第100話 副業
英語の個人レッスンを受け持つ仕事は順調でした。嬉しくてやりがいのある時間でした。仕事と呼ぶのがいけないと思えるほど、喜ばしい時間でした。
英語に関する自分の能力は未熟でしたが、初めての生徒さんになってくれた理恵さんは私を先生として扱ってくれました。熱心に、一生懸命学ぼうとする姿にいつも感動を覚えていました。
個人レッスンを始めて数か月も過ぎた頃、理恵さんの親戚の方も教えて欲しいとの紹介を頂くようになりました。その方はおもに日曜日、月2~3回のペースで教えるようになりました。
他の場所でも英語を教えて欲しいと声をかけてくれる方が増えました。本業もありましたから、たくさんの生徒さんを持つことは難しかったのですが、マンツーマンやグループでのレッスンなど、教室以外にも何人か、個人的に教えるようになりました。
時間のやりくりはたやすくありませんでしたが、平日の夜や土曜日、須藤と会う以外の時間をレッスンにあてました。毎週決まった曜日や時間というわけではなく隔週だったり、互いの都合によって調整ができて、融通がききました。
個人で教える方にはカフェ内でレッスンをしました。私がカフェ好きなのもありましたが、公共の施設等で部屋を借りるよりも手軽でした。雰囲気の良い場所で飲み物を頂きながら勉強し、レッスン後は生徒さんとお食事やおしゃべりのできる楽しみもありました。時にはカフェめぐりを兼ねて別のお店へ行くこともありました。
かなり好き放題なありさまでしたが、生徒さんたちもそのスタイルを気に入ってくれていました。
アルバイトの様子を須藤に報告すると、最近のユリちゃんはとても楽しそうだと言われました。以前は心ふさいでいたり、須藤と会えば執着したり、我儘を言って困らせたりもしましたから、この人に向けられすぎていたエネルギーが程よく分散されていたのかもしれません。
私は新しい仕事に夢中になっていました。会社の勤務時間にも、レッスンのアイディアを思いつけばメモをしたり、こっそり下準備をしたり、外回りの時間を利用しつつ教材を探したり、調べ物をしたり、本業の時間を英語関係のことへ割くこともしばしばでした。
真面目な社員とは言えませんでしたが、本業はあまり好きではありませんでした。自分が好きでやりがいのある副業を持てたことは、精神的に好ましい状況でもありました。
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