第6話
「でもさ、美紅が手近にあったタオルで首をキュッて閉めてもうてさ、なんか健に似とる健に似とる、ってえらく取り乱してもうて」
私は通話を切った。
どうやら、お姉ちゃんは今の今まで忘れていたらしい。残念なような、それでしゃあないような、どうでもええような。
「おじさん、ひどいね」
そう言い残すとしいちゃんは音をたてて崩壊した。灰塵の舞う公園に取り残された私は名状しがたい寂寥の想いを胸に抱いて砂場を掘り起こした。
砂の中には、私の理想の恋人が埋まっていた。細く華奢な四肢と滑らかな髪質。それなのに豊満なおっぱいと肉厚の乳首、豊潤な蜜を垂れ流す股ぐら。さっそく私は射精した。すると、さらに胸が大きく膨らみ、なるほどどこか大人の色気を身に纏ったようだ。さらに私は射精した。私は射精した。私は射精した。
この理想は誰に似てる、私に優しかった誰かに似てる。顔の固有性なぞとるにたらず、おっぱいとおしりと幾つかの穴さえあれば男である可能性だって十分にある。ひょっとすれば姪かもしれぬが、先輩に宣言した以上、その可能性は薄いが、この私の文言を私自身が信じていないのだから全部無用だ。
気がつくと骸骨を抱いて眠っていた。あるいは私が骸骨になっているのか。いずれにせよ再び目覚めることはなかった。最後の瞬間、男の声が聞こえた。
どうやら猫の糞が、私にはお似合いらしい。
変形する姪 古新野 ま~ち @obakabanashi
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