第43話 食後

 須藤はおでんをよく食べてくれました。ほとんど好き嫌いがないのは作る側にとってありがたいものです。


 私は作りながら味見をしていたのでそれほどお腹が空いていませんでした。正直に言えば、おでんや鍋物などは、翌日の方が美味しくなると思っていましたから、多めに作っておいて次の日に食べる方が楽しみでした。須藤の買ってくれたケーキの存在もありましたから、食べ過ぎないように調節していました。


 須藤は上機嫌でビールや日本酒や焼酎のお湯割りなどを飲んでいました。私もサワーの後に、つられて焼酎のお湯割りをいただきました。体も温まって、ほろ酔い気分になりました。


 おでんを食べて一段落すると、お酒を飲みつつ須藤と話していました。話題が豊富でしたから、彼の話を聞くのは好きでした。いろいろ話し込んだ後、私はデザートのケーキが食べたくなりました。


「そろそろ、頂いたケーキを食べましょうか?須藤部長はコーヒーを飲みますか?紅茶もありますが。」


 話が途切れたところで須藤に尋ねてみました。須藤はお酒をよく飲んでいたためか、やや考えるような顔をした後、俺はまだいいよ、と答えました。私たちは向かい合わせに座っていましたが、ふと彼は立ち上がると、私の隣に移動してきました。


 隣に腰を下ろしたと思うと彼は膝の上に私を抱き寄せました。とても機嫌が良さそうで、満面の笑みを浮かべていました。


「ユリちゃんってすごくいい子だよね。お料理も上手だし、優しいし、よく話を聞いてくれるし・・・どうしてユリちゃんはこんなに可愛いのかな。」


 須藤は私の顔を引き寄せると頬にキスをしました。あぐらをかいた彼の膝に乗せられて、頬に何度も彼のキスを受けました。やがて顎を引き寄せられ、須藤は唇を重ねてきました。口の中で彼の舌が絡みつき、まさぐるような口づけをされました。


 しっかりと私を抱きしめながら、須藤は私の首や、肩や背中に手を這わせました。ケーキを食べようと思っていたのに、彼は別のことを考えているに違いありませんでした。

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