さいわいなことり

卯月

旅立ち

「さようなら」青い小鳥が言いました。「ぼくはこれから旅に出るんだ」



いつの日か行こうと決めていたのです。自分の翼で、ただ飛ぶために。



「わがままはおよし」と母はさとします。「ここがいちばん幸せなのよ」



かないで」赤い小鳥は泣きました。「あなたがいなくなったら淋しい」



なぜだろう。それでもぼくは、果てしなく広い世界を見てみたいんだ。



この窓の向こうの空は青くって、どうしようもなく心がさわぐ。



とおくまで、力の限り飛んだなら、ぼくは必ず帰ってくるよ」



りん、とした空気を胸に吸いこんで、小鳥は空へ飛び立ちました。

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さいわいなことり 卯月 @auduki

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