第41話 要望
「昨日ユリちゃんは彼氏がいないと言っていたよね。できれば、付き合っている人がいると答えて欲しかったけど。」
前日の歓迎会で、守屋さんに彼氏などいないと言ったのを須藤は聞いていたようでした。もしかすると、気分を害していたのかもしれません。
「すみません。もし、彼氏がいるなどと言ったら、女性の友人などは特に、どんな人だとか、写真を見せてとかいろいろ聞かれるかも知れないので・・・須藤部長のことを知られるわけにもいきませんし・・・」
何故だか言い訳をするはめになっていました。ですが須藤の言い分もわからないでもありませんでした。
「まあ、そうだろうけど・・・いずれにしても、ユリちゃんはこれからは外へ出て行くんだし、もっと華やかにすればいいのに。お化粧とか、髪型とか、髪の色も明るくしてみたらいいんじゃない?」
なんだかいろいろ注文があるようでした。須藤は私をけばけばしくさせたかったのでしょうか。彼好みに仕立てあげたい願望があるようで、いくぶん不愉快な気がしました。
「ユリちゃん、あまり嬉しそうじゃないね。女の人はバッグとか好きなものだと思ってたけど、好みじゃなかったかな・・・?一緒に買えたら良かったけど、駅のデパートじゃ誰かに会うかもしれないしね・・・」
残念そうな顔をした須藤にいけなかったと気付きました。せっかくたくさんのプレゼントを買ってきてくれたのに、喜びもしない自分を申し訳なく思いました。
「いいえ、そうではないんです。ただ、驚いてしまって・・・いつもいろいろ、ありがとうございます。」
かねてより須藤には素直に受け取って欲しいと言われ続けていたのに、相変わらず私はうまくできていませんでした。
「ユリちゃん、ケーキを見た時が一番嬉しそうだったね。やっぱり食べ物がいいのかな・・・?ユリちゃんの欲しい物ってなに?ちゃんと調べてからプレゼントした方が良さそうだね。」
須藤は笑いました。なぜこの人はこんなに余裕があるのかと不思議でした。
「いえ、もう十分ですから・・・お気持ちだけで嬉しいです。ありがとうございます。」
欲しいものがないわけではありませんでしたが、言えばすぐに買ってきてしまいそうなので伝えませんでした。そのように彼を利用していては、自分が次第に堕落してしまいそうで怖かったのです。
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