第27話 言葉のない世界
やさしくじわじわと昇らされ、再び絶頂に達してしまうともう悠長ではいられませんでした。私は彼を仰向けに寝かせるとその上にまたがりました。少しも待てず、彼のものを自分の中へ迎え入れました。
とうとうおさまるべき場所へ整った感覚を味わいながら、私達の身体は混ざり合いました。私は自分が心地良くなるように動きました。私を支える須藤の目は熱っぽく、ため息を漏らしながら私の胸を撫でました。あの特別な快さに支配され、私は喘ぎながら彼を締めつけました。
はじめは彼に食べられてしまいそうだと思ったのに、結局食べているのは自分なのではという気がしました。女性の形状からしてもそのように感じられました。
男性とは奇妙なものだと感じていました。女性よりも心地よい部分や度合いが乏しいと聞きますが、それならばなぜ、男性の方が積極的に行為に及びたがるのか。
手間ひまをかけて女性を感じさせ快感へいざないますが、その見返りというのは果たしてどの程度のものなのでしょうか。女性に尽くしたあげくに食べられているのが実情なのではと秘かに思いを巡らせました。
それは女性には都合の良いことかもしれないと思いました。須藤は私の内側には淫らな獣がいて、私は長くその存在を押し込め隠していたと表現したことがあります。
彼はその獣を飼い慣らそうとするのですが、結局自分は食い殺されてしまいかねないと思ったそうです。それはなんだか小気味良いような、暗く愉快な話に思われました。
「ユリちゃん、ちょっと待って。」
須藤が上ずった声で言い、私の身体を離しました。
「いま、危ないところだった、つけないとだめだよ。」
彼はベッドのサイドテーブルに置かれた避妊具を手に取りました。私は動揺しました。元夫の貴之とは使っていなかったので、存在を忘れがちでした。
素早く装着し須藤は私を寝かせました。今度は彼が上になり、再び私の中に入りました。少しだけ感触の異なるのは残念な気もしましたが、仕方のないことでした。
私を揺らす彼の動きははじめは緩やかに、しだいに速くなりました。再び感覚だけの、言葉の失われた世界になりました。何も考えられなくなる感じが好きでした。やがて激しく突き上げられ、ベッドのきしむ音と私の叫び声が響きました。ふとすべてが終わり、自分を使い果たした須藤は私に覆いかぶさって崩れました。
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