【人生とは常に波乱の中にいる】 第二部

 夏休みまで登校日が残り一日を残すとばかりになった学校へと俺は行く。

 もうすぐ夏休みに入る学生ならではの気持ちの高揚と昨日のユメとの約束のことが相まって教室へ向かう足取りがとても軽い。


「おはよう、晴人」


 晴人は携帯に向けていた視線を俺に向ける。


「おう、叶汰か。ちょうどいいところに来た」

「なんだよ、なんかあったのか?」

「んぅ、ちょっと待ってれば分かると思うが……」

「待つってなんのこと……」

「叶汰、おっはよーっ!」

「いって!!」


 突如、後ろから背中を叩かれ俺は自分の机に手を思いっきりついて転倒を防ぐ。


「大丈夫叶汰? 体調でも悪いの??」

「奈々実が叩くからだろっ!」

「なに、その言い方だと私がすごいバカ力みたいに聞こえるでしょ?」

「聞こえるってそう言ってる……。いえ、なんでもないです」


 すごい形相で睨まれて、俺は何も言えなくなる。


「今日もわざわざおしどり夫婦さを見せつけてきて、ボッチの僕は悲しいよ。おはよう、園上」

「ハル、その言い方怒るよ」

「ごめん、ごめん。でも、いっつも二人は仲良いから」

「これで仲良いとか、晴人の目は節穴か?」

「なぁに、叶汰??」

「いや、明日から夏休みだと思うと胸が高鳴るなぁ〜」


 俺の言葉に何かを思い出したかのように奈々実が話し始める。


「そうそう、今ちょうどハルと夏休みどこか行かないかーって話してたんだよ」

「そうなのか?」


 俺が晴人に視線を送るとコクリと頷く。


「それで、どこに行くんだ?」

「だから、それを今決めてるんでしょ〜」

「そうなのか。二人は行きたい場所ないのか?」


 俺は晴人と奈々実に問いかける。


「私はありすぎて困ってるんだよね」

「晴人は?」

「俺はどこでもいいけど、強いて言うなら一つあるかな」 

「なんだよ?」

「やっぱり夏だし、海がいいかなって」

「たしかになぁ、夏といえば海だよな」

「いや、ハル。海はちょっと……」

「どうかしたのか奈々実?」


 急にオドオドし始める奈々実。


「園上も海、好きでしょ?」

「まぁ、好きだけどさ……」

「奈々実って泳げなかったけ?」

「いや、泳げはするんだけど……」

「あぁ、日焼けとかか? 安心しろ。日焼けしたくらいで奈々実は奈々実だ」

「それはどうゆうこと叶汰?」

「いや、そのままの意味だぞ……。なぁ、晴人」

「そうだな。日焼けしたところで園上は可愛いって叶汰は言ってるんだな」


「『なっ!!?』」


「これってなんだっけな、えっとたしかツンデレっていうんだっけな?」

「晴人。お前どう訳したらそうなるんだよ」

「普通に訳したらだけど?」


 真顔でそう言われると、俺は自分の発言を疑うしかない。そんな恥ずかしいことを俺は言っていたのか……?


「それはそうと、どうする夏休み」

「俺は晴人の言う通り、海でいいぞ」

「園上は?」


 ずっと考えている仕草を見せていた奈々実だったが最後は頷いて了承の意図を見せる。


「じゃあ、高校最後の夏休みは三人で海に行くかっ」

「あ、ちょっと待ってくれ」

「なんだよ、叶汰?」

「ユメも一緒にいいか?」

「ユメちゃんって叶汰のアンドロイドだよね?」


 奈々実が俺の言葉に返答を返す。


「そうそう。ちょうど昨日ユメともそんな話をしてたんだ」

「いいよ。遊ぶなら人数は多い方がいいからね」

「そうか。晴人はどう?」

「え、あぁ、いいと思うよ」

「じゃあ、ユメにも伝えておくよ」

「了解。じゃあ、私は自分の教室に戻るね」


 教室にある時計を見ると、まもなく朝のHRが始まる時間だった。


「おう、じゃあな」


 俺たちに軽く手を振って奈々実は教室を出ていった。


「お前ってやつは……」

「んっ? なんか言ったか晴人?」

「いや。それよりお前も荷物とか机にしまっとけよ」

「あ、そうだったな」


 俺は来てすぐ、話していたためカバンの中のものを机の中に入れていなかったので、自分の席に座って、教科書などを机の中に入れる。そして、すぐに担任の先生が来て、朝のHRが始まった。

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