第102話 計画
その頃の私は、会社の仕事に対するモチベーションは乏しいものでした。営業の仕事は会社の看板と須藤や他の方から引き継いだ取扱店やユーザーのおかげで一定の売り上げを維持することができていましたが、私にとって情熱の持てる職種とは感じられませんでした。
それよりもその頃は、英語講師としての副業の方が楽しくてやりがいがありました。なんとかこちらを本業にすることはできないものかと考え始めていました。
ですが、時間の限られている副業という形だからこそ楽しいのかもしれないと思ったり、それだけで食べてゆけると信じられるほど、自分の能力に自信が持てませんでした。
もしも、不動産収入でもあれば・・・と考えずにはいられませんでした。細々とでも食べてゆける安定した収入があれば、好きな英語の仕事だけをして、拘束時間の長い会社勤めなど辞めてしまえたら・・・
ですがローンを使いたくても、私は勤続年数が短すぎる・・・
須藤にそう言われました。それもよくわかっていましたが、私はネットで不動産サイトを覗いてみては、利回りの良い手ごろな物件はないものかと物色するようになりました。身近に不動産を所有している須藤がいたので、管理や税金等についてもあれこれ聞くことができました。
「私も誰かさんみたいに、いずれはアパートやビルを購入して、その収入と英語講師の仕事で生活できたらと思っているんです。」
須藤とふたりで会っているとき、私は時おりそんなことを口にするようになりました。
「ユリちゃん、すっかり英語の仕事に夢中だもんね・・・俺は営業も面白いけどね。会社勤めにしては融通が利く方だと思うけど。ただ、そうだね・・・ユリちゃんは人に教えたり、勉強するのが好きなんだね。そういう仕事の方が、ユリちゃんに合っているのかも。」
そう言いながら、須藤は私の身体を引き寄せました。
「でもユリちゃんが会社を辞めたりしたら俺が淋しいから・・・もうしばらくは会社で頑張って稼がなくちゃだね。勤め人じゃないとローンは通らないし。でも本当にその時になったら、俺もいろいろサポートできると思うよ。」
須藤はそのように言ってくれました。頼りにできる人がそばにいて幸運だと思いました。私は彼に抱きついてキスをしました。仕事においても、その他の場所でも、私はすっかりこの人に甘えるようになっていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます