紗耶香さん、ピ~ンチ……かも(滝汗)

 雄治と敬太郎君の話は物凄く面白い。向かいに座っている智ちゃんも、すっごく熱心に聞き入っている。

 こりゃあたしも、あんまし酔っ払うわけにはいかないよ。

 ……と思いつつ、あたしはビールのお代わりをオーダーする(笑)


「よくよく調べると、宮崎人は縄文前期とか中期辺りから、中南米に渡っちょった形跡がある。で、しかもそイを指摘したのが、それこそ昨日オイが借りた本の著者、日高祥氏やっとよね」

「ほう」

 敬太郎君が声を上げる。


「日高氏が一九六〇年代に、宮崎市跡江の遺跡を発見したらしい。そこン土器が、南米バルディビア(エクアドル)で出土した縄文土器の模様と一致する、っち最近になって指摘しちょっとよ」

「確かアマチュア研究家っちゅう話やったよな。すげえな」


「じゃろじゃろ!? で、外国の研究者も一九七〇年代に、縄文文化と南米との繋がりを指摘しっせ、最近では縄文人とのDNA分析なんかもやって両者の関わりが証明されちょる」

「凄いね……。ってことは、縄文人って結構大きな舟を作る技術を持っていた、ってことだよね。太平洋を横断するとなると、丸木舟とか小っちゃい舟じゃ厳しいよね」

「じゃろなあ。しかもそイだけじゃねえとよ」


 雄治が言うには、太平洋横断には随分と高度な航海術が必要らしい。

 まあ、そりゃそうだよね。コンパスもGPSもないんだから、多分星を見ながら方角を判断し、海を渡った筈。ということは天文学の知識が必要だった筈だよ。


 邪馬台国の人達が中南米の知識を有していた、ということは、漂流等による「一方通行」ではなく、ちゃんと太平洋を「往復」してたってことになるよね。であれば天文知識だけでなく、地理や気候、海流の知識もあったんじゃないかなあ。……


「古代人が高度な天文学知識を持っちょったっちゅ~痕跡は、世界中に残っちょるやろ? あれも不思議やぞ」

「まあ、そうだよね」

「天体観測には時計が要るやろ!? 学者は誰も指摘せんけど、今ンごつライト付きの腕時計とかは無い。日時計しかえちことになっちょる。しかしじゃっどん、あれは昼間しか使えんぞ。どげんして観測したっじゃろか?」

「あっ!!」


「何百年にもわたる、膨大な観測データの蓄積も必要やろけど、そげなデータは世界のどこからも見つかっちょらん。シュメールにしろ南米にしろ、突然降って沸いたごつ、星やら天体やらン『知識だけ』登場する」

「……」

 なるほど。それって盲点かも。


「まあ、シュメールや中南米には天文知識の痕跡が残っちょって『スゲぇ』と思うかン知れんけど、実は縄文日本にもそげなナレッジがあった……っち可能性がある。そイが、中南米への航海の痕跡やな」


 ダメだこりゃ。雄治の話はホントに面白過ぎる。――

 なんか短髪ずんぐりむっくりの雄治が、知的なイケメンに見えてきたよ。

 早くも酔いが回ってきたか。あたし、まだあんましお酒に慣れてないもんね。ここ数日の疲れもあるし。


 紗耶香さん、ピ~ンチ……かも(滝汗)

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