第38話 二次会3

「守屋さん、ユリさんにちょっかい出さない方がいいですよ。須藤部長と山村課長を敵に回しますよ。あと社長と統括部長と・・・」


 そう守屋さんに告げたのは真矢ちゃんでした。


「真矢ちゃん、そんなこともないでしょ・・・?それと、私と話す人は、真矢ちゃんのことも敵に回すんでしょう?真矢先輩には、いつも監視されていますから。」


 真矢ちゃんはいつも私のことをおじさん荒らしのように言いますが、それはそれでカモフラージュになるので好都合でした。


「監視とか言わないで下さい。ユリさんの活躍を楽しく見物させてもらっているだけです。ほんと、見てて飽きないですからね・・・」


 真矢ちゃんは薄く笑いながら言いました。


「河野は、彼氏とうまくいってるの?」


 守屋さんは真矢ちゃんに尋ねました。真矢ちゃんの名字は河野といいました。


「えっ、真矢ちゃんて、彼氏いたの・・・?」


 私は驚いて尋ねました。そんな話は聞いたこともありませんでした。


「ユリさん、なんでそんなに驚いてるんですか?私だって、彼氏ぐらいいますけど。まあ、まだ付き合って3~4か月ですけど・・・」


 真矢ちゃんは少し呆れた風に、かつ少し照れたようにも見えました。


「だって、聞いたことなかったし・・・前田さんも知っているの?」


 なんとなくもやもやしながら尋ねました。付き合って3~4か月だなんて、むしろ盲目的な時期ではないかと思いました。


「まあ、話したこともあったかも知れませんけど・・・別に、どっちだっていいじゃないですか。」


 どうでも良さそうな返事が返ってきて、なんだか面白くない気分でした。


「私は知らなかったけど。内緒にしてたってこと?」


 少し酔っていたせいか、どことなく責めるような口調になってしまいました。


「なんで怒るんですか?ユリさんの許可でもいるんですか?」


 真矢ちゃんは相変わらず厳しい言い方をしました。


「だって、私のことが好きなんだと思ってたから・・・いつも私のこと見てるし。さんざん気を持たせておいて、そうだったんだ・・・」


 会社であれこれ話をしていたのに、彼氏の話題は出なかったので、真矢ちゃんに彼がいるとは意外でした。なんだか急に真矢ちゃんが遠くなってしまったような気がしました。


「ユリさん、思い上がりもほどほどにして下さい。気を持たせたつもりもないし、勝手に勘違いしないで下さい。ユリさんのことは面白いからつい見ちゃうだけで。」


 相変わらず彼女はドライな物言いでした。


「じゃあ、山村課長は・・・?ああ、そっか。プライベートで彼氏はいるけど、会社では山村課長が意中の人ってこと・・・?」


「ユリさん、山村課長のネタもどれだけ好きなんですか・・・あ~もう、わかりました。じゃあいいです、それで!」


 真矢ちゃんはめんどくさそうにして、投げやりに言いました。


「とうとう認めた・・・やっぱり、私の思った通りだった。」


「気が済みました?ユリさん、ほんとにしつこいから!」


 怒られつつも、真矢ちゃんが呆れた顔を見るのが好きでした。彼女の言う通り、私はしつこい性格なのかもしれません。

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