第4話

10点うちが全て取る!


そんな事を考えていた。

別にチームワークを乱して個人プレイに走ろうとかそういうのじゃない。

チームワークを利用して、うちが点をとるのだ。


「キャプテンならまずパスをするんだろうな」

彼女は皆で遊んでいる時にシュートをほとんどしない。

まるでトランプを配るかのように均等に皆にパスをする。

そんなので面白いのかと聞くと、

「十人は必要だからね」

と、いつものようによく分からない返事が返ってくる。


「さっちゃん、こっち」

ハッと思考が現実に戻ると、アキちゃんがハイポストでパスを要求していた。


うちをマークしている人は外からシュートがないと踏んで、うちから離れて守っていたので丁度アキちゃんがスクリーンをするような形になる。


そこを見逃さず、うちは切り込んだ。


「え?は、はやっ」

相手が驚いている。


「え?おそっ」

うちが驚いている。


そのままレイアップでシュート。片手では届きそうになかったので両手で放り投げた。ゴッゴッゴッスパッ。


これじゃあスクリーン必要なかったね、と思い、ふと彼女の方を見ると、満面の笑みであった。ちょっと気持ち悪い。嬉しくてたまらないという顔だ。

「ここまで差がついていたか」

彼女はぼそりとそんな事を口にしていたらしい。


試合は一方的だった。10対0。うちは8得点。

相手は少し泣きそうな顔をしていたが、仕方ない。

勝負の世界は厳しいのだ。


「よーし、じゃあ練習するよー」

彼女がニコニコ顔で指示を出す。


うちらは三年間、飽きもせず、ここに通い続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

といろ むとら @mutora5270

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る