『大学生編』2章:異世界の民

アイヴィーは異世界人である。

かつてましろが戦ったガレア帝国の幹部であり、彼の国が王国と呼ばれていた時代の姫君でもあった。

しかし国を乗っ取られ、追放され、ましろ達と共闘した結果、元の世界に帰ることが出来ず、現在では『九重イヴ』と名を変えてこの世界に残った異世界人を束ねる架け橋となっていた。


エンプレスとの接触から数日後、イヴは街中を歩いていると花屋の店員をしている元ガレアの国民の男性と出会う。

聞けばこの花屋を経営している女性と結ばれ、結婚を考えているという。


「ありがとうございます。アイヴィー様。貴方様のおかげでわたしは居場所を見つけることができました。」


そう言って深々と頭を下げる男性。

それをみたイヴは


「いいえ、居場所ができたのはあなたの人柄や努力があってこそ。私は何もしていないわ。だから顔を上げてちょうだい。」


といい、安堵した表情を浮かべた。

男性はどうしても礼がしたいと、また夕方に来てくれと強く懇願し、最初は拒んでいたイヴも折れて約束を交わした。


それから、数時間後。

人通りが少なくなった商店街、そこで悲鳴が響き渡った。

嫌な予感がすると、駆けつけたのは花屋。

そこには人集りができており、イヴの視界には血まみれの男性を抱える女性の姿があった。

イヴと約束を交わした男性はその手に可愛らしい花束を抱えて意識を失っていた。


唖然とするイヴは微かに残るマナを辿り、犯人へとたどり着いた。


「エンプレス…!!貴様か!!」


冷ややかな目でイヴを睨むと、エンプレスは自らが異世界人を狩るものだと語った。


「貴女達異世界人が…侵略者風情が居場所なんて与えられるなんて甘すぎるのよ。彼は可哀想かもしれない。でもこれは異物を排除する私の使命。」


まるで、それが正義のためかのように。

怒りに任せ戦うイヴだったが、エンプレスは軽々と交わし、見せつけるかのように見覚えのある攻撃を放つ。

絶対絶命まで追い込まれた。イヴ。

彼女を救ったのはましろ…レヴェリーヴァイスだった。


「驚いた。変身できるなんて。でもなに、その不完全な姿。そんなものでレヴェリーの女皇を倒せると?」


現れたレヴェリーヴァイスの姿は、完全に変身し切っておらず、あの頃のレヴェリーヴァイスというには程遠い姿だった。


「私には貴女達が持っていたマキナスフィアすべての力が宿っているの、貴女は英雄だから傷つけるつもりはないわ。あきらめて立ち去りなさい。レヴェリーヴァイス」


「私が…お兄ちゃんが…みんなが作り上げたレヴェリーは私欲の為の力じゃない…。貴女…、貴様は、レヴェリーなんかじゃない。私が名乗る事を許さない」


その手に武器すら持たないましろ。

しかし、彼女は迷う事なくエンプレスへと殴りかかった。

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閃光の華姫レヴェリーヴァイス 菜月ふうり @huurinnatuki

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