そイがまさに、日本型ピラミッドやろね

 敬太郎君と智ちゃんは、うまくペースを加減しながら飲んでいる。というか、敬太郎君は食べる方がメインみたいだけど。

 よく食べるのにひょろがりだから、不思議だよね。ってか、ズルいよ(笑)


 あたしは隣の雄治のペースにも影響されて、ちょっと飲み過ぎかも。「お酒のせいで顔が赤いのよ」作戦はもういいから、少しペースを抑えないといけないんだけどさ。でもビール(多分発泡酒)が美味しいんだよなあ。……

 ただ、ビールってトイレが近くなるのが困るよね。あたしは三人に、

「ちょっと話を一旦ストップしてよ」

 と頼み、トイレに立った。


 酔いが回って上半身がふわふわした状態で席に戻り、どかっと座った瞬間、つい勢いがつき過ぎて隣の雄治にもたれかかってしまった。あちゃぁ。

「ご、ごめん」

 慌ててきちんと真っ直ぐ座り直し、照れ隠しにジョッキをぐいと呷る。


「紗耶香ちゃんの酔いっぷりって、なんかちょっとセクシーだね」

 智ちゃんにからかわれた。いやん、やめてよ恥ずかしい。敬太郎君までニヤニヤしながらあたしを見てるじゃん。今のはわざとじゃないんだってば。


「世界中に、すっげー古代遺跡が沢山あるやろ!? エジプトやら南米のピラミッドやら……」

 と、雄治が焼酎のグラスを煽りつつ語り出す。

 雄治は顔こそ赤いが、まだアタマも口調もしっかりしている。余程酒に強いらしい。薩摩隼人のDNA、って感じがする。それもまた、ちょっとカッコいいかも。


「他にも、千トンオーバーの巨石を使っつこた遺跡やら、機械で加工したかンごつ精巧な巨石建造物やら、世界中に色々ある。じゃあ、それらと比較しっせ、縄文日本のレベルは劣っちょったっちゃろか!?」

「う~ん。どうだろう……」

「実は日本にも、巨石文明の痕跡が色々あっとよ」

「へぇ~~~~!!」

 初耳だよ。――


 日本にもピラミッドがある、と雄治は言う。敬太郎君もうんうんと頷いている。マジ!?

「ただし日本のピラミッドっちゅうのは、エジプトやら南米のヤツとはちと違うちごちょるとよ。山頂まで巨石を沢山運び上げっせ、加工して並べて祭壇らしきもンを築いちょっとよね。『磐座いわくら』っち呼ばれちょる」

「そうそう」


都城みやこんじょにも、そイがあっとよ」

「へぇ~~」

 あたしと智ちゃん、それに敬太郎君まで驚きの声を上げた。


「マジ!? どこどこ?」

母智丘もちこやっちゃけど」

 あ、知ってる。都城の市街地からちょっと外れたところにある、桜の名所。


「母智丘っちゅうのは、小高い山の頂上に神社があるっちゃけど、その裏っ側にでっかい岩が、ぐるりと半円状に並べられちょっとよ。そイがまさに、日本型ピラミッドやろね」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る