第50話 赤ちゃん

「お邪魔します。淳也さんはお仕事だっけ?これ、出産おめでとう・・・まあ、後で見てね。赤ちゃんはどこ?」


 私はお土産のお菓子とプレゼントを渡しながら尋ねました。あっちで寝てる、と答えた沙也の後を追い、リビングから続く部屋へ向かいました。


 隣の部屋へ足を踏み入れると、その子は小さな布団に横たわり眠り込んでいました。そのあまりの小ささに、思いもかけない衝撃を受けました。


「え・・・? ちょっと、すごい小さいんだけど。なにこれ・・・?」


 これほど小さな赤ちゃんを見たのは初めてでした。それまで小さな子供やもう少し大きな赤ちゃんにも、心が動いたことなどなかったのに、私はその子に釘付けになりました。すやすやと眠っているだけで、神々しいまでの尊さでした。


「なにこれって・・・うちの子ですけど・・・?ちょっと早めに生まれたから、生後1か月過ぎてるけど、新生児で大きめの子と大差ないかも。でも問題ないよ。」


 沙也は私が興奮しているのを見て笑いました。


 しばらく私はその子から目を離すことができませんでした。眠っている小さな手が、あまりにも小さな指が少し動くたびに心奪われました。じっくり見ていると、呼吸なのか、口の音かは謎でしたが、小動物の鳴き声のような不思議な音が聞こえました。心しめつけられる思いでした。


 少ししてその子が目を覚ますと、心が激しく高鳴りました。


「あ、起きたよ!目開いてるよ・・・!」


創太そうた、おいで。優理香おねえちゃんが来てくれたよ~」


 沙也は愛おしそうに創太そうたと呼ばれた赤ちゃんを抱っこしました。その子を見つめ、抱きしめる沙也の姿は幸福に満ちていて、光り輝いているように見えました。


 思いもよらないことでしたが、この時私はすごく感動していました。小さな赤ちゃんの持つ無垢さ、無条件の純粋さ、その母親の愛あふれる姿に、ひどく心打たれていました。涙がこぼれそうになるのを必死でこらえなくてはなりませんでした。

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