第57話 ビルの2階
須藤はお店の外へ出ると、おそば屋さんの入ったビルの端の方へ歩いてゆきました。そしてビルの外側についた階段を上り始めました。
「そのカフェって同じビルの中にあるんですか。気が付きませんでした。」
須藤の後について階段を上りながら、彼に声をかけました。
「このビルの2階だよ。」
須藤はそう答えましたが、カフェの看板はあっただろうかと思いました。このビルは4階建てで、他にも何かのオフィスや学習塾などが入っている様子でした。
2階のドアの前に着きましたが、やはり看板は見えませんでした。須藤は鞄の中から鍵を取り出すと、そのドアを開けました。私は怪訝に思いました。
「どうして須藤部長が鍵を持っているんですか?」
そう尋ねたのには答えず、須藤はドアを開けて中に入りました。マンションの部屋のような造りの玄関口でした。須藤は靴を脱いで中へ入ってゆきました。私も靴を脱いで須藤の後へ続きました。
短い廊下を抜けてドアを開けるとソファーやテーブルの置かれた部屋がありましたが、誰もいないようでした。どう見てもカフェには見えませんでした。須藤は暖房のスイッチを入れました。
「下に店があるからすごく冷えてはいないけど、暖まるのに少し時間がかかるからまだ上着を着ていた方がいいよ。」
そう声をかけられましたが、私は狐につままれたような気分で部屋の中を見回していました。
「須藤部長、ここってカフェではないんですか?どなたかのお家のようにも見えるんですけど・・・」
「いいや、カフェだよ。コーヒーでいい?いま準備するから。夜はバーにもなるし、『カフェバーすどう』っていうんだよ。」
不思議に思って立ち尽くす私に、須藤は薄く笑いながら答えました。どうやらからかわれているのだと思い至りました。
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