第9話 暴かれる

「話はあとで聞く。ユリちゃん、こうなること、わかりそうなものだよね・・・?」


 私は須藤を見返しました。須藤は片手で私を抱き寄せたまま、もう片方の手でお尻を撫でました。少しのためらいもなく彼の手は私の身体を自由に行き来しました。その手が私の胸の上を撫でると息が乱れました。


 せっかくお湯を沸かしたのに、と思いました。そう思う間にも、須藤の手はスカートの中へ滑り込んでゆきました。脚や背中をまさぐられ、声が漏れそうになるのをこらえました。


 一度身体を開いてしまうと、もう須藤は躊躇ちゅうちょなしでした。ひとたび触れられてしまえば、男性は以降フリーパスのごとくに見なしてしまうものなのでしょうか。私は須藤を押し戻そうとしましたが彼は攻撃の手を緩めませんでした。


「もう我慢はしない。これまで、俺にしてはひどく耐えていたからね。初めての時のユリちゃんにはすごくショックだった。記憶を失くしたとか、婦人科へ行ったとか、俺を見て真っ青になっていたユリちゃんを見たときは・・・」


 あの出来事に触れるのはタブーであることは暗黙の了解だったはずでした。

私の耳や首に口づけしながら、ぽつり、ぽつりと須藤は語りました。押し寄せる感覚に耐えられず私は声を漏らしました。


「俺のしたことが、あれほどユリちゃんを苦しめて傷つけたなんて残酷な事実だった。」


 須藤は次第に荒々しく、繰り返し口づけを浴びせました。いつの間にか、私のシャツのボタンはひとつずつ外されていました。


「男女のことを、そこまで重く捉えている人だと知って衝撃を受けたよ・・・」


 先ほど着たばかりのシャツは脱がされ、上半身の下着は取り払われていました。露わにされた胸に須藤が唇を這わせると、声にならない叫びが漏れ出てゆきました。


「償うつもりだった。よこしまな気持ちは奥にしまい込んで、誠意を尽くそうと決めた。それでも俺はまたユリちゃんが欲しくなるとわかってた。もうユリちゃんの身体を知ってしまっていたから。」


 須藤の舌や唇で執拗に胸の先端をまさぐられ、すでに私の理性はありませんでした。繰り返し押し寄せる狂おしい感覚に身をまかせ、喘いでいました。


「どんなに警戒されても、俺はまたユリちゃんを巧みにおびき寄せて、また同じことをしてしまいそうだとわかっていた。ずっと、自分を抑えようとしていたけど、いけないと思っていても、止められなかった。」


 すでに私の身体はとろけて崩れ落ちそうでした。早くもっと触れて欲しくて、奥の部分がうずいていました。私は喘ぎながら彼の背をきつく抱きしめました。いちど触れられてしまうと、この身体はたちまち乱れ、求めてしまう厄介な代物でした。


「認めたくないかもしれないが、ユリちゃんは本当はこういう事にすごく興味が強くて、感じやすい。いくら隠そうとしても・・・」


 スカートを捲り上げ、彼の指は下着の上を這いまわりました。


「君は男を惹きつける獰猛どうもうな匂いを放っていて、俺はその匂いに引きずられて、ここまで来てしまったのかも知れない。」


 なんとひどい事を言う人だと思いました。まるで呪いのような言葉でした。ですが須藤の言葉を証明するかのように、私の奥深いあの部分は欲しくてたまらず泣いていました。朝、目覚めたその時から、すでに欲しがっていたのです。


 いつしか要求がましい声を漏らしても、須藤はそこに触れてはくれませんでした。疼きに身をよじり須藤を見返すと、彼は愉しむように私を見つめ、口元がほころんでいました。焦らされているのだとわかってますます狂おしくなりました。


 私は早く昇りつめたくて焦れていました。両手で須藤の肩をつかんで、求める言葉を漏らしました。欲しくてたまらなくて、おかしくなりそうでした。


 須藤は満足げな表情を浮かべ、ようやく彼の指はスカートの中の大事な部分へたどり着きました。どうしようもなく溢れ出る淫らな体液が私を濡らしているのを、下着の上からもわかってしまったようでした。


 とうとう彼の指がいちばん望んでいるところへ触れると、私はもう耐えられませんでした。焦らされた分、ひどく感じやすくなっていて、少しの間、触れられ指を動かされただけで私は達してしまいました。

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