3日目 「道草」
通りすがりにぶつかった仏頂面の男性が、見えなくなるまで平謝りを繰り返す僕。
そんな僕にどん引く彼女。すっかり愛想を尽かされてしまい、去り際に、
「そういう頼りないところが嫌い」
彼女が吐いた言葉が、今でも僕の胸をじんじんと痛みつけてくる。
傷ついた僕は「本当に情けない男」だ、と意気消沈する。
負のスパイラルである。
賑やかな周りに一人取り残される僕。太鼓が腹に響いて気持ち悪い。もう帰ってしまおう。
いてもたってもいられなく、そして今、静かな河川敷を闊歩している。川のせせらぎが耳に心地よいが、相変わらず僕の心には冷たい言葉が刺さっていた。
対岸の小さな石橋に腰掛けるカップルを見かけて、肩を落とす。数十分前まで自分もあんな風だったのに…… 鬱々とした空模様はまるで僕の心を投影しているようだった。
俯きながら歩みを進めていると、何かが茂みに紛れて鼈甲色の鈍い光を放っていた。
「髪飾り……?」
拾い上げようと手を伸ばすと、手と手が重なりあった。
顔をあげると、その髪飾りに相応しい少女がこちらを見つめて赤面していた。
雲の切れ目。
うち上がる花火。
轟く音に、僕の心臓が共鳴して揺れ動く。
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