待ってろハーレム!年齢制限異世界へ!

ちびまるフォイ

誰とでも話が合う素敵な異世界

俺はどこにでもいるごく普通のネトゲ廃人ゲーマー。

毎日画面の向こうにいる彼女がいつ異世界に呼んでくれるのかと考えていた。


しかし、一向に迎えが来ないものだから、

ショッキングかつ劇的な冒頭を作るために道路を走るトラックに飛び出した。


キキー!!


ブレーキ音かと思いきや、運転していた猿の鳴き声だった。

ノーブレーキで車に衝突された俺は確実に死を直感した。


「うそだろ……こんな突然……」


道路に広がる自分の血だまりを眺めながら、ゆっくりとその生涯を終えた。



~~~~~~~~↑ここまでテンプレ




~~~~~~~~↓ここからもテンプレ


目を覚ますと親の顔より見た白い空間だった。


「いやぁ、ごめんね。ちょっと手違いがあったみたいで」


「いえいえ、そんなそんな。

 たとえ女神さまでも死亡者ミスくらいありますよね。

 それに、そのお詫びとして転生させてくれるんだから

 こちらとしてもなんら不満はないですよ。ええ」


「君、いやに理解が早いね……」


「それじゃ異世界転生おなしゃーす」

「軽っ」


女神さまはソシャゲをいったんやめて、転生準備をはじめた。

わくわくしながら服を脱いでいると女神さまがふときいた。


「君、いくつ?」


「年齢がなにかあるんですか?」


「いや、異世界にも年齢制限あるし」

「はい!?」



ブブ―。


" 制限年齢を満たしておりません "



「ダメみたいね」


「えええ!? そんな!? ここまで服を脱いで髪をセットしたのに

 異世界転生できないんですか!? 年齢制限で!?」


ここではいそうですか、と引き下がるわけにはいかない。

すでにこっちは命を代価にしてここまで来ているんだ。


真理の扉すら開けてもいないのに、通行料だけ取られるなんて理不尽すぎる。


「ふぉぉぉぉ!! イテウドパワァァーーッ!!」


そのとき、不思議なことが起こった!


みるみる俺の体が高校生探偵顔負けのくらいにまでサイズダウン。

見事に年齢制限を突破できる年齢にまで急退化した!


「これで年齢制限はクリアですね!」


「まだ私チート渡してないよね?」

「男は30歳超えると魔法が使えるのです」


かくして、異世界につながるゲートへと足を踏み入れた時。



ブブー。


" 身長が基準値を満たしておりません "



「またかよ!! 新弟子検査か!!」


「これから異世界でどうせハーレムとか形成するだろうから

 あっちの女性側でも求める男性像というのがあるからね」


「くそ。魔法は1日1回までしか使えないのに……!!」


しょうがないので腹の肉をかかとに詰めて、底上げをはかった。


「これで身長制限はクリアですね!」


「あんたの異世界への執着にだんだん狂気を感じ始めたよ……」


飛行機の金属探知機ゲートによく似た異世界ゲートへと再び向かう。

さすがにこれ以上の足止めはないだろう。



ブブ―。


" この異世界はお住いの地域ではご転生いただけません "



「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」


怒りのあまり持っていたキーボードを粉々に破壊した。

あたりに吹っ飛んだキーが散乱する。


「なんだよ! この意味の分からない転生制限!!」


「落ち着いて! どうどうどう!!」


「いつになったら転生させてくれるんだよぉオラァァァ!!」


転生準備室で暴れまわった後で、女神の部屋からアルバムを見つけた。


「これは……?」


「あ!! ちょ、それはダメ!! 返して!!」


「ここまで転生のぬかよろこびを味わせておいて、これくらいいいだろ!!」


アルバムを開くと、こっぱずかしい女神の写真やらが

赤裸々に載っているのか思いきや、事務的なリストが載っていた。


「思ってたのとちがう……」


「だったら返してよ」


「いいだろう。ただしこの謎リストがなんなのかを教えてくれたら返してやろう」


「なにそのエロ同人みたいな言い回し」


女神はあきれていたがラチが明かないので教えるようにした。


「それは転生先の異世界リストよ」


「なんだって!? 異世界ってこんなにあるのか?!

 都心のコンビニくらいあるじゃないか!」


「はい、わかったでしょ。リスト返して」


「待った。どうしてこんなに異世界候補があるのに

 俺に紹介する異世界はあのクソ制限だらけの場所ばかりなんだ?」


「それは……あんたのためを思ってというか……」


「わかったぞ!! 本当は異世界に転生させたくないんだな!!

 だから、厳しい制限のある異世界をわざと紹介して

 俺が諦めて、女神を嫁に、神界でらぶらぶちゅっちゅ生活させるのが目的だろ!!」


「いやそれはホントに違う」


「そんな展開になってたまるか!!

 これだけ異世界があるんなら、俺にも行ける異世界があるはずだ!!」


「あ、ちょっと!!」


俺はリストから自分の年齢でも入れるゆるい条件の異世界を選んだ。

ゲートの向こうに別の世界が広がる。


「行くぞーー!! 待ってろハーレム!!」


ゲートに足を踏み入れると、一瞬で別の世界へと到着した。




「やだわぁ、奥さん。その年なのに肌ぴちぴちじゃない」

「そんなことないわよぉ。毎日の家庭菜園がいいのかしら」


「わしの若いころはブイブイ言わせるほど悪かったもんだ」

「最近じゃもう足腰がキツくなってきて、急な傾斜は無理だねぇ」



還暦でも入れる異世界は、

みな年齢制限をクリアした人だけの還暦ワールドが待っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

待ってろハーレム!年齢制限異世界へ! ちびまるフォイ @firestorage

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ