第5話

 「しゃしんはやめて、って言ったのに聞いてくれんかってん」

  泣き出しそうな声であったから、可愛い姪っ子の涙を見たくない一心で、あとちょっとでお姉ちゃんになるんやろこんなことで泣いとったらあかんで、みたいな言葉を投げ掛ける。

  「おじさんは弟ほしい?」

  「おじさんが弟やからな」

  「それはおじさんはおかあさんの弟であって、おじさんからみての弟がほしいかってこと」

  「おじさんみたいな人なんて、あんまし皆いらんやろ」

  「おじさんから見ておかあさんはどんな人やった」

  「お姉ちゃんは、しいちゃんのお母さんそのものな人やった。今から産まれてくる弟くんも、おじさんにとっては甥っ子みたいな人なんやろ」

  「なんかはぐらかされてるみたい」

  「はぐらかしてるからな」

  ファンタのペットボトルを回収し、高松さんに電話をした。

  「お姉ちゃん、どうですか」

  「一時間も経ってないで、健くんはせっかちやな」

  「こっちではいろいろあったんですよ」

  「へぇ、まあこっちから連絡しようとしてたとこやし丁度良かったわ。美紅やけどな、やりよったわ」

  「元気な男の子でしたか」

  しいちゃんが固唾をのんだ、ような気がした。

  「めっちゃ元気な男の子やったらしいで」

  桜の花が咲き、銀杏の葉は黄色く繁り空には虹がかかりオーロラが出現した。お姉ちゃんは既に手をつけられない子を一人もうけているから、これから大変な育児になるだろう。

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