まってきた。

 竜をどうやって倒したの? とか、明日花さんはどのくらい強かったの? とか、琥珀ちゃんと連携できた? とか、暴走って何? とか。もういろいろ聞かれまくって俺は答えきれなかった。

 このデジャヴは一体何なんだよ? っていうか、誰が俺らのことを広めてんだよ。もうやめてくれ。

「矜持、最近凄いからランク上がったりしないのか?」

 戦士の一人が聞いてきた。

「まあ、ランクの基準って魔術中心だからな、俺の身のこなしがどうであれ評価されないから大して変わってねえよ……」

「まあ、そうかもしれないけどよぉ」

 するともう一人、女戦士が、

「でもあんた、めっちゃ強い敵倒してるっしょ、そこは評価されないのかってことよ」

「ああーー……確かにな、でも俺、そんな大したことないし」

 でもそこのとこは、協会の上層部に聞かないと分からないからな。俺的にもランクBくらいに昇格したっていいと思うのにな。

「ほんと、お前ら凄いよな」

「ん?」

「だってさ、森の主は倒すしAランクの竜族は倒すし、ほんと戦士団長様の息子であるだけあるな」

「ほんとよ、あの竜の眼差しと気配感じて怖くなかったの?」

 ん? 竜の気配? 眼差し? 確かにそれは感じた。

「感じたぜ、あのもの凄い凶悪で異様な雰囲気。まさに恐怖そのものだったな」

「そんなものじゃないでしょ! だって竜族なんだし、あんたがやったなんて、正直思いたくないわね」

「私も親には、目を合わせただけで殺されるって言われたもの」

「よくもまあ、そんな怪物に……」

 そこにいる全員、恐らく竜にあったことはないだろう。だからあの恐怖は分かってもらえはしないし、何より俺自身、自分で倒したって実感がない。

「まあ、ね」

 明日花さんもいたから楽に倒せたのだと俺は思う。恐らく琥珀と俺と虎狼だけでは勝てなかった。あいつが主(ぬし)戦で見せたあの最強クラスの魔術『魔力砲』も歯が立たなかっただろう。相手は最強の部族である竜だし、勝てたのはいわゆる『奇跡』だな。

「報酬はいくらですか?」

 俺が受付のお姉さんに話しかけると、

「眠れる竜討伐おめでとうございます! 少々お待ちくださいね」

 明らかにお世辞が丸わかりな笑顔をするお姉さんが手元の端末で今回の報酬について計算を始める。俺の計算では前の報酬は確か……十万ホープほどだった。モンスター狩りの報酬の二万にプラス八万ホープで結構なボーナス付きであった。このシステムは国の機関である協会が危険度や重要度を考えてお金を考えている。だから今回の相手は危険度はDからSSまでのうち恐らくAプラスからSプラスの間である。前の主が、BまたはAとすると報酬は二、三十万ホープだろう。これは恐らくディ○ニーランドに二回は旅行に行けるな。

 俺が予想を終えると、お姉さんも計算を終えて、

「えーっと、今回の報酬は五十万ホープですね」

「おおおおおおおおおおおおお!」

 驚愕の値段に俺はつい声を出してしまった。なにぃ⁉︎ 何を⁉︎

「お、おめでとうございます……」

 俺に若干引き気味で祝福の言葉を言われてしまった。恐らくそれは祝福とは言わないだろうな。

「あ、そのすみません」

 虎狼にも分けないといけないから、半分ずつでいいかな。それをお姉さんに言おうとした時。

「よっとぉ!」

 俺の右肩に衝撃が走る。すぐに振り返ると、

「虎狼⁉︎」

「よう矜恃! 金のことなんだけど、お前らに全部やるよ」

「え⁉︎ それは困るよ。だって一緒に倒したじゃないか」

 俺が一応は倒したことにはなっているが結局はみんなで共闘したから倒せたんだ。

「いや、いいんだよ。姉ちゃんと決めたことだしな」

「え……でも」

「今回はお前が琥珀と行っても結果は変わらないんだよ。あれは後方から見ててわかる」

「でも明日花さんの指示もあったからで……」

「いやあれは違う全部お前の手柄だ。それに別にそういうこと関係なしにお前らにやるって!」

「そんなこと……」

「そんな事もあるのよ、矜恃くん」

 さらに、後ろから美しい声が聞こえる。

「明日花さん!」

「あのね、あれは君の特性なのか。魔術なのかはよく分からないけれどね、多分君のおかげで倒せた。それに久しぶりのクエスト楽しかったわ!」

「そうだ、お前がああなってなければ勝てなかった」

「まじかよ……」

「まじだ」

「とりあえず私たちは今日もクエストがとってみたから行くわね」

「や、そんな!」

「じゃあねぇ〜」

 そんな感じで半ば強制的に報酬全てを受け取り、とりあえず帰ることにした。

 みんなが口を揃えて、俺が凄かったとか、俺がああなってなければと言ってるけど俺にはその事が点で分からない。だって俺の記憶が琥珀がやられた時でブツって切れたし。全くわかんないよ。

 とりあえずコンビニに寄って、昼ご飯を買って帰る。

「全く、みんななんだってんだ」

 いつもの帰路で家に帰ると、何か奥が騒がしい。

 すると一人の男が、

「おぉぉーい! この先に行くな! 国の中央に行け‼︎」

 すごい顔で住民に呼びかける。

「どうしたんだ⁉︎」

「街に竜が現れたらしい。早く行かないと殺されるぞ!」

 その言葉を聞いた途端、周りの雰囲気が一転した。

「竜だ……と⁉︎」

 何か凄く嫌な予感がする。変な悪寒が背中を走る。

「見たのか?」

「いや、見てないが逃げろって言わないとって思って」

「ックソ!」

 すぐ足で地面を蹴った。


 どうしてこんなに焦っているのかは俺にも分からない。もしかしたらただの竜族の襲来なのかもしれない。それも十分やばいが。それか誰かがいたずらで流したデマかもしれないのに。

 だけれど俺の足は止まらない。

「ックソ!」

 ん、あ、いや。

 そういう事か。

 俺が今、こう思っている事が甘えなのだろう。

 なんでこうなるのだろうか。

 いつもいつも、不幸に見舞われる。

「ッハァ! ッハァ!」

 そんな疑問を抱えても、ただ全力で走る。

 地面を思い切り蹴って。

 そのまま天の飛び立つのではないかと思うくらいに。

 だが、魔術は使わなかった。

 その理由は単純で。

 無心というか、懸命というか、必死な俺にはそんな事を考えれるはずもなかった。

「ッン⁉︎ カハァッ!」

 喉の奥で痰(たん)が絡む。痛みと苦しみを伴う。

 それでもめげずに俺は走った。

 死ぬ物狂いで走る俺の横で、死ぬ物狂いで逃げようとする人たちもいた。その様子は最悪な良くないものから逃げようとするその姿は、相手は竜であるからして緊張感に溢れていた。

「……ン! ハァ! ハァ!」

 とにかく走った。

 そんな俺の前には、家ではなくなった、俺の家に。

 右肩から大きな白い翼が生え、右側の頭から羽毛のような、白い鱗が大きく後ろになびいて、左足が大きく巨大化し、三本爪の足に変わっていた。

 …………琥珀がいた。

 正直、状況が読めなかった。

 意味がわからなかった。

 どうして、なんで、琥珀が。

 ああなっているのか。

「ヴヴヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎‼︎」

 琥珀の雄叫びが街中に響く。

 でも琥珀の声と何か違う声が入り混じっていて、異様な音であった。

 鼓膜が震えて、俺の耳に届くが、許容量を大幅に超えて俺の耳に突き刺さる。

 耳が尋常ない痛みを脳へ届ける。

 耳を塞いでも一向に変わる気のないその音量。

 竜族だけが上げらるものであった。

「こ、こ、こはぁく!」

 名を呼ぶが声、声は届かない。

「琥珀‼︎」

 やはり聞こえない。

 琥珀の皮膚がめりめりと剥がれ、ッボン! と音を立ていく。

 ッボン! ッボン! ッボン!

 と三回音を立てた時。

「ゔ、ヴ、ギィ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア‼︎」

 琥珀の声は消え、竜の声となり。

 それは俺の妹ではなく。

 もはや、竜であった。

 全身が白く、そして。

 フサフサで綺麗な毛。

 なんて美しいのだろうか、と思うくらい。本当に綺麗で、神話に出てくる女神のようだった。

「琥珀……?」

「…………」

「こはく!」

 姿だけは琥珀ではなかった。

 とにかく名前を呼びまくるが返事はない。

 この時俺は思い出した。

 琥珀は。

 俺の妹は。

 神竜からできた子なのだと。

「なんでだよ」

 なんで今なんだよ。

 琥珀が消えた。

 結局自分は何も出来なくて、

 自分自身はDランクのままで、

 その事実を受け入れたくなくて、俺は何度も何度も目を瞑った。

 何度も何度も。それでも消えることなどなく。

 逆に。

 怒りや

 悲しみや

 疑問や、全てが入り混じった気持ちが心を支配する。

 頭をどれだけ抱えても、この気持ちは無くならず。

 涙も流れる事もなかった。

 俺は絶望に染まった。

「あ、あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 俺の悲鳴が誰もいない街に響いた。

 そして、俺の視界が漆黒に包まれた。

 絶望のように。

 絶望は日常の中に、不意に現れたのだ。


 少しだけ、昔の話をしようか。

 思い出しただけなんだけど、俺と琥珀の話をしよう。


 あるところに矜恃という、戦士に憧れている男の子がいた。

 その子は王国戦士団団長の父の一人息子だった。だけど、とても気弱で戦うことなんてできもしない弱い男の子だった。

 その子は…………ってもうめんどくさいから俺って言う。

 俺は四歳の頃、神竜との戦争が始まる数日前。

「パパ、行っちゃうの?」

「ああ」

「なんで、行っちゃうの?」

「パパはこの国の戦士だから、行って戦わなきゃいけないんだよ」

「何と戦うの?」

「すごくすごく強いものと」

「ちゃんと勝てるの?」

「矜持、パパはこの国最強の戦士。だからね。絶対に負けないのよ」

 母が俺にそう言った。

「ほんと? パパ?」

「ああ、もちろん」

 父は笑顔で答えた。

 俺は悲しかった。父が俺の知らないところへ、死ぬかもしれない戦いに行くことが何より悲しかった。辛かった。怖かった。いつも、俺たちを守ってくれた父がどこかに行ってしまってもう帰ってこないんじゃないかなとも俺は思っていた。

「じゃあ、行ってくるな」

「パパ……」

「矜恃、ママを守ってやれよ」

「う、うん」

 俺が守れるわけないと思った。パパみたいに、戦士のように戦えるわけないと。でも。

 そう言って出て行った父の後ろには、笑顔で楽しそうに敬礼する部下たちが見えた。俺にはその人たちが本当に嬉しそうに見えた。これから死の戦争に行くのになぜか楽しそうで。

この時、俺は戦士に憧れた。どんな戦いでも、笑顔で、楽しく、国を、他でもない特別な何かを背負って戦う。その姿が、とてもカッコよく見えた。

だから全力で、守ってやろうと思った。

「行ってらっしゃい、パパ」

 俺もいつか、こうなりたいな。と思った。そして、天に誓った。

 

 戦争が始まってから一ヶ月。

 人間たちの損害は増えていく一方。

神竜の圧倒的な強さに人は手も足も出てなかった。

 もうすでに、ホープ国の半分は崩壊していて、王族たちも混乱を防ごうとするので精一杯。

 このときには、俺はもう諦めていた。

 父はもう戦死していて、そのうちに自分も死ぬんだろうと思っていた。あんなにもパパは強いのに勝てないなら、もう無理だと諦めていた。

「パパ、死んじゃったのかな、ママ?」

「矜恃、パパはまだ頑張って戦っているのよ、応援しようね」


 数か月後。

「逃げろぉ!」

「行けいけぇ!」

「早くしろ!」

 人間たちの叫び声が響き渡る。

 神竜が俺たちの街に攻撃を仕掛けてきたのだ。

 戦士団も、住民たちがいるので魔術や銃を使えるはずもなく。俺たちの街は壊れ崩壊していく一方。

 銃をもって住民たちも応戦しようとするが当たった球は紙くずのように零れ落ちていき、無力で全く通用しない。

「クソ! 死ね!」

「うおおおおおおお!」

 応戦など意味もなく、俺たちの街は血みどろで、瓦礫が積もる地獄となっていった。

 そして、その元凶である。

 絶望を与える竜が、

 暴れまくり殺戮を繰り返す竜が。

 神竜が俺と母の前に降り立った。

「おい人間、試練を与えよう」

「………あ、」

「人間の子供よ、それは貴様の母親だな、今から殺す」

「え、な」

「だからな、そうされないように守ってみろ」

『心臓を突き出せ』

 俺は怖くて動けなかった。母を守ろうとしたかったけど何もできずに、一瞬で。

 母の体から心臓だけが飛び出し、神竜の目の前で潰れた。

 ぶっちゃあ。

 まるで水風船が割れる感じで、イクラが潰れるような音が響いた。本当にちっぽけで、切ない音がその空間に響いた。

「ぁ……あ」

 俺は腰を抜かし、何もできずに床に座っていた。

 そして神竜は、心臓と母の体をそこらの瓦礫に捨てて飛んで行った。

「ふふははは、クソが。その程度で……」

「な……んで」

 俺はこの日から、強くなろうと天に誓った。

 

 

 それから一年経ち、戦況は最後の二ヶ月で変わった。人間の魔術士が神竜を人の体にとどめる術式を完成させたのだ。

 これなら終わる、そう思っていた。

 俺はこれで戦いが終わると思った。

 しかし、そう簡単にはいかなかった。神竜は、神の竜。神なのだから、術式を発動する隙すら生んでくれない。

 だから、人間はここからが難しかった。どんな攻撃を加えても、全てが効かず、跳ね返され逆にこちらが攻められた。

 そんなに優れた戦士が戦っても、一瞬で蹴散らされる。

 

 しかし、そんな状況も父が変えてくれた。

 父率いる王国戦士団の最強部隊。ランクSS以上の戦士で構成された部隊の魔力砲一斉攻撃により、神竜が数秒止まった、そしてその隙を生かし術式を発動させた。

「ギギャアアアアアアアアアアアアア」

 神竜は雄叫びを上げ、体が白く光りだす。

 その白い光は辺りを明るく照らし、太陽よりも明るい光量で光った。まさに頭が白くなるとはこの通りかのように。だが、その光の奥には何かがいた。

 そこには、小さな小さな女の子がうずくまって泣いていた。

 まるで赤ちゃんのように、大きな声を上げて。

 そして、それを確認した瞬間、術式は成功した。

 しっかりと人間の身にとどまった。

 そう、このとき生まれた子がのちに俺の妹となる琥珀である。


 父はその一週間後に帰ってきた。

 だが、この戦争で俺の母はこの戦争の犠牲者となった。母がいない中、一人で生きた俺はもう心というものを失いかけていた。

「パパ、ママをま、もれ……なか……ったぁ」

 玄関の前に立っているボロボロの父に、泣きながら抱き着いていた。

「それは、お前が悪くはない」

「………ぁぁ」

「ごめんな、ごめんな」

「ぁ、ん……ぁ」

「ごめんな」

 父は、ただそう言った。ただ抱きしめてそう言った。

 

 その時父は何かを抱えていた。

 腕で優しく抱えているのは、角と翼が生えている赤ちゃんだった。

「パパ、その子は」

 ちょっと驚いて父に聞いている。

「こいつは神竜の子だ」

 この子は人間としては敵、忌まわしき神竜の子。そんな子を置いていたら周りからなんて言われるか分からない。

 しかも、母を殺した張本人。父もそれを知っているはずなのに。

 しかし父は、家族に向かい入れた。

 俺には何をしたいのかが全く分からなかった。

「今日からこの子は俺たちの家族だ」


 最初は俺も、あまり仲良くはせずに、世話は全て父が行なっていた。夜泣きも、トイレも、ミルクも全て父がやった。

 俺は当然のことだと思っていたが、一人で頑張るその姿を見たら途中で耐えられなくなり、俺自身も進んでいつの間にか手伝っていた。

 少しずつ大きくなっていくにつれて、話し始め、名前は俺が六歳の時につけた。名前は『琥珀』。意味は琥珀のように綺麗でいて欲しいという意味だ。その頃から。いつも一緒に遊んで、ご飯も食べて、お風呂も入って、あの避けていた日々が嘘のように仲良くなっていた。そして、近所からはいつしか、仲良し兄弟だと言われ、琥珀の正体を知ってもなおみんなはそんな俺たちを祝ってくれていた。

 

それから六年後、俺が十二歳の時。

父が死んだ。

 その時流行した感染症にかかりすぐに死んでしまったのだ。王国最強とうたわれていた父でも病気には勝てずにあっけなく死んでいった。ほんと、ダサいよ。

「と、う……さん……」

 泣きじゃくる俺を琥珀は、そっと抱きしめてくれた。 

 まるであの頃の母のように。俺を命がけで守ろうとしてくれた母のように。

 その小さな体を大きく使って、一生懸命、俺を抱きしめてくれた。

 すぐには立ち直れなかったけど。

「お兄ちゃん、だぃすきぃ」

 耳元で一生懸命励ます琥珀に、そしてその最高の笑顔に、俺は違う涙を流していた。

この頃から俺は、琥珀の虜になっていたのだろう。


 一年後、琥珀の体にある異変が起こった。

 琥珀が急に倒れ、口から血を吐き、顔はひび割れ、角と翼が大きくなった。すぐに病院に行き、治療をして、なんとか一命はとりとめた。

 その症状は神竜の魔術封印による副作用で、悪化すると暴走するという琥珀だけがかかるものだ。

 そして医者の口からは、次はないと言われた。


 その言葉は俺の心に突き刺さった。

 それは、もしももう一回こんなことがあれば次こそは必ず神竜化することを意味している。また、人間を滅ぼす戦いが始まることも意味する。

 あの戦いは、起こしてはいけない。

 あれはただの地獄。

そして父はいない、いつ死ぬかはわからない、そんな恐怖と戦う日々。もはや、地獄というべきだろう。

 それに、琥珀に人間族を滅ぼしたという責任を押し付けてはいけない。そんな重たくのしかかるものがあるなら、それはまず起こってはいけない。

 だから俺は怖かった、その言葉を聞いて、怖かった。


 数週間経って琥珀は回復して、顔のひび割れや、角や翼も見えなくなり元に戻っていた。その時、どうしても先生の言葉が離れてくれなかったからすぐに喜ぶことはあまりできなかったが、俺の琥珀は戻ってきてくれた。

 やがて琥珀は退院して、家での生活が元に戻った。


 琥珀は毎日魔術の勉強をして、たった十歳でランクA戦士になった。

 この時から最強の妹への道が始まった。

 最高の妹で、最高にかわいくて、すごくいい声で、すごく強くて。

 本当に大好きな妹である。


 神竜からできたことを除いて……。


「お兄ちゃん!」

 そんな可愛い声と、可愛くてとても優しい笑顔がいつも俺を支えてくれた。



 俺は気づくと見覚えのある部屋にいた。

 でも、ここがどこなのかは分からない。ただ、どこか懐かしさを感じられる。

「お! 起きたのね」

 開いた部屋の扉から綺麗なお姉さんの声がした。

「あなた、叫んで倒れたんだってね」

 よく見ると看護師さんで、ここは病院だということに気が付いた。多分この懐かしさも、琥珀が倒れた時に使っていた部屋と同じタイプのものだからなのだろう。部屋を見渡すと小さなテレビ、花が挿してある瓶、風になびかれる真っ白なカーテン、それらすべてがほんとに懐かしく思えた。

「ねえねえ、あなた聞いてるの? 矜持くん?」

 お姉さんに肩をたたかれてやっと気づいた。

「……あ、すみません」

「大丈夫?」

「少しぼーっとしていて……」

「はぁ、まったく。もっと寝なさい」

 呆れた声でお姉さんは言った。

「あなたに差し入れだって。えっと、確か……、明日花さん?」

 するとポケットから何かを出した。

「明日花さん……」

「ええ、その方がこれを」

 渡されたのは青白く、透明な石だった。

「これは?」

「とにかく、ずっと持ってなさい。だって」

「はあ……」

 だが、ここに来たということは。明日花さんも琥珀の神竜化を知っているのか。おそらくあの人ならもう動いてるに違いない。俺ももう行かなきゃ。

 ベットから出ようとすると、足に激痛が走る。

「ック⁉」

「どこ行くのよ?」

 痛みに耐えながらも俺は立って答える。

「早く行かないと。琥珀を助けないと」

「その体で行けるの? あなたの体はね、神竜の特性である『恐怖』によりダメージを受けているの。だから足が脳の指示を聞かずに、ずっと痛みを感じさせているのよ」

 だとしても、俺は。琥珀助けることを選んだ。

「でも、行かなきゃ……ック!」

 稲妻のように激痛が走る。それはすごく、まるで足が根こそぎ千切られたような、尋常じゃない痛み。

「そんな体で、しかも相手は神竜よ? ランクDのあなたが戦えるの?」

「でも、でも」

「自分の身すら守れないあなたにできるの? 誰よりも弱いあなたが立ち向かえるの?」

「でも」

「琥珀ちゃんは、妹さんは、どうやって助けるの? 方法は? やり方さえ間違えればまたも前のような悲劇が起こる。それでも行けるの?」

 そんなことは分かっている。俺なんかがどう足掻いたって勝てる相手じゃないことは誰よりも分かっている。一番、この世界で一番俺が知っている。それはこの身を持って証明している。それに、どうすれば琥珀が助かるのかも分からない。

 でも、それでも。

 それでもやっぱり。

 俺は、琥珀の兄だ。ここで戦う以外の道なんて、元より存在しない。

「戦うなんて無理よ」

「でも行くよ。俺はあいつの兄ちゃんなんだ あいつは俺が守る、そう決めたんだよ」

 結局行かないと始まらない。俺が行かなきゃ何も始まらないんだよ。そうしなきゃ、助かることだって絶対にない。

「………ったく。どんなに頑張っても死ぬわよ。勝機なんてないわ」

「死ぬ覚悟はとっくに出来ているよ」

 あいつを守る、どんなに琥珀が優れていても、どんなに俺がクズ野郎でも、俺はあいつをこの手で助けてそばにいてあげたい。

「なあ姉さん、これでも俺は男だ。国最弱の戦士で、クソ野郎だ。でもな、もう昔にな。あいつを守ると俺は誓ってるんだよ」

 そう,あの絶望におぼれた日。俺は、全力で俺を励ましてくれた琥珀を死んでも守ると誓った。

 可愛くて、たくましくて、誰よりも孤独な琥珀を守ると。

「俺の使命は、妹を守ることだ。俺はあいつのためのやってやる」

 俺はそれを聞いて微笑んだ看護師さんを置いて、足を引きずりながらも琥珀のもとへ向かった。

 その男の後姿はどこか寂しそうで孤独で、それでもたくましい背中があって強いものだった。多分、看護師さんにはそうやって見えたと思う。


 ホープ国北の極寒の森。

 森と言うのだから木があるのか、と普通に思うかもしれない。ここには木がない。一面が氷で埋め尽くされている極寒の世界。

「全く、我も落ちたものだ」

 そう呟いたのは十二年前の悲劇を作り出し、その長い時を経て琥珀を飲み込んだ悪の権化。神の竜である神竜。

「やはり体が鈍っている。十年近い封印を経てダメになっているな」

 悪の権化と言うのは被害を受けた人間族だけで、別に神竜が悪なわけではない。神を名のるのだから、なおさら正義の一つや二つは持っていないといけない。

「一瞬であの街を壊すこともできず、人間どもに同情して選択肢を与えるなど本当に落ちたものだ」

 神竜は自分を落ちたものだと言っていた。なぜか。あんなにも矜恃に圧倒的な差を見せつけて、街もある程度壊したと言うのに。この世界はどこまで広い。それが分かる一言である。

「なあ、我の言うことが聞こえているのだろう」

 神竜は問う。

 誰に問いたのか。

 それはもちろん。

「私の体をどうするつもり?」

 可愛らしい女の子の声がどこからか聞こえた。

「ハハハハハ! 小娘、この体はお前のものだと言うのかなぁ?」

 高笑いをして神竜は答える。

 自分よりも弱いものを見下して、馬鹿にして、侮辱して。

「この体は私のもの。もうお前のものじゃない! お前が昔にどんな事をしてきて、やられてきたのかは知らない。でも、そんなことは関係ない。私はお兄ちゃんのものだよ」

 神竜は遠くを見て答える。

「面白いことよ、人間。だが我が何をしようとお前に何が出来る?」

 少女の声は途切れ聞こえなくなるが、なにを考えているのかも見通したように神竜は言った。

「ははは、そう。お前は何もできぬ。俺の体の中から見届けるといい」

「お前は何をしたいの?」

 少女は神竜に問う。

「おうおう、我にまた質問とはな、人間」

「何度だって聞く」

「仕方がない。答えるとするか」

 ため息をついて。

「われは人間を滅ぼす。あの忌々しい人間を滅ぼす」

「それは恨み?」

「恨み? まあそうなのかもしれない。我は悲しかった。百年前のあの日、我は人間にボコボコにされた。いじめられたのだよ。この名を汚されて、侮辱以外の他ではない」

「悲しいね、だから滅ぼすの?」

「それもある、だけど本当の理由はなんなのかは……我にもよく分からない」

「分からない?」

 神竜が弱々しく呟く。

「ああ、もう、多分……これは。本能じゃないか、と」

「本能?」

 もう、神竜にも分からないのだろう。別に罪のない人間を心地よく殺したいわけでもない。だってそれは神ではない。それは単なる殺人鬼だ。

 この世界を滅ぼして一人だけになりたいわけでもない。とある兄弟の仲を悪くしたいわけでもない。血みどろの地獄を作り出したいわけでもない。

 ただ、神竜の心が殺したいと、滅ぼしたいと叫んでいる。

「分からないのだよ、人間」

「私もね、最初、自分が何なのか分からなかった」

 二つの心が重なり、少女が打ち明ける。

「クロウさんが本当のパパではないことも知っていて、お兄ちゃんがお兄ちゃんでもないことも知っていた。私はこの家族ではないことはもちろん」

 同情なんてしようとはしないが、何故だか分かってしまう気持ちがどこかにある。

「周りからは鬼の子だと恐れられ、怖がられる。私は生きる意味なんてない存在だと思ってしまう」

 一人ぼっちになりたくない。と少女は前を向いて呟く。

「でもその時、矜恃が、お兄ちゃんが、元気をくれた。とびきりの笑顔でお前は俺の妹だよって言ってくれた」

「……、」

 神竜は何も言わずに向こう側を見た。

「私は分かったんだよ。これって何かが」

「……、」

「これは絆、大好きな人との最高の絆」

「我に何を言いたい?」

「いや、何でもない。ただ言いたいだけ」

 はっ、と笑う。

「まあ、そうやって笑っているのも今のうちだよ」

「何を言う」

 馬鹿にしながら神竜は言う。

「私の仲間は強いんだよ」

 琥珀も負けずに、笑って言い返した。


 その後ろ姿を見て、一人の男が声を掛けた。

「おい、お前。一人で行くつもりか?」

 それを聞いてなお、俺は振り替えずに答える。

「もちろんだ」

 男が低く見下すように。

「……馬鹿だな」

「それで結構」

 そして一つおいて。

「お前には出来ないよ」

「何で分かるんだ?」

「お前が手を出していい山ではない」

「じゃあ誰があいつを守るんだよ?」

「…………誰も守れない」

 何を言ってると俺は思った。誰も守れない? 何故? 戦士全員で戦えば勝てるじゃないか。

 俺はそこで振り向いた。

 するとそこにいたのは…………現王国戦士団団長様であった。

 名前は、イキシア=グロリオサ。

 団長様だけあランクはSS、背中に携える剣は昔、ホープ王国を建国するのに携わった一人の戦士が使っていた上物。名前は、聖剣アイリス。

 しかしその剣は別に特別な素材で出来ているわけではなく、ただの鉄と木でできている非力な剣である。では何故それが協力なのか。そこにはこの国を作った人々の永遠の希望と願いが込められているからである。

 彼は強く、たくましく、誇り高い。俺は、その正確な指示と敵の弱点を見抜き戦術を考え、自ら前に出て団結力すらも高められる最強の団長だと思う。

「団長様がなぜ?」

「なぜかって?」

 イキシアが当たり前だと言わんばかりに、

「前団長の娘のことに決まっている」

「手伝ってくれるのか?」

 一人突っ走る俺に救いの手を差し伸ばしてくれるのか、それともお前など弱くて邪魔だと、いらない足手纏いだと言いたいのか、そのどちらかだろうと俺は思っていた。

「手伝う? 馬鹿なのか矜恃?」

 その時、彼が考えていることが本当に読めなかった。その笑みにどんな意味が込められているかも分からなかった。

「お前にはお前の目的があり、俺らにも俺らの目的がある。お前はお前がしたいようにしろ、俺らもそうするつもりだ」

 自分で救いたいものを救えと、一人で戦えと言っているのかと思った。でも、そうではなかった。

「ただ忘れるな」

 …………。

「お前一人ではないことを。お前は昔から一人で戦おうとする。お前が小さい時も一人で勉強して、一人で稽古しているところを俺はクロウ団長にお付きしてた頃に見たことがある。小心者で実力も無いのに深刻な時には一人で突っ走ろうとする。そんなじゃお前は誰も救うことなどできない。世界は広い、何があるのかも分からない世界でお前はどこまで通用する? 通用など一ミリもしない、一人で行って一人で死ぬだけ。ただそれだけ。世界はそんなに甘くないんだよ、矜恃」

 俺は呆然とした表情で立っていた。

「お前は一人ではない。もっと周りを頼るんだ。人間など脆い。脆くて貧弱でちょっとの衝撃で破れる紙のような生物だ。でも、だからこそ。人間は集団を作る。一人じゃ対応できないことにみんなで対応して助け合う。違う目的を持つ者でも、同じ敵に共闘して立ち向かう。これが俺たち人間が強くいるために必要なことだ。紙だって数十枚、数百枚、数千枚重ねれば簡単には破れないだろう。もっと周りを見て、頼れ。お前は妹を守りたいんだろう? なら仲間を信じて、そして強くなれ」

 それを聞いてようやく気がついた。俺はいつも一人でかっこよく終わらせる父を見てこうなりたいと思っていた。だが、父にはこんなにも強く頼れる部下、いや、仲間がいたこと。

 琥珀が父みたいに一人で、クエストをこなし、あのペットであるシロを一人で捕まえてきたことも。森の主を魔力砲で一人で倒したことも。全て一人で倒していたわけではなかったのだ。琥珀に憧れを抱き、応援する子供達や一緒に戦ってサポートをした俺たちがいるから成し遂げられていた。

 そして俺は心のどこかで調子に乗っていたのかもしれない。俺が一人で眠れる竜を倒したと聞いて俺は一人でも戦えるものだと思っていた。でも、そうではないはずだ。そんなわけがない。最弱な俺にそんなことができるわけがない。よく考えたら分かることだ。俺にだって、どんな時も仲間がいた。虎狼や明日花さん、街のみんな、協会によくいる戦士の仲間たち。そして、可愛くて、美しくて、頭が良くて、優しくて、思いやりがあって、みんなの憧れで、本当に大好きな妹である琥珀がいる。

 そんな事に俺はやっと気がついた。

 もう絶対、あいつを一人にはさせない。

 俺はその時、あいつの英雄になろうと思った。


 そのあと俺は、イキシアに連れて行きたいところがあると言われ、退院手続きを済ませてからイキシアに言われたところに向かった。


「イキシアはここに来いって言ってたけど………………ここって、王城じゃん」

 そう。俺はホープ国の王城であるブライダルベール城に招かれていた。

 城の門から数十メートルの距離まで来ると、門にいる二人の戦士が近づいてくる。

「おいお前、何者だ」

「許可証は持っているのか?」

 俺は病室でイキシアに「これを使え」と言われた事を思い出し、スマホに送られた招待状のようなものを提示する。

 すると、二人は驚き頭を下げてきた。

「な、ななななんと前団長様の息子さんとは知らずに無礼をしました!」

「すみません!」

 初めてこんなことを言われた。俺は意外と凄い人物なのかもしれない。そんな夢物語な事を考えつつ、俺は貰った招待状の凄さにも見惚れて門を潜る。

 門を潜ると、城の庭一面に咲く多くの花が出迎えてきた。

 庭、というより花畑の方がいいだろうか。そのくらい花が咲いている。道はあるが、足の踏み場もない。色とりどりの花が風に揺れて、その景色は語彙力のない俺には表すことは出来ないくらい綺麗なものだった。

 俺を最初に出迎えたのは回っているような花弁が美しいラナンキュラス。

 そう、俺の家の名である。

 ここにあるラナンキュラスは俺の父が生涯ずっと、死ぬ前の日まで愛情持って育てていたそうだ。今ではその意志を継いでこのブライダルベール城のメイドが日替わりで育て続けているらしい。

 俺はその花を見ていると。

 涙が一滴。

 俺の頬をなぞるように流れ落ちる。

 抑えきれない感情が心の奥底から溢れてきた。

「………父さん…………俺は! ……こ、こはくを……守れないのでしょうかっ⁉︎」

 俺の小さなこぼし声が大きな花畑に響き、俺の涙が花にもう一滴落ちる。

「なん、で……」

 悲しくて、悔しくて、不甲斐なくて、俺の目から涙が溢れ出す。

 咲き誇るラナンキュラスの一つ一つが琥珀との思い出に見えてしまう。

 すると…………どこらか声が聞こえた。

『父さんはね、逃げる戦士が大嫌いだ。どんなに相手が強くても、どんなに自分が劣っていても、後ろに守るべき者がいるのなら、お前自身が戦士なのなら、それは戦わなければならない。そこで負けてはいけない。戦わないのは、ど三流の戦士だ。自分に負けずに全力で戦え。全身全霊でその身が果てるまで戦え。手足を失っても戦え。そんな、自分負けずに諦めないで戦い抜く戦士が、父さんは大好きなんだよ』

 父さんの一言が聞こえたような気がした。

 花から聞こえたわけでもないのになぜか俺は目の前の花を強く握りしめてしまった。花は音もなく崩れ、散っていく。落ちた破片はそして、風に吹かれ何処かへ行ってしまった。

 涙を拭って立つ俺は、背中を押されたように体を崩した。

 俺はすぐに振り向いたが、そこには綺麗な花畑しかなく、俺を満遍の笑みで見つめてきた。

 俺は城へ続く一本道を歩き出す。

 頭の中で目に入る花を数える。

 マリーゴールド、チューリップ、さらに現団長であるイキシアの花である、イキシア、グロリオサも広がっている。その光景は本当に綺麗で、目に入るたびその美しさに感動してしまう。そのくらい。全ての花が咲き誇り、色とりどりとはいえ、虹とは少し違う、何か違う美しさがそこにあった。

 そして、城へ入る大きな扉の前にはこの城の花。ブライダルベール。

 花言葉で幸福。

 それらの花はこの国を、そしてこの城を作った昔の人が願いを込めて植えたものであり、この国の平和を願っている。

 ブライダルベールが城の近くを囲み、白と緑で埋め尽くしている。

 そこでやっと、俺は国王の花好きさに気がついた。


 俺が前に立つと扉が静かに、ゆっくりと開いていく。大きな扉が開いていくのを見て少しだけ驚いてしまった。魔術を使って動いていることは俺も分かっていたが、なぜだか感動して、すごいなぁ……と思ってしまった。

 俺が入ると前には、美しいメイドさんが立っていた。

「矜恃さんですね。お待ちしてました、お部屋へご案内しますね」

 メイドさんの笑顔の挨拶はさらにとは言わないが美しくて、俺はお辞儀をしてからメイドさんの後ろに並んで付いて行く。

 赤黒い絨毯の上をゆっくりと歩き、階段を三階分登る。車の半分くらいの大きさがあろうシャンデリアが廊下を明るく照らし、階段にもそれより一回り小さいのが踊り場の天井に取り付けてあった。手すりには木彫りの花が彫られていて、俺にも分からないような花もあった。お階段を登り終え廊下を進むと奥に一つだけ雰囲気の違う大きな扉が物凄いオーラを放ち佇んでいた。

「こちらです、今開けますので少し下がってお待ちください」

「は、はい」

 その大きな扉にはブライダルベールが描かれていた。白と緑の二色を何十色で混ぜ合わせて表していて、言葉にできないくらい、とにかく迫力が凄かった。

 メイドさんが扉の前に手を出して押すような仕草をすると、扉がゆっくりと開いていく。

「どうぞ中へ」

「あ、……はい」

 ちょっとびっくりしてしまい反応が出来なかった。

 そんな俺のへなちょこな返事をかき消すかのように、一人の男の声が大きな部屋に響く。

「おお、待っていたぞ!」

 元気で男にしては少し高めなその声は、イキシアだった。

「あ……」

 正直、部屋の大きさと凄い威圧感でまたも反応出来なかったが、奥に多くの影が見える。

「団長………………………………………………………………………………………………………………………………。こ、こここここく王さまぁ⁉︎」

 団長の後ろに見えた多くの影の一番奥に、王様がいた。

 驚きのあまり沈黙してしまったが、頭をフルに回転させる。

「こく……おう……しつ……⁉︎」

 何か他とは違う雰囲気だったこの部屋は、国王室であった。


 俺は中に入り、国王のもとへ走って地面に膝をつく。

「国王様! 先ほどは無礼を働き申し訳ございません!」

 すると国王は笑って、

「はっははは! 何を言う矜持、昔からの縁だろう? そんなに硬くなるなぁ!」

「いや、でも…………」

「矜持、お前昔っから国王様のことをブライって呼び捨ててたじゃないか笑」

「イキシア……」

「イキシアの言うとおりじゃ! 硬くなる必要なんてない、いつも通りでいいのじゃよ」

 ここまで言われたらそうするしかない。

「分かったよ、ブライ」

「そうじゃ、矜持」

 それはともあれここに集まるオーラ丸出しのメンバーは一体何なのか? イキシアの後ろで腕を組みながらこっちを見ている者たちは一体何なのか? そんな疑問を浮かべる。

 その者たちの正体は俺にはよく分からないが、ただ。ヤバい者たちなのはよく分かった。

「おお、矜持。こいつら何なのか知りたいって顔してるなあ~」

「あ、うん、バレてたな……」

 イキシアは心を読めるのか? と毎回思うが気にしないでおこう。

「じゃあ説明するか、ここに集まるやばい奴らはな~」

「イキシア、分かりやすくじゃぞ」

「ああ、分かってますって国王!」

「でな、こいつらは、この国に集う強者たちってことだぁ!」

 ん? とまたも分かりずらいイキシアの説明に俺は頭を悩ませる。

「まあとにかく、自己紹介してもらったほうがいいか。じゃあ――よろしくぅ~」

 適当にイキシアが振ると、全身銀色の鎧で包まれた大男が出てきた。

「ならば俺から。俺は王国戦士団副団長の達也=グロリオサ。この男の弟だ。背中にある大剣は聖剣アイビー。この国ができた年に記念として作られた剣で、この国が滅びぬようにという願いが込められている。そしてまあ、この兄を影から支えている。こんなんだけど兄もいいやつだから仲良くしてくれな。まあそんなとこだ、お前は俺のことを見たことないだろうが俺はよく見ていたぞ。よろしくな」

 イキシアの弟で聖剣持ちか……。弟がいることは聞いていたが、まさかの副団長様だったなんて知らなかった。イキシアもしっかり言ってくれればいいのに。達也さんの方が兄だな。

「なんか言ったか?」

「いいや」

 危ない危ない、感ずかれるところだった。

「じゃあ次おれっちー。おれっちも達也と同じく副団長のトレニア=パキア。おれっちはねーこれが武器なんだ!」

 そう言ってトレニアが来ているカジュアルなパーカーを開くと出てきたのはパーカーの裏にびっしりとくっついてある数十本もの短剣だった。

「こいつらはバンブルビー。名前の通り黄色と黒の蜂みたいな短剣だよー。重くないの? とかよく言われるけど、まったくだね! おれっちも頑張るからよろしくぅ‼」

「トレニアは、こんな格好だけどおかげで俊敏さがすごいんだぜ、仲良くやってくれ」

 確かにイキシアの言う通り格好はすごい私服感出ているけど、副団長だから実力は伊達ではないんだろう。

 すると、達也さんの後ろから女の子が出てきた。

「次……わた、し。えっと、なま……えは、アストロメア…………………エーデルワイス。……………え、あ……よろ、しく」

 眼鏡をかけた華奢な女の子、静かでコミュ障感が溢れている。

 天然な感じも出ていてかわいいな……。

「お前、可愛いなって思ってるだろう」

「い、いいいいや! そんなこと!」

「こんな感じだけどアストロはこれでも第一分隊長だ。こいつの持つ魔弓クロユリは、刺さると大けがを与える弓だ。人間なら当たれば致命傷は免れないな。とにかくアストロはすごいやつだから油断するなよ」

「そうなの⁉ 凄い人なんだな。よろしく、アストロさん」

 短く略して名前を言うとなぜか顔を真っ赤にしてもじもじしてきて、なんか変なこと言ってしまったのかと思ってしまうが、おそらく彼女は恥ずかしがっていただけだろう。

「よし、次は僕だな。僕は第二分隊長のスイレン=ダリア。スイレンって呼んでくれたらうれしいな。みんな武器を紹介しているから僕も言おうかな。僕の武器は槍だ。これはガーベラ、神秘の槍。聖剣とはちょっと違った武器かな、この槍は神秘を発動する槍で………って説明するより使ったほうが分かりやすいかな。まあ、とにかくよろしくね、矜持君」

 凄いお兄さんな感じで優しい人だな。抑えきれない言葉が俺の口から出てしまう。

「よろしく! 兄さん‼」

「兄さん? スイレンって……」

「兄さん!」

「まあいいか。よろしくね」

 そんなこんなで次々と紹介していき、戦士団だけでなく一般の戦士からも多くて中にはアストロさんみたいな魔の武器をもつ者も少なくはなかった。確実に俺よりは強い者ばかりだった。


「…………って感じだ」

「で、この人たちで神竜を?」

 俺自身も薄々分かっていたからそれについて聞いてみる。

「そうだ。国王直々に招集をかけて集まったこの五十人の最強の戦士たちで神竜を狩る」

 そうか、やはりこの最強たちで……って、待てよ。

「か、る?」

 どういうことだ? 琥珀を助けてくれるのじゃなかったのか。狩るって一体⁇

「そうだ、俺らは狩るんだよ、やつを。だからをお前を呼んだんだよ、矜持」

「俺が、救えと?」

「ああ、前にも言っただろう? お前はお前の仕事をして、俺らは俺らの仕事をする。それだけだ」

「そうじゃ、矜持。神竜は最大クラスの敵。国のために私はやつを狩る。お前はそれを許さないと思うが、そうするつもりだ」

「ブライ! 何で! 琥珀はあなたとも親しかったじゃないか!」

「私はホープ国の国王ブライダルベール九十八世。たとえ、相手が親戚のような者でも狩らなければならない」

「でもっ……!」

「だから、お前を呼んだ。もしも琥珀を救いたいなら、お前自身で救ってみるのじゃ」

 そんなことを言われても、俺は知っている。

「……俺は弱い。いくら前に眠れる竜を倒したとて、そこまでつけあがるほど馬鹿じゃない。俺はただの、弱い、Dランク戦士なんだ。……神竜相手には勝てない」

「そんなこと言うと思って呼んだんだよ、矜持」

 イキシアが笑いながらそう言ってきた。

「お前は弱い、確かに弱い。でもね、強くなれると思うんだよね、俺は」

「どういうことだ」

「いやいやほんとだよ矜持。お前ってさ、魔術を知ってるか?」


 俺は何を聞いているのだと、馬鹿にしているのかと、思った。そんなこと知ってるに決まっているだろう。じゃなきゃ俺は向上魔術さえ使えてない。知っていて当然なこと。

「当たり前だろ。知っていなきゃ使えない」

「お! ご名答! そうだ、知らなきゃ使えない!」

 もう。まったく何を言いたいか分からない。

「そんな分からないお前に教えてやろうじゃないか」

「はあ?」

 俺はもっと訳が分からなくなった。言ってる意味が分からない。

「矜恃、イキシアの言ってることは本当だ。お前は魔術が苦手、らしいがそうじゃない。魔術を知らないんだよ」

「魔術を知らない?」

達也さんが俺に真剣な顔で言う。俺は魔術を知らない、そうなのか。だって魔術は何度も練習することだけじゃ使うことができない。その人との特性が使える魔術に影響するんじゃないのか? 一体どういうことだ。

「その通り、矜持」

「よーし、こっからはおれっちが説明しよう!」

「お前は引っ込んでろ、兄が説明する」

 達也さんが首根っこを掴んで引き下げる。

「イタイイタイ! わかったわかった!」

 城に苦笑いが広がった。親と子みたいだな。これで副、か……。

「んで、お前は魔術についてどこまで知ってる?」

「んっと、魔術は術式を唱えることで発動する。そしてそこに自分の特性も関係していく。また、術式を何かに組み込んだものは設定された動きがあれば発動される、そんな自動魔術もある。って感じかな」

 すると、周りの視線が俺に集まった。

 え? 俺なんか変なこと言った?

「…………………………」

「「「「「「あはははははははははははははははははは‼」」」」」」

 全員が腹を抱えて笑い出した。

 ええええーー何ですかい? 最弱戦士を笑って楽しいのかな?

「あ、あのぉー」

「矜持……お前、マジか!」

「きょう、じ、くん……きみ、おも……しろい、ね」

 まさかのアストロさんに吹き出しそうに笑われた。

「……矜持くん、君面白いね」

「兄さん!」

 当たってないの?

「矜持、お前は本当に知らないんだな……」

 達也さんまで、そんなに違うことを言ったのか、俺は。

「はぁ~~~。よし、おれっ」

「お前は引っ込め」

 またもや下げられる。もう苦笑いも無かった。

「はいはい、矜持はそれしか知らないんだな。分かった分かった」

「いやもう、なんなんすか」

 さすがに馬鹿にされるのは辛いぞ、いくら何でも。

「イキシア、早く説明してやれ」

「はい、国王!」

 ブライが少し笑っているのが見えた。結局、正真正銘の全員に笑われた。

「魔術ってのはな、科学から来てるんだよ」

「科学?」

「そうだ、科学だ」

 魔術は魔術で、科学は科学なんじゃないのか? その二つはたとえ一緒になろうとも原点まで変わることはない。そうじゃないのか。

「昔に、ある一人の学者が魔術を生み出したんだ」

「その学者はこんな実験をしだ。シュレディンガーの猫っていう実験。実験なんだっけか? まあいいか、俺もよく分からんからそこはいいか……」

 じゃあダメじゃん。って思ったが、これは置いてこう。

「残酷な話だから優しく説明しようか。矜持、俺の手には何が入ってると思う?」

 手のひらを見せてからグーにした。何もないに決まっている。

「何もないだろ」

「そうだ、お前は中身を見たからその答えは知っていて当然」

「まあな」

「でも、それを知らない人から見たらどうだ? 確率は五分五分じゃないか?」

 いやまあそうだけど、何もないのだろう? それなら百パーじゃないか。

「そうなのか?」

「その人から見たら、五分五分だ。つまり、この手の中には二つの世界が存在する」

「え?」

「理解できないのも仕方ないが、そういうことなんだ」

 二つの世界、それじゃあ矛盾が。

「手が開けば、どちらかがなくなり、どちらかが現れる。そう。開かないと矛盾がある。でも科学者は信じ続けることで、そのどちらか一方をどこまでもあると信じたことで、魔術という世界を生み出したんだ」

「いや、よく分かんねぇ」

 もうごっちゃで分からない。矛盾が矛盾めいて分からない。

「いや、分からないのも仕方ない。この話は難しい。イキシアに言わせたらもっと分からなくなったな、すまん」

「ブライ、説明してくれ」

「いや、私にも無理」

 このポンコツ王が。

「とにかくなあ、矜持! 魔術っていうのは心なんだよ。その魔術を信じれば発動するんだ」

「そんな、簡単なものなのか?」

「簡単ではない、だから術式があるんだ。本当は魔術って何も言わずにでも出せるんだよ。でも、それが難しいから術式を唱えてイメージを増幅させる。お前には、魔術がイメージできてないから発動できない、だからDランク戦士なんだ。それだけのことだ」

 術式でイメージを増幅させて発動する。まだよく分かってはないが確かに俺にも心当たりはある。

 向上魔術が得意なのは俺にそのイメージがあるからだ。小さい頃に見たアニメにそんなシーンがあった。違う魔術の練習の時には、俺は作業として術式を唱えていた。だから俺はできなかったのかもしれない。そういうことなのか。

「こんな感じなんだよ魔術は。俺は思ったんだけど、お前には琥珀がいるだろう、それよくイメージすればいい魔術が使えるんじゃないか?」

「ああ、あ?」

「いい意味でな!」


 皆さんはお気づきだろうか。

 彼は魔術が苦手で向上魔術しか使えなかった。でも本当はそうじゃなかった。

 彼はその魔術をイメージ出来なかったから使えなかった、のだ。魔術と言いつつもこの世の物理法則には逆らうことは許されない。だからと言って科学の世界だけじゃ魔術は生み出せない。この世界の魔術はそのイメージを、想像を、出来るだけ鮮明に想像する。その工程を完璧にして、やっと発動できる。こんなことはないだろうか? じゃんけんする時に俺って負けるな。と思ったこと。その時は負ける想像しかできなくて確定的に負けてしまう。でも、逆に勝つなとなんとなく感じるとそれが本当に起こってしまう。

 魔術はそういう事だという。

 その前に俺が誰だって?

 別にそれはどうでもいい。俺が誰かなんて本当にどうでもいい。

 え? そんなに教えて欲しいのか?

 あえて言うなら、未来の人かな?


 そしてその翌日から特訓は始まった。

 神竜は今、ホープ国北の極寒の森を住処としているらしい。そこへ俺たちは、というか国王軍は一週間後に攻撃を仕掛ける。俺はそれまでに魔術を制御出来なければならない。

 そのため特訓に励んでいるときに、ある戦士から俺は伝えられた。

「矜恃くん、ちょっといいかな?」

「あ、はい。なんですか?」

「私はね魔術を読むことができるの、」

「は、い……?」

「それで君の魔術を読んでみたら君の使える魔術にすごいのがあったのよ!」

「ええ、んっと、状況が……」

「まあ私の魔術については置いといて、とにかく人の使える魔術を知ることが出来るの」

「はぁ……?」

 このとき俺は何を言われているのか分かっていなかったが、そのうちに俺には秘めている凄いものがあるのだと気づいた。

 まあ話が急だし、良すぎる話だし最初は本当に信じてなかったけど……。ご飯食べながらよく考えたら心当たりがあったしな。

 それは一度使っている魔術。おそらく、眠れる竜戦で琥珀が危機に陥った時にあった俺の暴走。まさか暴走が魔術だなんて思いもしなかったが、とにかく物凄い魔術らしいのだ。

 だからこの魔術は固有魔術である。俺以外の人間には扱えることができない俺自身特有の固有の魔術。固有魔術には術式、名前を付けると普通の魔術と同じように発動がしやすいと聞いたので、俺はその魔術に名前を付けた。

『プロテクトマイシスター』

 妹を守る魔術と名付けた。

「その名前はダサくないか?」

「いや、良いんですよ! 分かりやすいし、俺らしいし!」

 俺がその話を達也さんに言っていたら、それはないと言われてしまった。

「まあでも、お前のその魔術は無限の可能性を秘めている。その魔術があれば、おそらくなんだってできるだろう。次の戦士団団長はお前になるのかもな」

「それはないですよ。琥珀がいてこその魔術だし、俺はこの魔術を琥珀のために使うとき以外は絶対に使いませんよ」

 無限の可能性。俺はこの言葉に凄く感動した。いつも、ただのポンコツで雑魚で、クソみたいなDランク戦士にそんな夢のような話があるのだから、もっと頑張っていこうと、琥珀を絶対救おうと俺は神に誓った。

 とにかく俺は一週間後までに魔術を使えるようにならなければならない。だから毎日この城の裏庭で特訓をしているわけだ。

 あと五日、四日、三日と期限が迫り来る中俺はまだ使えることが出来ていなかった。

「矜持の身体能力はずば抜けているからあとは魔術だけなんだよなー」

「いやまあそうだけど、イキシア聞いていいか?」

「ん、なんだ?」

「何か、戦闘に向いている魔術はないのか?」

「は? そう言われてもな、全部使えるに越したことはないからな」

「とにかく練習しまくれ」

「はい……」

 とりあえずは琥珀や虎狼がよく使っていた魔術を使えるようになればいいか。こうは思っていたが自信が無くなっていく。でも常に琥珀のことを思い出しながら頑張るうちにいくつか使えるようにはなっていった。


 こうして色々な魔術を学び、ある程度の魔術は使えるようになった。

 結局、通常魔術の最強術である魔力砲は使えるようにならなかったが、俺には固有魔術もあるから別にいい。

 でも、俺は『プロテクトマイシスター』だけは制御できるようにはならなかった。











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