王子様も紗耶香ちゃんに気があるっぽいよ

「やっぱりさあ、女はオトコを知ると、セクシー度がアップするじゃん」

 と、ゆるふわお嬢様に似つかわしくないセリフが、智ちゃんの口から飛び出す。


 ホント智ちゃんって、色々謎だよ。見た目と中身が全然違う……。中学、高校と一緒ではあったけれど、大学に入って歴史研究会を立ち上げるまではそこまで親密な付き合いじゃなかったから、未だに彼女がよく解らない。

 あたしは常日頃、オトコなんていつでも手玉てだまに……的なインチキオーラをかもしつつ、ハッタリ利かせてるわけよ。でも智ちゃんには、そんなあたしの素性をあっさり見抜かれてるらしい。参ったね(涙目)


「紗耶香ちゃんはまだ、ロストバージンの予定はないの? 彼氏とかはいないの?」

 と、服飾学校に通うゆうかがニヤニヤしながらあたしに尋ねる。あたしは赤くなった。


「彼氏、まだいないよ……」

「え~っ!? じゃあ、好きな男子は?」

「い、いない」

 慌ててこたえるあたしに、今度は智ちゃんがニヤニヤしながら、

「でも王子様はいるよね~」

 と爆弾発言。それを聞いた四人が、一斉にキャ~~っと騒ぎ出した。


「だ、誰の話よ!?」

「どんな人~?」

「見た目はさ、筋肉質ずんぐりむっくりで、ちょっと色黒。背は一七〇cmちょい位で、顔は普通。薩摩隼人。意外に知的な感じで話題も豊富。普段は穏やかだけど気骨のあるタイプ……かな。あと音楽の趣味とかも、紗耶香ちゃんと合うっぽいよ」

 と、智ちゃんが暴露する。

 それって雄治のことじゃん。ってか智ちゃんは、雄治の音楽の趣味まで知ってたんだね。いつの間に聞き出したんだろう……。やっぱ彼女のコミュ力、スゴいわ。


「紗耶香ちゃんって男子の心理とか視線に鈍感な、いわば『眠れる森の美女』じゃん。でもその王子様がそばにいると、フェロモンだだ漏れ状態になるの~」

 キャ~~っ、と四人が再び騒ぎ出す。隣のゆっこが、あたしの脇腹を指でつんつんつつからかってくる。あたしは真っ赤になった。


「王子様も、紗耶香ちゃんに気があるっぽいよ。紗耶香ちゃんを今回のミスコン候補に推したのも、その人~。紗耶香ちゃんのフェロモンに全然気付いてないような、平気な顔してるけどね。結構デレてるよ」

「マジ~~!?」

「紗耶香ちゃんさえその気になれば、いつでもくっ付きそうな感じだよ~。秒読み段階だね」


 もぉ~っ。女子談義って、えげつないよ。……

 あたしは耳まで真っ赤になる。恥ずかしくて顔を上げられない。


 と、その時あたしの携帯が鳴った。良かった救われた……とすかさず携帯を手に取り、通話ボタンを押す。

 いや、救われなかった。あいにくコールの主は、噂の「王子様」だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る