第34話 歓迎会2
歓迎会では、部署の方達と少しずつお話をしました。ふと、自分ばかりお酌されているのもどうかと思い、私自身もビールを持って巡回した方が良いのかと気付きました。ここでは私が一番下っ端なわけですし、そうするべきかと思い至りました。
ビールをついで回りながら、真矢ちゃんの所へ行きました。こういった飲み会では、少し動きまわった方が、いろんな方とコミュニケーションが取れるのでした。
「真矢先輩。飲んでいますか。」
彼女は私よりいくつか年下でしたが、会社にいる年数としては先輩でしたから少しへり下っておきました。
「もう、ユリさん。モテモテでしたね。おじさん達群がっちゃってたじゃないですか。」
冷やかすように真矢ちゃんは言いました。
「それはしょうがないでしょ。今日は歓迎会ということだし・・・」
「否定しないんだ・・・まあ、ユリさんですからね・・・でもそんなにおじさん達のご機嫌取りしなくてもいいんですよ。キャバ嬢じゃあるまいし。」
このような場にも慣れているらしく、真矢ちゃんはアドバイスをしてくれました。
「そうは言っても、私は真矢ちゃんみたいに偉くないから・・・新入りだから、お酌ぐらいするところなのかな?と思って。真矢先輩、どうぞ。」
私は真矢ちゃんにビールを注ごうとしました。
「ユリさん、自分はウーロン茶にしてもらっておいて、ずるいです。やっぱり須藤部長はエロいな~・・・“彼女は飲めないから、ウーロン茶で”って・・・ポイント稼いでましたね。」
日頃から彼女が私や須藤のことを、よく観察していることに内心舌を巻きました。
「でも、真矢ちゃんは飲めるでしょ。お酒強いんだから、遠慮しないで・・・あっ、もっと強いのが良いってこと?ウィスキーとか、焼酎とかじゃないと、物足りないんですね?気が付かなくてすみません・・・」
前の部署にいた頃から、時おり須藤や真矢ちゃん、前田さん達と居酒屋で飲む機会がありました。真矢ちゃんがかなりお酒に強いことは知っていました。
「もう、ユリさん!自分だってほんとは飲めるくせに。そろそろ黒霧島行きますか。すみません!黒霧、ロックでふたつお願いします!」
真矢ちゃんは彼女の好きな焼酎を注文してしまいました。私も本当は、おじさん達よりも彼女のそばで飲む方が気安くて楽しいのでした。
「また山村課長といちゃいちゃしてましたね・・・おやじギャグのとりこなんですか?」
「真矢ちゃんって実際よく見てるよね・・・?やっぱり私のこと好きなの?それとも、山村課長が本命?」
正直なところ、彼女の観察眼と鋭さには気を付けなくてはと感じていました。
「もう、そのネタやめて下さい。山村課長がその気になったらどうしてくれるんですか?」
彼女は呆れ顔でぼやきましたが、私はかまわず続けました。
「だったら私、真矢ちゃんが相手でも戦うつもりだから・・・」
「うそばっかり!ほんとユリさんって根性悪いですね。おじさんを弄んじゃダメですって・・・暴走しちゃったらどうするんですか・・・」
果たして誰かが暴走するようなことが起こり得るのかと考えてみました。該当者である須藤は、あるいは私自身が・・・?
思い巡らせてみたものの、私は至って冷静そのもののつもりでいました。
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