第37話 二次会2
「桜井さんは飲みに行ったりはするの?お酒は飲めるんだよね?」
守屋さんに尋ねられました。
「仕事を始めてから、皆さんに居酒屋やスナックへ連れて行ってもらう機会も増えましたが・・・でも、私もスナックって苦手です・・・男の方はあのような雰囲気が好きなんでしょうね。」
やや年配の女性が接客するようなお店へ連れて行かれるのは微妙な時間でした。見知らぬ人と会話するのも気乗りしないものですが、歌いたくもないカラオケを勧められるのには辟易していました。
「俺もあまり好きじゃないけど。おじさんになると、なぜかはまるみたいだよ。」
守屋さんはまだ三十代前半だったせいか、スナックを好むお年頃ではないようでした。
「ある程度の年齢にならないとあの良さはわからないかもね。お姉さんのいるお店はなんだか頑張ってしまうけれど、年配のママだけのお店はいいと思うよ。スナックのママって、いろいろ超越してるから安心して話せるし。」
谷崎さんという40代の男性はスナックの魅力について語り出しました。おじさんのスナック愛好の謎が少しだけ解けた気がしました。
「桜井さんって休日は何をしているの?彼氏に会ったりするの?」
また守屋さんに尋ねられました。付き合っている人がいるなどとは、言ったこともありませんでした。
「彼氏なんていませんよ。私はほら、バツイチですから・・・せっかく一人で自由に過ごせるようになったのに、男性とお付き合いなんてしたら台無しじゃありませんか。」
一瞬、須藤は彼氏という存在に当たるのだろうかと頭をよぎりましたが、やはり違うだろうという気がしました。須藤は強引に私の生活に割り込んできただけの存在でした。
「でもね、ずっと独りというわけにもいかないんじゃない?桜井さん、まだ二十代だよね?ちょっと失敗したからって、これからも独身を貫くこともないよね。」
「まあ、そうでしょうが・・・今は、そういう気持ちになれませんけど。確かに、いつかは気が変わるかもしれませんね。」
やや突っ込んだことを言われて少し面倒になりましたが、調子を合わせておきました。
「桜井さんは、もっと遊んでみた方がいい気がするよ。まずは今度、一緒に飲みに行かない?面白い人達のいる別のバーを知ってるけど。」
そのように言われ、彼に誘われているのだと気付きました。そこそこお酒も入っていますし仕方ないのでしょう。守屋さんも既婚者でしたから、ますます結婚というものの現実を垣間見た気がしました。
「守屋君、奥さん、そろそろ出産が近いんじゃなかった?他の女性を誘っている場合ではないと思うよ。」
話に入ってきたのは須藤でした。咎めるような口調でした。奥さんの妊娠中に別の女性を誘うのかと、守屋さんには呆れましたが、須藤もむしろ同類の男だろうと思いました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます