第69話 友人たち

 その週末、私は須藤に言われたように、部屋で彼を待つのではなく予定を入れることにしました。その頃は須藤と会ったとしても、すでに新鮮味を失くしていました。食事をしてセックスをするものの、惰性に近い空気感がありました。


 私はしばらく以前から英会話サークルへ参加するようになっていましたから、土曜日はその仲間達と食事する約束をしました。もともと英語を勉強するのが好きでしたから、正社員になって数か月も過ぎた頃から英会話学校をいくつか見学していました。


 当初は英会話学校で習う方向で検討しましたが、いろいろ考えた末に会話サークルやサロンへ出入りすることにしました。札幌にはいくつもの英語サークル、英会話教室等で主催する会話サロンがありました。


 ある程度の文法的なことは高校や大学で勉強しましたが、会話の能力が自分には足りていませんでした。会話力を身に着けたいと思っていたのと、教室で習う曜日を固定してしまうと残業等で授業に出られない日があると勿体ないので、月謝制ではないサークル等へ行く方が都合が良いのでした。


 それまでほとんど仕事関係の人としか接する機会がありませんでしたが、英語を通して出会える友人達は、いろいろな職業や趣味特技のある人が多く、いつも刺激を受けていました。須藤と会わない日が増えるにつれ、英語関連の仲間と過ごすことが多くなりました。仲間からの情報で、また別のサークルを訪れてみる機会もありました。


 これらの場所へ出入りすることは思いがけないメリットもありました。語学を勉強するような方達はバイタリティー豊富で教養のある方が多く、魅力的な友人が多くできました。さらには知人になった方から仕事の依頼や紹介を受けることもありました


 友人が増えたことで少しずつ変化が訪れていました。英会話の仲間たちと会っていると、須藤のことで心煩こころわずらわされていた自分がつまらなく思えました。須藤は彼と付き合う見返りを与えてくれましたが、彼との関係は他人に言えることではありませんでした。


 そんな人といつも閉鎖的な空間で時間を費やすよりも、共通の趣味を持つ仲間たちと勉強をしたり、やりたいことや目標について、時には人生観を語り合う方が楽しく有意義だと感じるようになりました。


 私は須藤との不健全な関係から、足を洗いたいという気持ちを抱きつつありました。

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