第4話

  砂場から生える枯れた色をしていた蔦は幾本も束になりその凹凸が樹木のようである。蛸のようだった手足は、それぞれの指が独立して伸長しており、公園にはえる桜の木や銀杏の木と連理している。身体と脳を結びつけている脊髄は肥大した脳を支えており、そのためか性質が変化したのか鋼鉄のような美しい輝きを放っている。 

  「ファンタこうてきたで」

  「オレンジがよかってんけど、まあええわ」

  私の手からペットボトルを奪い取るために、桜の枝からなにかが伸びて来た。細い指であった。骨の仕組みが変化したのであろう、縄跳びのような撓み方をしている。

  器用にペットボトルに絡み付くと先端で蓋を開けて天高く放り投げた。空中でファンタグレープが飛散したが、紫の滴がしたたることはなく、すべて姪の身体のどこかにおさまった。

  「しいちゃんはさ、いつまでそうしてるつもり?」

  「こうなったからには、いつまでもこうしてたい」

  「大変とちゃう」

  「かもしらんな。さっきもさ、めんどうなことがあってんで」

  下みて、というので、すでに私の背丈を遥かに越した姪の下がどの辺りを指すのか不思議であったが、おそらく根本の部分だろう。

  砂場の中には幾人かの屍がつまれていた。あまりにも壮大な変貌をとげた姪に気をとられ死体ごときを気にする余裕がなかったのかもしれない。

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