あれは宇宙人やぞ~

「なるほどなあ。土器の製作ち、そげん難しかったんか……。あ、土偶も謎やぞ」

 と、雄治。

 まだ飲み始めて三〇分も経っていないが、一体何杯飲んでいるのか。顔が随分と赤い。


「学者は遮光器土偶を『縄文のビーナス』ち言うちょるけど、あげな気色わりいモンのどこがビーナスや!? いい加減なこつ、言うな!! あれは宇宙人やっど~」

「あはははは」

「遮光器土偶ち、高さが三〇cm以上あるらしい」

 え!? そんなにデカかったんだ。――


「そイで、肉厚が九mmしかねえ……っちゅう話や」

「ほう……」

「どげんして捏ねて作っせ、焼いたんか、謎やろ?」


「あ、そうか……。そんなに大きいなら重量もそこそこある筈だよね。で、肉厚が九mm? それって、作ってる間にグチャっと壊れそうだね」

「じゃっどじゃっど。しかも今の敬太郎ン話やと、手早く捏ねっせ焼かんと、表面がひび割れすっとやろ? あン遮光器土偶の模様は、とても短時間じゃぁ作れんぞ」


 あたしは改めて、あの有名な片足の欠けた遮光器土偶を思い浮かべる。うん、確かに表面の模様は繊細で凝っている。さっさと手早く形を整え、模様を刻むのに、どんな手品を使ったんだろう。……


「しかもあれは、今で言うセラミック的な技術が使われちょったち書いてあるかいちゃる。土器より高温で焼かれたらしいけど、縄文人がどげんして高温を作り出したかも、判らん。色々謎だらけやっど」


 なるほどねえ……。古代史ってミステリアスじゃん。意外と面白い。


「学校の歴史ン授業では、弥生時代になっせ本格的な農耕経済社会に移行して、生活が向上した……農耕により定住生活が始まっせ文化が向上したち教わるやろ? あれもウソやぞ」

「え!? どうして?」


「縄文人は既に定住生活やった。何故なら縄文時代からずっと、弥生~古墳時代まで同じ場所に定住しちょった痕跡が、日本中にあっとよ。複合遺跡ち言うらしいけど」

「そうなんだ……」


「縄文時代は温暖で、小動物でん魚でん豊富におっせ、食のユートピアやった。だからじゃっで狩猟採集経済やけど定住出来た。定住出来たかイ高度な文化が花開いた……っち解釈すべきやっとよ」

「……」


「縄文人は衣服やらアクセサリーやら、結構オシャレやった。土器なんかも芸術的で凝っちょった。逆に弥生時代はどげんや!? ことごとくシンプルやろ?」

「あ、言われてみれば……」


「弥生時代っちゅ~のは世界的に気候が寒冷化しっせ、多分日本列島でも食糧が減った。だからじゃっで仕方なく、手間暇のかかる農耕経済社会に移行した。農耕に時間を取られっせ、文化面では後退した……っちゅうわけや」

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