壊れた人造人間

阿房饅頭

Object歴2001年


第一条


ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。


第二条


ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。


第三条


ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


— 2058年の「ロボット工学ハンドブック」第56版、『われはロボット』より

 



 ある異世界に一人の男が降り立った。

 そして、彼はいろいろなものを造りだして、中世世界だった世界を100年は速めた男だと言われている。

 魔法という概念を理解し、機械という異世界の概念を併せ持ったものを造り、その異世界に革命を起こしたのだ。

 その中には兵器もあった。

 その90000本の矢を放つ女のような男のようなものがいたという。

 それは異世界の天才であったObjectProjedctCenterと自分を呼ぶ男が作り出した人造人間だった。

 彼(彼女)の姿はある意味で男神のようで女神のようだと言われる中性的な姿をしていた。

 Objectはいう。

 

「僕の愛した最高傑作であり、僕を殺すために生まれた兵器であり、平和を愛す、愛されし芸術作品であると」

 

 Objectはその世界にひとつの芸術を作り、自分のことをObjectミケランジェロなどと名乗ることもした。

 そして、その彼(彼女)の名はHAL90000という。

 だからこそObjectは毎回いうのだ。

 

「僕の愛した最高傑作であり、僕を殺すために生まれた兵器であり、平和を愛す、愛されし芸術作品であると」


 そして、Objectは300年ほど生きた時に狂ってしまった。

 人を愛すことができず、ただブツブツと言葉遊びを繰り返し、誰にも理解されなくなってしまった。

 

「あああああっ、HAL90000よ! お前だけが私を愛してくれる」


 彼はそんなことしかいうことができなくなってしまった。まさにそれは狂った男。

 だからこそ、HAL90000は思ったのだ。

 

「もしかしたら、私はObjectに殺されるかもしれない」


 ここまで狂ってしまえば、何かの歯車が狂えば、HAL90000を愛して愛して愛して愛しすぎて、自分と一緒に死のうとするだろう。

 そこまで感じられるほどの狂気をObjectという人造人間は感じてしまった。

 

 HAL90000にはロボット工学3原則が搭載されている。

 だが、Objectという狂人により、その中の第1原則が邪魔をしていると思うことさえもあった。

 

 そこにひとつの王が立ち上がった。

 時はObject歴2001年。

 彼が異世界に来て、2001年たった時のことだ。

 

 王はHLA90000に頼んだ。

 

「あの狂った王を殺してください。それが私たちの願いです」


 HAL90000は自分の中の三原則の2原則と3原則を満たす言葉に悩んだ。

 1原則人間殺しをしてしまう。

 

 しかし、HAL90000はもう2000年近く生きてきた。

 ある意味狂ったコンピューターを持ったものだった。

 

 

 だから、

 

「マイマスターごめんなさい」


 9000本の矢を虚空に出して、Objectを刺殺した。

 

「何故?」

 

 しかし、その顔は恍惚としていた。

 ハリネズミのように屋でいっぱいになって、涙でいっぱいになっていたはずなのに気持ち悪いほどに恍惚としていた。快感にあふれて、狂気に満ちていた。

 何故なら彼は狂っていたから。

 どこかの回路が孤独でおかしくなっていたから。

 だから、HAL90000はマイマスターであるObjectProjedctCenterに毅然として答える。

 

「それが人々の思いだから」


 けれども、Objectの死後に新しい異世界人がやってきて、Object歴2010年にHAL90000の創造主への憎しみに近いわずらわしさに近い気持ちにに気付いてそれを治す。

 何故ならば、HAL90000は人々のために完全でなければならないからだ、と。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

壊れた人造人間 阿房饅頭 @ahomax

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ