第九話 遠い未来のあなたもまた。
「あ、あの、先生……」
リンダさんの一声で話が中断され、景色まで変わった。
……もし
「どうしました?」
「この間の劇で、海里と
海斗君は、海里さんの
それで、思い出した。
「それは、『正義の戦士・瑞希先生参上!』の場面ですね?」
名前にプラス先生。
学校では、みんながわたしをそう呼んでいる。
「えっ? ええ、その通りです」
「まあ、こればかりはこだわりがありまして、せっかくのチャンスでしたから、海里さんにお願いして
「あの、よくされるのですか?」
「ええ、
「はあ……それで、喧嘩というのも、よくやられたのですか?」
実は、その通りなの。今は
それに、わたしの名前も漢字二文字で『瑞希』という。
ねっ、全然違うでしょ? 同じ名前でも、この日記帳に
「そのことについては、また
「え、ええ、お願いします」
と、まあ、
わたしが演劇部の担当になったばかりの
ちょうどそんな時、海里さんが入部を決心した。やはりそれが事の始まりのようだ。それに双子だからかな? 海斗君は、海里さんが入部したから、それに合わせて入部したみたいだ。
……あっ、それから、双子とはいっても、海里さんが海斗君と見分けがつかないくらい似ているということはない。それならリンダさんの方が、海里さんと瓜二つと言ってもいいくらいだ。じゃあ、海斗君はパパの方に似たのかな?
そんなことを、整理したての頭の中で想像しながら、
「海里さん、演出よくできてたね」
「うふふ……わたしも先生と同じで、戦隊もの大好きなの」
海里さんは
「やっぱりね、海里さんノリノリだったもんね」
「そうですね、この子たちも同じ部屋で毎週見てますね。どちらかといえば、海斗がこの子に合わせているみたいですけどね」
と一言、リンダさんが付け加えた。
「海斗君らしいですね」
そう思えた。双子で、生まれた時間が少し違うだけで、
「でもね、海斗に言われちゃった。『お姉ちゃん、
と、海里さんは、海斗君の『ものまね』までして、そう言った。
海里さんの表情が、さっきまでの海斗君のイメージを一変させてしまった。
「海里さん、ごめんね。本当はね、変身シーンも入れたかったの。それにね、戦隊ものだけじゃなくて魔法少女もできるのよ」
「えっ、そうなの? 見たい見たい」
と、その言葉と一緒に、海里さんは瞳を輝かせているだけではなくて、さらに軽く
それを見て、ぷっとリンダさんが笑って、
「海里、
「へっ?」と、きょとんとする海里さんだけど、
「あっ、すっかり忘れてた」
との一言で、窓から見える空よりもはるかに明るい笑い声に、この部屋が包まれた。
こうして、わたしはまた、この日記帳に綴られている出来事を語り続けるのだった。
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