第二十五話 「さようなら」は言わないよ。
……青空は広がって、わたしたちを明るく照らしていた。
「えへへ……」と
「
と、声をかけたら、地面に置いてあるランドセルを拾って、
「もっと
って、瑞希さんがお兄さんにひっついた。
やっぱり瑞希さんは、
でも、それもまた可愛くて……そう思っていたら、
「
そう言って、瑞希さんはわたしの方に顔を向けた。
あのセーターのことだ。昨日の
それもそのはずで、そのセーターは、瑞希さんがお兄さんにプレゼントするために、夏休みいっぱい使って、
「じゃあ、聡子さん、お兄ちゃんのお誕生日会に来てくれるよね?」
と、
「えっ? えっ?」
もしかして、まだ怒っているのかな? と思えるくらい、ぱっちりした目で、まっすぐ見るの。そんな瑞希さんが
「おい瑞希、聡子ちゃん
と、瑞希さんに言った。
すると瑞希さん、
「……聡子さん、お
ぐすっ……と
「あっ、泣かないで。お誕生日会……いつなのかな?」
「今度の月曜日」
「それなら大丈夫よ」
「本当?」
「うん、絶対行くから」
そうわたしが言うと、さっきまで泣きそうだった瑞希さんが、
ええっ? と思うくらいにケロッとしちゃって、
「あはっ、聡子さん大好き」
おまけに
本当に調子のいい子だ。瑞希さんがパパに欲しい
それでも……
あっという間だった。
楽しい時間が過ぎるのは、本当に速かった。
チャイムの音が、まるで日曜日の夜みたいに切なかった。そうはいっても、お勉強の時間がそれくらい好きというわけでもない。……あっ、
今日はもう金曜日。智美先生が、「聡子さん、月曜日のお勉強の時間が終わったら、クラスのみんなにさようならの
クラスの子たちの
もっと瑞希さんと遊びたかった。
ぐすっ……とすすり上げ、ランドセルを
「待ってたの?」
と、訊いたら、
「瑞希ね、さようならは言わないよ」
「どうして?」
「さとちゃん、瑞希のお友達だから」
「さとちゃん?」
瑞希さんはニッコリ笑って、
「うん、さとちゃん」
「じゃあ、瑞希ちゃん……かな?」
「うん!」
瑞希ちゃんは、わたしの手を
「じゃあ、行くよ」
と、そのまま
「瑞希ちゃん、どこ行くの?」
「秘密基地」
何それ? って訊く間もなく、そのまま旧校舎の階段を駆け上がった。いつもは走るのが
「着いた!」
と、瑞希ちゃんが元気よく声を上げた場所は三階の、今は使われていない放送室のドアの前だった。「じゃあ、入るね」と言って、そのドアを開けた。
そこには、
「やあ、いらっしゃい」
「お兄さん?」
が、
ええっと、地球儀と
それに地球儀だけではなくて、大きな机の上は機械もいっぱい
「すごいね、本当に基地みたい」
「でしょ。ここが瑞希とお兄ちゃんの秘密基地なの。さとちゃんは瑞希の大切なお友達だから、特別に教えてあげたの」
「
と、秘密基地を語る上で、戦隊ものみたいな名前までつけていた。
それから、お兄さんの顔こんなに近くで見るの初めてだった。男の子だけど、とっても綺麗な顔で、優しそうな眼をしていて……瑞希ちゃんが甘えたさんなのも、わかるような気がする。きっと、お兄さんを好きな子は、いっぱいいるのだろうなあ。
この
「あった!」
クリームみたいな色の布地に、あの『マジカルエンジェル・みずき』のイラストが入った
そして、ぎゅっと手を
「お兄ちゃん、ちょっと行ってくるね」
「おっ、聡子ちゃんも一緒だな。いっぱい遊んでおいで」
「うん!」
と、元気よくお兄さんに返事して、
「行こっ」
と言って、またわたしの手を引っ張った。
その鞄、すでに左の
まだ上を目指しているようで、
「ねえ、行こって、どこへ?」
「こっちこっち」
えっ?
と、思っているうちに、瑞希ちゃんの足が止まった。
「ここね、瑞希が見つけた秘密の場所なの」
「かくれんぼでもするの?」
すると、瑞希さんは顔を左右、横に
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