第2話 許しや救いを乞うことを前提とした感情

 嘘をついていました。ええ、数えきれないほど。指で数えられるくらいのことだけが真実で、その真実から偽りが止まりません。

 知らなかった、嘘って真実から出るものなんですね。ああ、そうですよね? あなたはそんなの判りきっていますよね? 

 ごめんなさい、あなたと違ってわたしは馬鹿だから今頃になって、やっと気付きました。

 だけど、あなたは今までわたしを信じてくれましたね。しかもわたしがこれまで散々吐いて来た嘘は、あなたにとって耳を塞ぎたくなるようなものばかりだったのに。



 わたしのようなくだらない女に、どうしてあなたは目を付けたのです? 

 そのせいでわたしは自分の嘘を、悪行を白状しなくてはいけない。

 もうあなたをこれ以上、騙す訳にはいかない。あなたがわたしを大事にしてくれればくれるほど、わたしは抜き差しならない立場に立たされていくばかりなのです。

 わたしの嘘によって、あなたの人生の進路が目まぐるしく変化していくのが、もう耐えられなかった……。

 わたしにだって罪悪感というものがあるんです。その罪悪感がわたしに「本当のことを言え! 言いたまえ!」と、いつも脅し、「それが正しいことなのだ!」と迫るのです。



 だけど、もしかしたら本当のことなんて言わない方が、あなたにとっては良かったのかも。あなたはその方が実は成功者であったのかもしれない。

 しかし「嘘も方便」とはよく言ったものです。そう考えると、嘘が人を幸せにするのか不幸にするのかなんて、本当は判らないものだと思うのです。



 だけどごめんなさい、わたしが無理だったんです。つまりわたしはあなたの為を思ってのことではなくて、自分が罪を感じることから逃げ出したくて、自分の嘘を暴露したいというだけのことなのかもしれませんね。

 そうなると、罪の意識って許しや救いを乞うことを前提とした感情であり、結構、自分勝手なものなのかもしれません。



――本当はもっときちんと切り出す心算だったのに、わたしは思いっきり茶化した感じで、自白の口火をきってしまいました。そうでもしなければ恐ろしくて、切り出せなかったのです。



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