第二十七話 あくまで一章の最終話! 春の訪れを告げたキラキラ雪。
「……ちゃんと
「なっ、あたしが話した通りだろ?」
本当にその通りだった。
だとすれば、
「結局、
「いたさ。『魔法の天使・瑞希ちゃん、参上!』って、まるで戦隊ものみたいな名乗りをしてからポーズまで決める変な
「じゃあ、わたしは今でも、小学生のままなの?」
「
本当はわかっている。山田は「
でも、
「何で言ってくれなかったの?」
「えっ?」
「中学校の入学式の日に、『久しぶりだね』って、何で言ってくれなかったの? まるで初めて会ったみたいに……何でなの?」
実は、大切なお友達だったのに、山田
「はあ……」
と、山田は、深く
「言えるわけないだろ。……お前があたしを見て、
もしあの日、わたしが山田のことを『さとちゃん』だってわかっていたら、まともに顔を見ることができたのだろうか?
きっと……それは、山田も同じだったのかもしれない。
「わあ、
その空を見上げながら両手を広げて、海里さんは感激にも似たような声で、
「ママ、この雪のように、
この時期には
海里さんの言う通り本当に綺麗で、キラキラとシャンデリアみたいに
リンダさんはくすっと笑って、
「もちろん続くよ。どうして玉手箱の中に瑞希先生の日記帳が入っていたのか。どうしてその玉手箱が学校の中庭に
と、海里さんと同じように、感激にも似たような声で、
「そういうことで、これからもよろしくお願いしますね、瑞希先生」
「あっ、はい」
すると、山田がわたしの肩に手を回して、
「瑞希、面白そうじゃないか。あたしとその二つの謎を
と、にっこりしていた。
じゃあ、山田もこれから、わたしのインタビューにつきあうのかな?
「こういうのを、『マブダチ』って言うんだね」
海里さんが、目を
「まあ、
リンダさんまで、同じように目を爛々と輝かせた。
すぐ止むと思っていた雪が、
「じゃあ、山田さん、瑞希先生、またね」
「おう、またな、お嬢ちゃん」
「海里さん、気を付けて帰ってね」
「うん!」
元気よく手を振りながら、海里さんはリンダさんと
この二人を見送る中で、わたしは思った。
わたしと同じ『瑞希』という名前の女の子が綴った日記帳の二冊目、三冊目と、先々のページを見れば、
ここまで
実は、小学生の
でも、玉手箱に入れた記憶も、ましてや埋めた記憶も、まるでなかった。
それで、山田が言うの。
旧校舎の魔法少女の正体は……と、思っていたら、
「瑞希、本当に
「えっ?」
「外は寒いんだぞ。見送りはいいって言ったのに」
と、いう具合に、予想とは全く違うことだった。
わたしたちは、この
「心配してくれるの?」
「当たり前だろ。お前ひとりの体じゃないんだぞ」
ジーンときた。ママの時とは違って、女の子だったら一度は言われてみたい
「って、おいおい、何泣きそうになってるんだよ? それよりも、平日で大変だとは思うけど、今度の水曜日の夜は開けとけよな」
「何かあるの?」
「大ありだ。その日、何の日なのかわかってるか?」
「ええっと、海里さんのお誕生日会はもう少し先。う~んと、ママの誕生日は五月だったし、お兄ちゃんの誕生日はもう過ぎちゃって。山田の誕生日は、お兄ちゃんと同じ誕生日だし……あれれ? 誕生日じゃなくて、ええっと……何か約束してた?」
やっぱり。山田は少し
それでも、
「あのなあ、まだお母さんのことを『ママ』って言ってるのか?」
「べ、別にいいでしょ」
「まあ、それはいいとしてだ、まだわからないのか?」
「う~ん、わかんない」
「お前が『おめでた』になったのを記念してだな、お誕生日会を盛大に開こうと、
そうなの。
わたしの大切なあの人が帰ってくる日なの。
もちろん、忘れたりはしない。
それで、ああしてこうしてだな……と、山田は話を続けていた。
小学二年生の時もそうだった。
山田は……ううん、さとちゃんは、わたしのお誕生日会を開こうと言った。でも、春休みまでは大丈夫だったはずの
もしかして山田、そのことをずっと気にしていたの?
「あっ、話長くなっちまったな」
と言って、わたしの言葉を待たずに、
「ごめんな、寒かったよな。じゃあ、帰るわ」
と、背中を向けて歩き出した。
……このまま、山田が遠くへ行ってしまいそうな気がして、
「さとちゃん!」
と、わたしは呼んだ。
二、三メートルくらいの所でピタッと、山田の足が止まった。
「……
山田は、背中を向けたままだけど、
「さとちゃん、また遊ぼうね」
「ああ、もちろんだ。……あまり無理するなよ。元気な赤ちゃん生むんだぞ」
山田は手を振ったけど、こちらを向くことはなかった。そのまま少し
でもね、
「瑞希」
と、わたしを呼ぶ声は温かくて、
「あっ、ママ……じゃなくて、お母さん」
そして、温かな笑顔で、
「今は『ママ』でいいんじゃない」
「わたしは、まだ子供だなあ……」
「そうね。瑞希はいつまでもママの大切な子供だからね」
この空から
でも、今はそれ以上に確かなものがある。
このお腹の中には可愛い赤ちゃんがいる。
今なら、この子にこう言ってあげられる。
それは、ママがわたしに言いたかったことなのだと思えた。
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