第十五話 新展開! 遠い未来のあなたは、もしかして?
「
思いがけない
それと、八月二十四日のふるさと祭りが終わってから、わたしのことを「先生」と呼んでいたのに、いつの間にか『名前プラス先生』に
「そ、そうね。小さい
また「お母さん」ではなくて「ママ」って言ってしまった。それも自分の生徒の前なのに、海里さんの前なのに……。あ~ん、顔が真っ赤だ。
わたしは『速読』というものを知らなかった。きっと『本を速く読むこと』なんて軽く思っていた。それなのに、海里さんの前だからって、いいかっこして知ったかぶりまでしてしまった。……そのことをママが知ったら、やだ、
だから怒られる前にと、『わたしはこの子の担任として、いや、それ以前に先生として本当にあるまじき
「瑞希先生?」
海里さんは目を丸くしているけど、『
「あの、海里さん……」
ごめんね。と正直に、知ったかぶりしていたことを言おうとしたら、
「あっ、海里、思い出したけど」
と、リンダさんが
「ママが学校に通っていた
海里さんのおかげで、リンダさんもわたしのことを「瑞希先生」と言い直してくれたから、少しはややこしくなくなった。この家には「先生」と呼ばれる人が二人いて、名字をプラスして呼んでも同じ……って、それもあるけど、今はそこではなくて、
「確かにそうだよ。『The day August 24, 2015.~It together also family and also everyone from now on.~(その日は二〇一五年八月二十四日。これからも家族とみんなも一緒だよ)』の
と、この二人の話を聞いているうちに、本当に不思議な関係だと思えてきた。
わたしが生まれる前から、ママは
海里さんは
「やっぱり、そうよねえ」
と合唱までして、もはや二人だけの世界に入っていた。
イメージではチョコレート
「ちょっと待って」
って、言いたいところだけど、もうその世界から
……風を感じる。
体から感じるの。
温かい感じ。それでも、
それは、とても不思議なこと。
そして、ミラクルなことなの。
まるでピノキオみたいに……お人形さんが、元の
あの子たちは、あの場所でまた会えた。
あの白い光が包む世界で、旧校舎の屋上前の
「良かったな、瑞希」
と、お兄ちゃんが横で
「うん!」
とっても
もともとは、劇場版が最終話の予定だったの。
きっとね、わたしみたいなファンの子が
さとちゃんが中心のお話だけど、後半で、みずきちゃんと再会する。……でも、普通の女の子になったから、もう
それでも、第二第三のサターンが
しかも、劇場版のラスボス
夏終わり物思う秋を感じさせるように、マジカルステッキは考えた。一応はマジカルステッキも、ずっとお姉さんだけど女の子。……それで、こうなったの。
さとちゃんと、みずきちゃんの『お友達思い』がシンクロした時、マジカルステッキの『魔法の目』が
そういう意味では、これから新展開を
今日は八月三十一日。
今日で、夏休みも終わりなの。
お昼すぎると、きっと一日前に戻りたいと思うことだろう。
……だから、大きな声で元気よく、
「できた!」
と、夏休みの宿題を終わらせた。今はまだ午前の十時三十分。さっさと明日の準備を済まして、パンダさんと、お兄ちゃんも一緒に、お家の中で思いっきり遊ぼうと思った。でも、お兄ちゃんはまだ机に向かってお勉強している。ちょっと
「お兄ちゃん……」
「ん? 何だい?」
算数が得意なの? と思えるくらい、お兄ちゃんは笑顔……う~んと、ちょっと違って何だったかな? じゃあ、わたしも、
「じゃん!」
できたばかりのセーターを広げた。
それは自由研究にしているもので、編み方もそれらしくノートに書いている。セーターは自分で日記を
「これ、瑞希が一人で編んだのか?」
「うん、そうだよ」
さっきのお兄ちゃんと同じ。
あっ、そうそう、どや顔だ。
でも、お兄ちゃんは、わたしの顔ではなくて、セーターをじっくり
「ねえねえ、着てみて」
「そうだな、瑞希が編んでくれたんだ。着てみるかな」
……あっ、マフラーもそうだったけど、夏にセーターを着るのも暑いと思うの。そう思いながらも言えなくなっちゃって。ごめんね……って、心の中で
でも、着ちゃったの。お兄ちゃん。
「瑞希、これすごいよ。サイズもぴったりだし、かっこいいな」
それで、大喜びで
降り続けるこの雨が
きっと明日は晴れるねって、そう思ったの。
「瑞希、ありがとう」
「えへへ……」
でもね、まだあるの。
「あのね、お兄ちゃん」
「どうした? 顔赤くして。おしっこもれそうなのか?」
あれは、プールの日や登校日以外に学校へ行った日。……ううん、わたしとお兄ちゃんだけの秘密基地へ行った二十四日の日だ。その日、おもらししてから、一人でトイレに行くのが怖いのだと思って、そう
「ううん、
その通りなの。でも夜はやっぱり一人でトイレに行くのが怖い。……って、そうではなくて、わたしのすぐ後ろでぺたんと座っているぬいぐるみのパンダさんから、赤いマフラーを外してあげて、それを持って、
「これも、あげる……ね」
もっとお兄ちゃんの喜ぶ顔が見たかったの。
それもあるけど、わたしにはまだ言葉にできないそれ以上の気持ちなの。
でも、お兄ちゃんは顔を横に振った。マフラーを持っているわたしの両手を、そっと
「どうして? お兄ちゃんは瑞希といっぱい遊んでくれたんだよ。
「泣くな!」
びくっとした。
「お、お兄ちゃん?」
泣き止んじゃった。
「このマフラーは、やっぱり瑞希がした方がいいよ。パパも喜ぶと思うよ……」
お兄ちゃんはマフラーを手に取って、わたしに巻いてくれた。
「ほら、とっても
「えへへ……」
まだ
あっ、でも、何でこんな時に?
と、思ったけど、思い出しちゃったの。
「お兄ちゃん、ごめんね」
「ん? どうした?」
「瑞希ね、お兄ちゃんの夏休みの宿題、
「なあに
って、それが一番大変だよ。
ご本を読むのも……って、あはっ、読みたくなっちゃった。
「手伝ってあげる」
「あ、ありがとう。って、言いたいところだけど、瑞希にわかるかな?」
「うん、任せて」
わたしは、お兄ちゃんのお勉強机に置いてある……あっ、これだな。読書感想文で使うご本を手に取って読み始めた。一年生の夏休みは、パパとよく図書館に行った。どのご本も面白くて、いっぱいいっぱい読んだの。お兄ちゃんの読書感想文で使うご本は『はれときどきぶた』だ。前にも読んだ。
……と、思ったけど、あれれ? 忘れちゃった。
「ちょっと瑞希、そんなに早く読んで大丈夫なのか?」
「大丈夫。すぐ終わるから話しかけないで」
「は、はい……」
それから十五分くらいかな? 雨音が聞こえなくなった。
それをきっかけに、
「読み終わったよ」
と声をかけて、静かにご本を閉じた。
それで
「ん? 瑞希、パンツ見えてる……って、えっ、もう?」
びっくりして起き上がった。
少し
「じゃあ、まず
「は、はい」
まるで音声対応のスーパーロボットみたいに、お兄ちゃんは椅子に座った。
これって、面白い。と思いながらも、
「
「わ、わかった」
机の上には、ちゃんと原稿用紙に鉛筆。お兄ちゃんは、それを目の前にした。
「じゃあ、始めるね」
わたしは、この本に書かれてある物語で感じたことを語り始めた。お兄ちゃんは、わたしが話した通りに、原稿用紙に書き始めた。……パパはお
「あっ、お兄ちゃん、その漢字ちがうよ」
「えっ、そうなの?」
と、いうことになっちゃうの。
そんなこともあったけど、このご本の感想は、
「おしまい」
……あれ?
「何書いてるの?」
「これはな、お兄ちゃん思いの可愛い妹への感想文」
今日は二回も、わたしのこと「可愛い」って言ってくれた。
とっても嬉しくて、その夜、わたしは絵日記にお兄ちゃんのことを書いた。
実は、絵日記のことを忘れていた。でもこれで、夏休みの宿題も終わりだ。
それから、今日の日記には……
「瑞希、明日から学校だ。早く
「うん」
今日の終わりを告げるように……あっ、この場合は、夏休みの終わりを告げるようにお部屋の明かりが消えた。わたしのお布団とお兄ちゃんのお布団が、きっちりと
「どうした? ひっついてきて」
「ここがいいの」
豆電球だけの明かりになっても、お兄ちゃんはにっこり笑って、
「瑞希は
「違うもん。瑞希は女の子だよ。『甘えん坊』じゃなくて『甘えたさん』なの」
わたしも、くすくす笑った。
去年の夏休みの終わりは、同じお布団の中で、こんなふうにパパと寝ていた。
……でもね、この夏休みはお兄ちゃんが一緒にいてくれた。一緒におままごとしてくれて、一緒に学校のプールも行った。図書館に行くのも一緒だった。それから学校の登校日があって、劇場版のみずきちゃんを見に、一緒に映画館へも行ってくれた。秘密基地の戦隊ごっこも、お兄ちゃんが一緒で楽しかった。
綴りたいことが
「お兄ちゃん、大好き」
の一言で、今日の日記を
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