Oracle for the Villain

ヒーローが全てを救ってくれるハッピーエンドがおとぎ話だと気付いたのはいつだっただろう。

ならヒーローになればいい、と走り回っていたのはいつ頃だっただろうか。

俺はヒーローになれない、悪役になりたいんだ、とグレていたのはいつだったか。


いつからだったろうか、俺が悪人になったのは。

俺は今、死刑前日の囚人だ。

本来なら知らされることのない日程を俺は知っている。


いつからか、俺は未来がえるようになっていた。


そこからはよくある話だ。

自分が捕まる未来をた。

神託は絶対だと知っていた。

しかし、抗おうとした。

結果は泥酔した後、目が醒めると周囲に5、6人が流血し、事切れていた。

そして、俺の手には拳銃があった。

かくして予言は成立した。

犯罪のないクリーンな世の中に殺人者は要らない。

即刻、最も重い罰は確定し、囚人になった。

その頃から他人の未来もえるようになった。

えたのは不可視な形で命を何億個と屠り、陸地から国を消し飛ばした極悪人だった。


俺は慣れない手で本を書くことにした。


「黙して語らぬ叫び」


人々は好奇心と共に本を買い、俺の手元には少量の金が来た。

彼らには現実ではなく、フィクションとして感じられたのだろう。

最早落胆すら感じなかった。

翌日、彼の身長は伸びた。

斯くして予言は成就した。

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Deus ex Observe 雨定 @Kiril

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