第七話 ずっとずっと一緒だよ。
お空には、灰色の雲なんて一つもない。
真っ白で、その先には、どこまでも青い色が広がっている。
きっと、夢ではなかったの。
今もね、どこかで
毎日、日記を書くように、一歩一歩、歩いている。
いつか遠い未来のあなたに出会えるようにと、ママと、お兄ちゃんも
とくにママ。いつもと
「あなたが生まれた時、パパ、泣いちゃったの」
「どうして? 悲しかったの?」
そうは言ってみたものの、パパが泣いちゃったところを見たことがなくて、想像もできなかった。それでママは、くすくす笑ったみたいなの。
「とっても
「嬉しいのに、泣いちゃうの?」
う~ん、わからない。
笑ったかと思えば、今度は遠くを見るような目で、
「人にはね、そういう時もあるのよ。……パパね、あなたを
何も覚えてない。
それどころか、今初めて知ったの。
それでもパパは、何度も何度も「ミズキ」って呼んでくれていたそうなの。わたしが初めて「パパ」って呼んだ日に、『
でも何で?
心から
これって、ママの言う通りになっちゃったみたい。
お家に帰ったら、
「
って、言うはずだった。
それからね、
「大好き」
って、
でもね、パパ起きないの。
ずっと、
さっきまで明るかったのに、びっくりするほど暗いの。わたしは暗い所が苦手で、お化け
……でも、平気なの。
パパが一緒だから平気。ずっとずっと一緒なの。
「パパ、この子に名前つけてあげたよ。『パンダさん』って言うの」
それはね、ぎゅっと
「ねっ、
……いつも、パパと一緒だったの。
朝起きて学校へ行く時も。すこやか学級からの帰り道も一緒に歩いた。それから
「瑞希も、もうすぐ二年生か……」
「うん」
わたしは
「お
「だって熱かったんだもん。『ちゃんと
本当はね、違うの。お風呂から上がって、はだかんぼのまま走ったらね、「こ~ら、待て~」って、パパがバスタオルとドライヤー持って追いかけてくるの。それでね、このお部屋で「ほ~ら
「じゃあ、パパと約束だ。二年生になったらな……」って言い始めるの。
「やだ、学校のご本いっぱい読みたいんだもん。お休みの日はパパと一緒が楽しいんだもん。どうしてなの? 瑞希と遊ぶの、
「パパもな、瑞希と遊ぶのが楽しいよ。でも、これは瑞希にとって大切なことなんだ。瑞希はよく図書室に行って、たくさんの本を読んで、お勉強がんばってるって先生が
何で? って
「ねえ、パパ」
「ん?」
「どうしたら、瑞希にお友達ができるの?」
「そうだな。……それはパパから瑞希への宿題だな」
いつもそうなの。パパは答えを教えてくれないの。
「そんなのわかんないもん。ねえ、パパあ……」
「こらこら
「う、うん……」
「
と、満面な笑顔で言っていた。
桜梅桃李の意味はまだわからないけど、びっくりするほど暗かったこのお部屋にも光が
その中で、あの日と同じように、パパが
「パパ、もう
と声をかけても、お目目あけないの。でもね、今にも起きそうなの。
……そう見えたの。
パパの顔を
「ねえ、瑞希と遊園地いこっ。……
「ねえ、起きて……」
体も
すると
「瑞希、ずっと起きてたのか?」
パジャマ姿のお兄ちゃんがいた。そばまで寄って来て、
「退院したばかりなのに、
ぐいっと、わたしの手首を引っ張ろうとしたから、
「やだ!」
と、
でも、何で? パパ笑っているのに、少しずつお手々も温かくなっているのに、涙が止まらなくなって、自分でもわかるくらい泣き声になっているの。
「……パパ、もうすぐ起きるんだよ」
お兄ちゃんは、顔を左右に
「瑞希、パパはもう起きないんだよ。……ゆっくり
と、両方の目にいっぱい涙が
でも、でもね、
「そんなことないもん! パパ、起きるんだから……」
そっとお兄ちゃんの手が、わたしの手を
「だって、お前の手、こんなに冷たくなってるじゃないか」
お兄ちゃんの手がとっても温かくて、お兄ちゃんの顔がとっても優しくて、どうしようもないくらい
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