第二十八話 なんとまあ! 最終話から一足お先のエピソードに遭遇した。


『……この、千里せんりの町は広かった。

 それはね、ここが国の鉄道・西の駅前で、

 まだまだ、北へ、東へ、南へと、

 この道とかね、町並みも一緒に続いて行くんだよっ!』



 遠い未来へと母なる海のように、広大な緑を守りたい。


 そして、湿った風を感じる中で、

 もうすぐマンション。……そこの三階に、お家がある。


 まだエレベーターにも辿たどかないまま、わたしは立ち止まった。



「どうした?」


「見て見て、とっても綺麗きれいだよ」



 ――また、この季節を迎えた。


 でも、もう大丈夫だよ。


 わたしは怒ってない。喧嘩けんかもしてない。


 あの日と違って一人ではないし、手もつないでいるよ。


 何よりも、笑顔が満開なの。



 ここは幼稚園。


瑞希みずきちゃん、今日もお兄ちゃんと一緒なのね」


千尋ちひろ先生、こんにちは」


 昨年は桃色だったけど、錆錆さびさびになったものだから、今年の始めにね、緑色に塗り替えたそうなの。そんな門の前で、今日も千尋先生は元気に如雨露じょうろを持って、お花さんたちにお水をあげていた。そのお花さんたちは今の季節……雨の多いこの時期になるとね、青い色のお花さんたちになるの。


 だからね、


紫陽花あじさいさん、今日も元気だね!」

 って元気よく、ちゃんとお名前を言ってあげてね、ご挨拶するの。


 すっかりニコちゃんマークの千尋先生は、


「それはね、瑞希ちゃんが今日も元気だからなのよ」


「えへへ……」


 懐かしき日々。


 去年も同じことを語っていたね。



『―― Nostalgic days, again!

 But, every day I can never return, every day different from those days.』

(――懐かしき日々よ、もう一度!

 でも、二度と戻れぬ日々、あの頃とは違う毎日)


 ……少し寂しく思えたけれども、

 この赤いランドセルを背負うまで、わたしはここに通っていた。卒園してから二年、小学三年生になったけど、今でもこの幼稚園が大好きで、千尋先生と大の仲良しなの。


 そして、手を繋いでいるお兄ちゃんも、


「瑞希は、お花が好きなんだね」

 と言ってくれてね、もちろんニコちゃんマーク。


「うん、大好き!」


 それから、わたしも勿論もちろんニコちゃんマークだよ。



 ――思いは時を動かす。舞台を変えて少しさかのぼってみる。その中で、紫陽花さんだけではなくて、わたしは……例えば学校の中庭でね、その周りにいるお花さんたちも大好き。宇宙空間よりもずっと明るい『景色』という名の彩り。それから、かけがえのない酸素。この瞬間も同じ思いで風を感じている。そんな、すべてのお花さんにも色があるように、わたしの名前にも意味がある。……あの日、ママが話してくれたんだ。



「ぐすっ……」

 と、去年のことなのに、


 遠い日の出来事のように思い出しちゃうの……。



『瑞希』という名前はね、

 パパがつけてくれたの。



 ぎゅっと、手を握った。


 もう泣かないって決めたから。


 そのことをね、お兄ちゃんと約束したんだから。



 お兄ちゃんは、小学五年生。学年が上がって、新校舎に移っていた。五年一組と三年一組ということで、新校舎の三階と二階に、それぞれの席を持っていた。



 ――それでも、忘れることはなかった。


 一日のお勉強の時間が終わってから、いつも行く場所を決めている。そこは、旧校舎の三階にある小さなお部屋。……『教室』と呼ぶには抵抗があるけれど、我ら『青空戦隊あおぞらせんたい』の立派な秘密基地だ。今日も世界の平和を願いながら、お兄ちゃんを待っていた。



 ケーキならぬ、あくまで計器が並ぶ机の上、


 デンッ! と、

『誓いの地球儀』が存在感ありありで構えている。


「これこそが正義のシンボルマークだ!」と、言わんばかりだ。



 ……とはいっても、


 ここは何も使われていない放送室だった場所。『青空戦隊』という名前も、お兄ちゃんがいつの間にかつけたものだ。本当はね、まだ『戦うべきもの』が現れていないの。



 ――でも、

 きっと、現れる。


 劇場版で最終話にならなかったアニメ。毎週日曜日に欠かさず見ている『マジカルエンジェル・みずき』のように、これまでのサターンよりもはるかにレベルの高い『ラスボスを超えたサターン』が、姿を変え形も変えて、あくまで働きとして攻めてくるような、


 そんな空気というのか?


 それが垣間かいまえるというのか? または、そう感じるのか?



 ――ここで第十四話を参照にしてね。


 その上で、

 奇遇にも、現実と同じ第二十七話で、マジカルエンジェルは二人になるけれども、

 この世界、現実では、さとちゃんは、

 遠く南へ、引っ越しちゃって、二年生の終業式と三年生の始業式を、

 二つの意味を含め……と、言ったらいいのでしょうか? ともに迎えられなくて、

 寂しくても、それでも負けないよっ!


 遠く離れていても、

 わたしたちはお友達。「さようなら」なんて言葉はないんだ。


 遠い未来も、ずっと一緒なんだから。



 わたしは、今でも魔法少女に憧れている。


 可愛かわいく変身して、強くなるの。


 そして世界の平和のためなら、

 たとえそれが宿命であっても、また運命だとしても、わたしは戦うぞ!


 その雄叫おたけび。


 右腕を上げる。拳を天に掲げるのだ。



 それは、恐怖を制する希望にも似た……トキメキかな?


 この『マジカルステッキ』が、また青白あおじろきフォルテッシモな光を奏でるその日まで、世界の平和をイメージしながら、今日こんにちも図書室で借りたご本を、この場所で読んでいる。


 正義の魔法少女は、教養も大切で、

 ……って、わけでもなくて、もっと単純に、そして素直に、


 わたしは、ご本を読むのが大好き! 小説、伝記に伝奇、日本史や世界史……と、ジャンルにこだわりはない。漫画だって大好き。でね、三冊借りたけど、もう読み終えちゃって、まだお兄ちゃんも来なくて、どうしようって思っていた。



『そんな時なの!

 音を立て、急にドアが開いた』



「あっ、お兄ちゃん」

 と、空にキラキラお星さま。


 万華鏡をのぞいたみたいなイメージの瞳で振り向いたら、


「いたいた」


「瑞希ちゃん、遊ぼっ」

 と、ハイテンションでよく似た声が二人分。ドア付近、


 その風景を見る中でも存在感つよき、お兄ちゃんと同学年のお姉ちゃんたちだった。


 仲良しの範囲を超える程いつも二人一緒。背格好、顔だけではなくて、最近は髪型がツインテールで統一。お洋服もペアールック。……本当に、見分けるのも手強てごわくなってきたね。でもね、まだまだだよ。見た目は、眼鏡を掛けているか掛けていないかだね。


 それもそのはず、

 この二人は双子。


 あとは仕草。


 キャラの違い。活発と、大人しい目。


 それに、ここはわたしとお兄ちゃんだけの『秘密基地』のはずなのに……と、思えるような場面だけど、もう『秘密』とも呼べなくなって、わたしはこの双子のことを「あかねちゃん」「あおいちゃん」と呼んで、笑顔で迎えていた。それとね、眼鏡を掛けてない方が茜ちゃんで、眼鏡を掛けている方が葵ちゃん。


 それで二人揃そろって「よっこいしょ」と呼吸もピッタリで、計器が並ぶお皿みたいな白い机の上に、わたしのものと同じ色をした二つの赤いランドセルと、「まあ可愛い」と、声に出してしまいそうな熊さんのイラストが入った橙色だいだいいろ手提袋てさげぶくろを、そっと置いた。



 そして、わたしから見て、


「では、始める?」

 と、茜ちゃん?


「ではでは、始めましょう」

 と、葵ちゃん?


 目から不思議な緑色のビームが発射できそうなくらいに、


 お互いがお互いを見つめ合っている。その末にはコクリ、コクリとうなずいていた。



『――その手提袋の中から出てきたもの。それはね、

 白い煙……ならぬ、またまた白色はくしょくのお洋服だった。

 苦手な雷、とどろく雷鳴とは違って、

 勇敢になれるあの青白き光だ! マジカルステッキの目が光り輝いたのだっ!』



 イメージは、憧れの魔法少女。


 その名は『みずき』


 わたしは『瑞希』だ。


設定セットアップ! 魔法変身マジカルチェンジ!』


 ……が出来できるように、わたしはなりきるのだ。



 今がパワフルなだけに、

 パワーアップも含めてね。と、ここはハートマークのイメージだ。



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