うちはいわゆる……そういう家系なんだよね
翌日。――
とはいえ、昨晩は衝撃の体験をしたせいで、結局レポートどころではなくなった。苦し紛れに、
「日本政府は全ての国有資産を担保にして資金を作り、レバレッジ五〇倍でNYダウ先物に全力売りを仕掛けろ~」
なんてムチャクチャな事を書いちゃったし、マジで単位ヤバいかも。とほほほ。
いや、まあ今更嘆いても仕方ない。ケセランパサランだ。……じゃなくて、ケセラセラだ(汗)
ってか、今頃気付いたんだけど、金融戦争仕掛けるならNYダウより先に深セン(中国)だよね。
……って、どのみち大学生のレポートとしてはアウトだわ。
あたしは、講義終了のチャイムと共に教室を飛び出そうとする有村雄治を掴まえ、
「ちょっとだけ時間を頂戴」
と声をかける。そして黒木敬太郎と山元智美にも声をかけるように頼み、あたし自身は売店に走った。アイスコーヒーとコーラを二本ずつ購入し、教室に戻る。
「こんなタイミングに、ごめんね。蒸し暑いし、さっさと用件済ませるから。お腹も減ってるでしょ!?」
と、三人に飲み物を勧める。
ここ南国宮崎は、六月上旬とはいえ既に初夏の気温である。講義が終わりエアコンの止まった教室は、瞬く間に室温が上昇している。冷たい飲み物が、心地良い。
「ちょっとオカルトチックな話なんだけどさあ、うちはいわゆる……そういう家系なんだよね。つまりお母さんも、それからおばあちゃんも『見える』人で」
「へぇ~~。すげぇ」
「あたしもちょっと気配くらいは感じるんだけど、今まで見えたことはなくて……。でも昨晩、初めて見ちゃったんだ」
「マジかよ……」
「ロングヘアーに奇天烈メイクのおばさんだったんだけど、『日の御子』じゃ、って言ってた。つまりどうやら卑弥呼様だったっぽいの」
「おお。すげえな」
「あれか。降霊術みたいな感じやと?」
三人共、話に一気に食い付いてきた。あ、有村雄治だけは半笑いなんだけど。――
「よく分かんないけど、降霊術って霊媒の人に降りてくる感じじゃない!? 昨晩の場合、霊媒なんて居なくて、あたしの横に突然おばさんが出現したの。輪郭はちょっとボヤっとしてたけど、ハッキリくっきり見えた」
「すげえな。どうやったら卑弥呼が出現したと?」
「あ、いや。それは……」
マズいところを突かれて、あたしは一瞬慌てたが、まあそれは一子相伝の極秘の作法があって……と、ごにょごにょ誤魔化す。あははは(恥)
「まあとにかく、ハッキリ見える卑弥呼様と色々会話したんだよね。一〇分位で突然薄くなってきて消滅しちゃったんだけど」
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