第49話 変化

 プレゼントの準備ができると、沙也と会う約束の日曜が待ち遠しく思われました。


 土曜日は相変わらず須藤と会う日でした。私の部屋の様子は以前と少し違っていましたから、今後沙也を招くのはためらわれました。例えば私はビールを飲みませんが、冷蔵庫にはビールや他のお酒が常備されるようになっていました。他にも須藤から買い与えられた品があれこれ見当たるので、話題にされたら面倒だと思われました。


 幸い子供が生まれてからは、沙也は自分の家に来てもらう方が良いと言っていました。私も人の家に行くのも好きでしたから、むしろ好都合でした。


 沙也の家は私の自宅からそう遠くない距離にありました。学生時代、地方出身の女子学生向けの寮に住んでいた私たちは、同じ大学に通い、寮でも同じ階に住んでいて仲良くなりました。


 女子寮での生活は良い思い出ばかりです。寮の友達からは多くのことを教わりました。私はいろいろと抜けているところがあったので、世話を焼いてくれる女の子達に囲まれて心地よい日々を過ごしていました。朝晩の食事も用意され、大浴場もありました。できればまた住みたいと思えるほど好ましい環境でした。


 沙也は私が元夫の貴之と付き合う前からの友人で、貴之と交際中はよく彼とのあれこれを聞いてもらっていました。貴之との結婚を祝ってくれましたし、離婚する頃もやはり寄り添ってくれました。沙也に自分の気持ちを話すうちに、私は貴之と別れる決意をしました。


 沙也にも学生の頃から彼氏がいて、でもその人とは別れ、また別の人と付き合い、何度かそんなことを繰り返しながら今のご主人と結婚しました。そしていま、沙也は母親になったわけです。


 沙也の家に来るのは久しぶりでした。築浅の小奇麗なアパートに彼女たちは住んでいました。少しだけ緊張しながらドアのインターホンを鳴らしました。


 インターホンから返事があり、沙也がドアを開けてくれました。やや久しぶりに会ったせいか、少しぎこちなく感じる気持ちを隠して挨拶をしました。


「優理香、やっと会えたね!あれ、髪切った?」


 しまった、と思いました。かねてより須藤から、いくぶんしつこく勧められたため、私は髪型を変えていました。日数が経っていてそれを自分でも忘れていました。物珍しそうに沙也は私を眺めました。


「可愛いじゃない。巻いてるの?それともパーマかな?明るい色もすごく似合ってる。でもどうしたの?優理香のそういうの、初めてだよね。」


 須藤や会社の話は極力避けようと思っていたので須藤に勧められたから、などと言えるわけがありませんでした。


「うん・・・まあ、たまには色気づいてみたの。一度やってみたかったというか。」


 内心ひやりとしましたが、少しふざけた調子で告げました。


「色気づいたって・・・そっか、優理香にもそんな時期が・・・って今ごろ?でもすごくいいね。まあとりあえず、上がって。」


 沙也はヘアスタイルを褒めてくれましたが、深い詮索はしないでいてくれました。大人の女性ならば、たまに髪型を変えたからと言って、それほど不自然なことではないはずでした。

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