つまり縄文人は、太平洋を横断する航海技術を持っちょった
「なるほどなあ。有村雄治大先生に政治経済を語らせたら、天下一品やな。確かに『狩猟採集経済は劣っている、農耕経済への移行は進化』や……っち教わるよなあ。日本の縄文弥生史に関して言えば、その発想は間違いかもしれん」
と、敬太郎君が言う。
そっか。弥生時代ってのは「進化」「進歩」と教わったけど、それってアヤシいんだ。――
「雄治の言う通り、全国に縄文時代から続く複合遺跡があるよな。あと縄文時代には貧富の差も見られんし、戦乱の形跡もゼロ。全国で縄文人の遺体が沢山出土しちょっけど、争いによる損傷はほぼゼロらしい。つまり、争わんで良い程豊かやったっちゅう証拠やね」
「じゃっど~。
「そうやな。そういう縄文以降の歴史を踏まえた上で、卑弥呼の時代へと繋がるわけやね」
う~ん……、とあたしは思わず唸った。
智ちゃんも同じ感じ。どちらも古代史にあまり興味がなかったし、ましてやあたしにいたっては経済もさっぱり分からない。しかし今の話はよく理解出来たよ。それに面白い。すっごく面白い。
っていうかさ、ガッコの歴史の授業って、まさにそういうところをキッチリ教わらなきゃいけないんじゃない?
あたしは真面目に日本史の勉強をしたから、幸い試験の成績は悪くなかったけど、結局単なる丸暗記なんだよね。でもあれって何か意味があるの?
木製農具の名前を暗記したり、各地の遺跡の名前を暗記することが、果たして勉強だと言えるのかな? 雄治が言うような、狩猟採集社会と農耕社会の差だとか、その影響だとかを知る事が、ホントの勉強なんじゃない!? 名前や語句の暗記より余程重要じゃん。
「縄文文化っちゅ~のはスゲぇンやぞ。もはや文明や。そイがよく判るのは、世界各地で縄文土器が出土しちょる件やなあ」
「へぇ~~~~。そうなんだ」
「インドやら、アフリカでも見つかっちょる。南太平洋ポリネシアやら、なんと中南米からも出土しちょる。つまり縄文人は、太平洋を横断する航海技術を持っちょった……っちゅう証拠やな」
「マジ!?」
「マジやっど。魏志倭人伝にも『裸国、黒歯国有りて、復、その(注:女王国の)東南に在り。船行
「あっ。その記述、丁度さっき読んだばっかだよ」
あたしは思わず声を上げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます