第八話 そして夏休み。
わたしが、パパに何があったのかを知るのには、もう少し時間が必要だった。
ママは話した。……ううん、話してくれた。
あの日、パパはお昼からお仕事をお休みにしていたそうなの。お家に帰る
「危ない!」
という
「
「う、うん……」
「危ないからね。急に飛び出しちゃ
「おじさんは、大丈夫なの?」
「ありがとう。大丈夫だよ。おじさんはスーパーヒーローだからね」
その女の子に怪我はなくて、その周りに集まった人たち、通りかかった人たちも安心して、何事もなかったように思われた……。
でも、横断歩道を
「瑞希、今帰るからな……」
と、パパは何度もそう
……ママが話してくれた日も、それから数を忘れるくらいの日が
でも、
もしわたしが、みずきちゃんみたいな
お写真ではないパパがいて、何もかもパパの言う通りにできて、いつもパパが
起きてランドセルからマフラーを取り出して、パンダさんに巻いてあげた。ぎゅっとパンダさんを
するとね、
「
って、声が聞こえた。
びっくりして
それで、涙がちょっと出ちゃうけど、
「おはよう、お兄ちゃん」
って、わたしも、にっこり笑えたの。
「
って、声をかけてあげるの。
わたしは、ものを書くことが大好き。
日記はお誕生日の日から今も続いているし、自分の名前だって、ちゃんと漢字で書けるよ。まだ学校で習ってない漢字でも、読み書きできちゃうの。それにね、一年生に続いて二年生の宿題にも絵日記があるの。それも楽しいの。
「うんしょっ」と、また玄関のドアを開けたら、
「瑞希、朝顔の観察日記は一年生の時の宿題で、二年生にはないよな?」
って、お兄ちゃんが
「うん、そうだよ」
と、わたしはあっさり答えた。
「そうか」
と、お兄ちゃんは、それ以上は訊かなかった。
……と、思っていたら、
「それからな、絵日記を書いて日記も書いて、それって
って、お兄ちゃんが訊いたの。
絵日記は宿題なの。一年生の時にもあったけど、二年生でもあるの。面倒臭いなんて思ってことがない。理由は簡単。絵を
「ううん、楽しいよ」
でも、お兄ちゃんみたいに、読書感想文がないのが残念だ。
「お前って、変わってるな」
「えへへ……ありがと」
という感じで、お兄ちゃんは別に
また編み物もしているの。男の子なら……と、いいたいところだけど、最近は女の子も模型を作っている。今ね、ロボットの模型が
「瑞希、何を編んでるんだい?」
「セーター」
「へえ、お前って器用だなあ」
「えへへ……ありがと」
まあ、わたしが器用かどうかは別として、
「このセーターね、自由研究が終わったら、お兄ちゃんにプレゼントしてあげるね」
「ありがとう、楽しみにしてるよ」
お兄ちゃんが喜んでくれた。何よりも
そして、今はもう夏休み。
今年はね、パパが「海へ行こう」って言っていた。
パパもママもお兄ちゃんも、みんなで特急電車に乗って行くの。
そこにはね、パパのパパがいるの。あっ、それって、わたしのお
それでね、ママは今日もお仕事で、お家にはお兄ちゃんと二人だけなの。でもね、もうすぐ
それでもね、涙を拭いて立ち上がり願いを
「あっ」
手が
へたり込んで、
「魔法少女になれないなんて、やだ……」
ぽろぽろと、
ここまでは、
でも、ここからは違うよ。
ちょうど今は、午後に近づく
「太陽の戦士・瑞希参上!」
背景のイメージは白色の
泣いてばかりではないの。
いつもね、このようによく
わたしは戦隊ものも大好き。とくに名乗りのシーンはたまらなくて、それでもって、いつの間にか、お兄ちゃんが目の前にいて……って、あれ?
「お友達と遊びに行ったんじゃなかったの?」
と、きっと面白い顔になって、訊いたと思うの。
「あっ、ええっと、瑞希の
と言いながら、お兄ちゃんは目を丸くしていた。
「えへへ……ありがと」
これこそ別に褒められたわけではないけど、とっても嬉しかった。
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