第7話『エジプト』

「おおロシア。壮健であったか。うむ、何よりである」

「久しぶりね、エジプト。元気だった?」

「元気も何も、君とこう話しているのだから、体を悪くしていないのは明解であろう」

一応今回はエジプトの回なのだけれど、ロシアが喋るわね。

彼女はエジプト。ピラミッドとか、スフィンクスがあるエジプトよ。今も一応、私の知り合いってことになってる。

「また部屋が汚くなってる……。掃除とかしないの?」

「学術書やら資料やら、色々散らばっているが、問題無かろう。日本が言うではないか。『住めば都』とな」

「ただ部屋が汚いのを正当化したいだけでしょう。掃除するわよ」

放っておくと(今もだけど)屁理屈並べて逃げ出すから、無理にでもやらせた方が良いわね。

「皆言うのだよ。我輩の部屋が汚いと。ふん、勝手に言っていろ。考古学の何たるかも分からぬ無知蒙昧な輩には、研究に最適化されたこの部屋の配置の良さなど分かるまい」

何か自分が悪いはずなのに、他人のせいにし始めたわ……。いや、根は良い子なんだけど……。

「エ、エジプト! 最近どこかいったりした? ほら、家にいてばっかりだと、体に悪いし」

「ふむ。昨日久方ぶりに散歩に行ったのだ。サウジを連れてな。それで、公園で砂遊びなどする子らがいたから、『何を作っているか』と聞いたのだ」

「うん、それで?」

「その子らが言うにはピラミッドを作っているようだったが、あれはピラミッドではない。ただの土塊よ」

あ、エジプトのスイッチが入っちゃったのかしら……?

「この我輩が直々にピラミッドの作り方を教授してやると言ってな、ちょうどサウジもいたので、助力を仰いだ」

金持ちのお嬢様サウジアラビアがいる時点で薄々気付いてたけど、知らないフリしておきましょう。それが良いわ。

「サウジも土遊びするのね。あの子、財閥のお嬢様だから、意外だわ」

「遊んだ訳ではないが、何、近辺の建設会社と砂をあるだけ借り上げただけだ」

何か昨日の昼過ぎからバカみたいに外がうるさいって思ったら、そんなことになってたの!? ……さすが、考古学オタクと財閥のお嬢様はスケールが違うわ。

「作業員には追加の給金をくれてやった。民を気にかけることは、良きファラオの基本だろう?」

「まあ、そうね。……エジプト、いつから王様になったのかしら。考古学者じゃなかったっけ?」

「学者であり王である。ロシア、君も皇帝だったじゃないか」

「あー……引っ越す前ね」

帝政期の私を知ってるなんて、エジプトは博識ね。……あの時の私は、ただ待遇改善を求めただけの労働者を無慈悲に殺すような外道だったわね。あっちソビエト荘に引っ越してから、もっとエグいことした記憶もあるけど。

「さて、良く片付いた。資料などもっと見やすくなったな。礼を言うぞ、ロシア。私の助手にしてやっても構わんが」

大国相手にそんな態度取るの、あなたくらいよ? ま、暇潰しに来てやっても良いけど」

エジプトは私とつるんでた時期あったし、こういう態度されてもそんなに不快じゃないけど。

「では聞こうロシア。君は考古学についてどれほど知識を持っている?」

「は……何か、人間の残した遺跡とか色々調査するんでしょ? 詳しくは知らないけど」

「掻い摘んで言えばそうだ。が、まだまだだ。私が直々に考古学の何たるかを教授しよう。そこに座せ。今から準備する」

待ってねえ今からって言った? ええもう……考古学者モードのエジプトは話長いからなあ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

世界対談 ~擬人化計画~ 神楽旭 @kagura-Asahi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ