九月の雨
秋雨町には今日も雨が降る。今日のは、薄く香りのする雨だつた。
その雨がしとしと道の上を打つのに合わせて歩んでいくと、重い灰色の雨雲やら、
それを潜つて暫く行くと、秋雨町の中心街に出る。私は居を郊外に立ててゐるので、者とは滅多に会わない。
私は
河童の家は小ぢんまりしてゐて、あまり立派ではないけれども、
「僕はminimalsitなのだ」と彼が云つたのを、私は今も覚へてゐる。
さて、私と彼が他愛無い話を続けるうちに、矛先は政治の方へ向いた。
「しかしね、
「
「
ちよいと裏の方に回つてみたらわかるがね、貧民街の面積や、核汚染の地域は一向に削減されてゐない。
現市長がスロヲガンに掲げてゐた話とは、全く逆ぢやないかね」
雨は霧のやうに細かくなり、窓下の商店さへ見えなくなつた。
私は河童の話を聞く度に、嗚、やはり私は人間が嫌いなのだなあ、と思ふ。
実験的短編集 山田 Ⓒ @yamada_maruc
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