第21話 システム課

「お疲れ様です。佐倉課長、いま大丈夫でしょうか?須藤部長から、営業支援システムのことをよく教えてもらうようにと言われて来ましたが・・・」


 システム課はやや離れたフロアにありました。佐倉課長はパソコンに向かって何か作業をしているようでした。


「あ、桜井さん、お疲れ様です。須藤部長に聞いていたよ。ちょっと待っててね。」


 佐倉課長は近くの空いているデスクを指して座るように促しました。


「正直まだ、全然使いものにならなくてね・・・まあ、最初はこんなもんだと思うけど。桜井さんには、入力時のエラーの洗い出しをしてもらいながら作業してもらおうと思って。」


 佐倉課長はデスクにあったパソコンを開き、営業支援システムを立ち上げました。その画面を見るだけでモヤモヤしたものですが、この場所で作業する分には佐倉課長もいたので少しは心強い気がしました。


「桜井さん、異動した矢先に大変だと思うけど・・・でも営業はおじさんばかりだから、こういうの教えるの大変なんだよね・・・若い人に覚えてもらった方がこっちも助かるから、よろしく頼むね。」


 佐倉課長は営業部の社員たちをおじさん呼ばわりしましたが、ご本人も三十代後半の年齢だったと思います。この会社は女性社員以外は年齢層が高かったので、三十代の人々は若手であるという認識でした。


 さっそく佐倉課長のもとで入力作業を始めましたが、やはりエラーの連続でした。気まずい空気が流れました。


「本当にひどいな・・・効率化のために金をかけて導入したのに・・・全然ダメだね・・・明日また開発業者さんに来てもらうことになっているから、エラー状況をまとめていこう。桜井さんも、使い勝手のこととか、気付いたことがあれば、言ってくれて良いからね。」


 それまでシステム課の佐倉課長とは接点がありませんでしたが、てきぱきした人だという印象がありました。営業支援システムの使い方を教わると言うよりも、試用段階でのエラーチェックのような役回りだと思いました。本当にこのシステムが使えるようになるのか不安を覚えましたが、この時点で必要な業務には違いありませんでした。


「まだしばらく調整が必要そうだね・・・先が思いやられるけど・・・頑張ろう。」


 この日から、私は法人営業部とシステム課を行き来しながらの業務が始まりました。元いた部署とはまた勝手が違いましたが、新しい仕事や人と関わることは、新鮮でやりがいのあることでした。

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