札幌戦 1章 序節ー後

俺は状況を把握していた。


今は戦争中だということ。


札幌にやばい爆弾が落とされたこと。


これらの力は神威に与えられたものだということ。


そして、俺の名前は「幕別」であるということ。



得物は地面に手を突っ込んで握ればつかめる。俺はそのことを実践してみた。


つかみ、引き揚げたのはゴルフバットだった。理由はすぐにわかった。


神威国幕別町は、パークゴルフの生まれ故郷だから。


そのゴルフバットをまじまじと見つめていると、うしろから大量の気配を感じた。


後ろには総勢170名の仲間がいた。


みんな片手に得物を持ち、俺を見つめている。


リーダー、なのか。自分は。


俺は得物を日本刀を持つように右手で持ち、高々と掲げ、叫んだ。


「聖神威軍!これから我々は神威に与えられし命で和軍を壊滅させる!それぞれの力を最大限に駆使し、我々の領土を死守せよ!」


自分でもこんなものでいいのかわからない。


聖神威軍、なんて言うのもいま適当に言っただけだ。


ただみんなは


「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」」」」」」


と、賛同の雄叫びをあげた。


「進軍せよ!!!!」


ぶんっ、と高々と上げていた右腕を振り下ろし、そう叫ぶ。するとみんなは一斉に幕別の背後にある崖を飛び降りて市街地へと飛び出していった。


みんなの背が次々と落下して見えなくなり、先頭に立って市街地へと降りた者は既に遠くで敵兵と戦っているのが見えた。


幕別は

「はぁっ」

と息を吐き、みんなが消えていった崖に寄る。そこで左右に誰かが歩み寄ってきた。


剣淵と、余市。


剣淵はキリッとした目つきで高身長な青年。剣淵町は神威国北部の南側に位置する街だ。

得物は街の名前にちなんだ長い剣。2メートルを超えているが、剣淵の意思によって伸縮できる。一人称は「我」。正直ダサいと思う。


余市は頼れる姉のような風貌の女性。

余市町は神威国央部の街で、りんごとウイスキーで有名だ。得物はリンゴ爆弾。意思によって無限に生成可能で、着地地点で爆発し、高度数のアルコール物質と強アレルギー発症物質をぶちまけるという鬼畜爆弾だ。しかし、味方の回復も出来る爆弾も生成できる。


「さて、俺らも行くか」


そう呟く俺に、


「そうだな、流石に我らとはいえ三人ぐらいで行った方がちょうどいい」


剣淵がこう乗る。


「三人であるデメリットもないし、そうしましょうか!」


余市も乗ってきた。

そうと決まれば出発だ。

俺は2人と交互に目を合わせ、崖に向かって駆け出す。俺らの戦いは幕を開けた。

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