第2話

「はぁ……緊張する……。」

小さく呟いた声は誰かに届くこともなく、床に吸い込まれていった。

「では、入室してください。」

急に呼ばれて、びくっとしつつも、

「はいっ!」

と返時。

ぎこちない動きで入室した。

「それでは、自己紹介をお願いします。」

「はい……。と、東京から来ました。

葉山楓です。よろしくお願いします。」

パッと頭を下げた。

今日から私、葉山楓は転入生として日々を過ごすことになった。

転入先は、九州のとある田舎街の進学校。

田舎街の高校とはいえ、決して侮ることなどできない。

なんでも、県内でトップクラスの偏差値を誇り、毎年、学年の3分の1が、有名な東京六大学に進学するという。

そんな学校だからこそ、真面目な生徒が多いのか、そこら辺から拍手の音が聞こえるだけで、不躾な質問は飛んでこない。

そのことにホッとしつつも、気を引き締める。

「じゃあ、葉山さんは、一番後ろのあの席に座って。では、ホームルームを始めます。」

窓際の、一番後ろ。

本でもよくある、転校生特有の指定席。

チラリと隣の席を見れば、メガネのイケメン男子。

それも、東京でも滅多にいないほどの、すごいイケメン。

(こんな人、本当にいたんだ!)

脳内で歓声をあげつつも、表面上はしとやかを装って、

「よろしくお願いします。」

と軽く一礼した。

「うん。よろしく。」

小さな微笑み付きで返ってきた、たった一言。

(まるで、本とかマンガの主人公になったみたい……)

密かにそう思いつつ、ドキドキの高校生活1日目のスタートを迎えた。




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言葉足らず。 紅李凛 @da1205

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